人とくるまのテクノロジー展2018特集
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» 2018年07月04日 07時00分 公開

人とくるまのテクノロジー展2018:鋼材にcm単位で焼入れ、衝突時のバンパービームの曲がり方をコントロール可能に

岡山県産業振興財団は、県内で事業を行う企業を総合的に支援する公的機関だ。今回の「人とくるまのテクノロジー展2018」では、財団の会員企業の中から自動車部品を手掛ける7社が展示を行った。その中でも、アステアの「スマートホットプレス」技術は、ユニークな発想だった。

[川本 鉄馬,MONOist]

 岡山県産業振興財団は、県内で事業を行う企業を総合的に支援する公的機関だ。今回の「人とくるまのテクノロジー展2018」(2018年5月23〜25日、パシフィコ横浜)では、財団の会員企業の中から自動車部品を手掛ける7社が展示を行った。

部位ごとに焼入れをコントロール

 今回、岡山県産業振興財団のブースで展示を行ったのは、タイメック、藤岡エンジニアリング、共立精機、ラピート、アステア、新興工業、ヒルタ工業の7社だ。その中でも、アステアが開発したホットプレス工法「スマートホットプレス」は、材料の変態点の温度差を利用するというユニークな発想だった。

 この技術は、単一の部材において焼入れ箇所と非焼入れ箇所を自由にコントロールできるというもの。炉による加熱と比較して加熱効率が高く、加熱時間は従来の300秒から10秒程度に短縮できるという。具体的には、まず材料全体をAc1点(フェライト+セメンタイトからオーステナイトへの変態が完了する温度)まで均一に通電して加熱した後、焼入れではない状態にしたい部位に冷却ブロックを押し当て、オーステナイト変態点とマルテンサイト変態点の温度差の2倍になるように冷却する。その後、温度差がついた状態で通電を再開して加熱が完了した材料を金型に搬送、プレス成形と同時に焼入れを行う。非焼入れ箇所は位置や面積の制約を受けずに任意に設定可能で、使用部位や目的に応じてパーツの部位ごとに硬さを制御できるので、衝突安全性能の向上や、修理しやすさの改善などに役立つという。

部分的に焼入れを施した部品の例(クリックして拡大)

 例えばこの技術をバンパービームに利用すると、衝突時にエネルギー吸収のために変形させたい部分と曲げに対する強度を持たせたい部分が柔軟に設計できるようになる。また、変形後の形状をある程度はコントロールできるので、衝突時にもエンジンやサスペンションなどを大きく破損させないようにすることも可能だという。

 ちなみに、アステアの技術では焼入れ部分と非焼入れ部分を1cm単位でコントロールできる。これにより、固定のためにネジ穴を開ける場所だけを非焼入れとし、その後の穴あけ作業を効率化することもできる。後加工が必要な部品周辺についても同様に焼入れしないことが可能だ。

 この技術は、設備の費用面でもメリットがある。アステアの部分焼入れ、非焼入れ技術は加熱に炉を使用せず、部材に電流を流すことで加熱するので、数千万円程度の投資で設備が整う。従来の焼入れは、炉の中に部品を入れる方法で加熱を行う。また、設備には数億円程度の費用が必要となる。

 スマートホットプレスは、部品形状の設計と組み合わせると車両の軽量化にも貢献できるとしており、自動車のさまざまな部位での活用を見込んでいる。

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