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» 2018年06月12日 10時00分 公開

よくわかる「標準時間」のはなし(6):標準時間の設定手順 (4/4)

[福田 祐二/MIC綜合事務所所長,MONOist]
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3.標準時間設定の手法

 標準時間の設定には、表3「標準時間設定手法を選ぶ際に考慮すべき事項」に記述しました対象作業の性質や目的などによって、最も適した手法を用います。

項目 考慮すべき事項
(1)対象とする作業の性質 (a)作業のサイクルタイム
(b)作業を構成する単位作業要素の種類や反復性
(c)作業の標準化の程度
(d)その他、観測に制約を与える要因
(2)標準時間の使用目的 (a)用途
(b)所要精度
(c)設定費用の限度
(3)対象作業の量的特性
表3 標準時間設定手法を選ぶ際に考慮すべき事項

 また手法は、表4「標準時間設定に用いられる手法」の中のいずれかの手法を選ぶ(組み合わせる)ことになります。詳細については、次回以降で説明しますが、厳密な標準時間を求めるためには精度の高いSW(Stop Watch)法か、PTS(Predetermined Time Standard system)法が適しています。

手法名 適用作業の性質
PTS法 あらかじめ設定された標準時間のデータベースを使用し、理論的に机上で計算して作業時間を求める。作業を簡略化して分類し、各分類に単位時間を付与して所要時間を計算する手法である。一般的に使用されているデータベースとして次の3つがあり、それらを用いた標準時間設定を「PTS(Predetermined Time Standard)法」と呼んでいる
①MODAPTS(Modular Arrangement of Predetermined Time Standard)法
 作業を移動動作、終局動作、身体動作の各動作に分類した上で、移動動作の場合であれば、使用する身体部位により指、手、前腕、後腕、肩の5段階に分類する。そして、他の動作もそれを基に数値を与える。この数値を1MODと呼び、時間と対比させる
②MTM(Methods-Time Measurement)法
 基本動作として、手を伸ばす、運ぶ、つかむ、放す、定置する、引き離す、圧すなどがある。それぞれの状況に応じて、例えば距離、難易度などによって時間値が表として与えられており、それらを蓄積して計算すれば標準時間が求まる
③WF(Work- Factor Plan)法
 構成はMTM法と同じだが、標準時間を求めるために観測した作業が異なっている
SW法 時間観測法ともいう。ストップウォッチ(SW;Stop-Watch)法は、作業を区分し、作業しているところを見ながらストップウォッチを用いて実際に時間測定を行う。そして、測定データの整理、計算、分析を行い、習熟性の検討、レイティング、統計的処理などを施して標準時間値の設定を行う
標準資料法 標準時間資料法ともいう。作業の部分的に同じ作業要素の発生が多い場合や、製品や部品の大きさ、重さ、材料など、主として物理的性質によって時間値が決まる場合に適している。この手法の便利さは、新規の仕事が発生したときに、時間測定を行わずにその仕事に必要な作業要素の時間を既に作成してある標準資料から拾い出し、これを合計して標準時間を求めることができるところにある
経験見積法 その作業に対する経験者または知識を持っている人が、その経験や知識を基礎にして決定する手法である。最も正確性に乏しいが、全く新しい作業で、その後、繰り返し行われそうもない作業については、この手法を用いざるを得ない
実績資料法 過去の作業実績資料から、類似性を考慮して時間を求める手法である。資料整備に手間が掛かる上に、作業条件などが不明確なために正確性に欠ける面がある
表4 標準時間設定に用いられる手法

◇     ◇     ◇     ◇

 冒頭でも説明しましたが、標準時間とは、「決められた方法と設備を用いて、決められた標準作業手順や条件のもとで、その作業に対して要求される普通の熟練度を持った作業者が、普通程度の努力と作業ペースで1単位の作業量を完成するために必要な所要時間」と定義されています。

 例えば、ある作業の標準時間が10分に対して、作業に自信のないAさんは、その作業を12分で終え、ベテランのBさんは8分で作業を終了したとすると、Aさんの作業能率は80%、Bさんは120%の結果となります。この結果から、Aさんには大至急、作業訓練の必要があります。標準時間は、習熟した作業者の作業時間の実績値ではないことと、標準時間と作業能率の関係をまずはご理解ください。



 次回は、「作業測定の手法」について説明します。

筆者紹介

MIC綜合事務所 所長
福田 祐二(ふくた ゆうじ)

日立製作所にて、高効率生産ラインの構築やJIT生産システム構築、新製品立ち上げに従事。退職後、MIC綜合事務所を設立。部品加工、装置組み立て、金属材料メーカーなどの経営管理、生産革新、人材育成、JIT生産システムなどのコンサルティング、管理者研修講師、技術者研修講師などで活躍中。日本生産管理学会員。



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