「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像

中国のEV普及は有言実行、無人運転で先駆けるのは商用車つながるクルマ キーマンインタビュー(2/2 ページ)

» 2018年06月14日 07時00分 公開
[齊藤由希MONOist]
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商用車が無人運転で先行する

MONOist 無人運転車はどのようにして市場に出てくるでしょうか。

ギア氏 商用車が先行する。移動するルートや目的地が明確で、無人運転車が走る環境を整えやすい。法規制や政府とのコンセンサスも取りやすいのではないか。また、長距離移動で高速道路を使うので、自動運転車にとって走りやすい条件でもある。クルマの使われ方に不確定要素が多い乗用車よりも、商用車の方が実現が早いとみている。自動車メーカーの中でも、Tesla(テスラ)は積極的に商用車に投資している。

 これまで先進技術に関しては、乗用車が先行し、商用車がそれをフォローする状況が続いていた。商用車の自動運転技術は、乗用車よりも高い水準が要求されるので、これまでとは同じ流れにならない。明確なビジネスチャンスもあり、商用車メーカーにとって自動運転分野への取り組みを加速させるのは容易なことだろう。

MONOist 商用車のユーザーが自動運転車を買う動機はどのようなところにありますか。

ギア氏 ドライバーの人件費と車両のコストを比較したときに投資する理由が出てくる。例えば米国では、長距離トラックのドライバーは、高給で学歴が問われない仕事の1つだ。それでもドライバー不足が深刻で、求人広告もたくさん出ている。無人運転車への投資は人件費を下げることにつながり、人手不足の解決にもつながる。

MONOist MaaS(Mobility-as-a-Service、自動車などの移動手段をサービスとして利用すること)という言葉が盛んに聞かれるようになりました。

ギア氏 MaaSの市場成長は、地理や需要などで差が出てくる。地方よりも都市部で早いだろう。自動車メーカーはMaaSを脅威と考えると同時にビジネスチャンスとして捉えている。サービスとしてクルマを利用するようになり、トータルの台数規模が減ることは脅威だ。しかし、これまで複数台を所有していた人や企業が、2台目以降をシェアリングなどサービスとしての利用で賄うようになる。

 モビリティサービスで得た利益が販売台数の減少をカバーするまでどれくらいかかるかは分からない。しかし、2台目がMaaSになった時、MaaSで使う車両は走行距離が伸びるので、台数が減ってもビジネスが生まれるのではないか。全ての自動車メーカーが、サービスでどのように稼ぐかのスタディーを進めている。チャンスはあると捉えている自動車メーカーが多い。

MONOist モビリティサービスの戦略はどのように立てるべきでしょうか。

ギア氏 20〜30年というスパンで、地域ごとに考える必要がある。パワートレインの電動化を例にとると、電動化が進むとはいえ内燃機関は長い期間残り続け、製品構成が変わるのも時間がかかる。1つの戦略で進むことではない。同じようにMaaSでも、ドライバーが運転するか、ドライバーレスか、両方の戦略を検証すべきだ。ドライバーレスのモビリティサービスを考えると、自動車メーカーは規制との整合性もとらなければならない。最終的にそういったことが決まれば市場の要求が深まってくる。サービスの形態が明確になれば、誰がクルマを提供するか、誰がメンテナンスするか、サービスを実施する主体が見えてくる。



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