「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像

都市国家シンガポールに見る、EVとカーシェアリングの可能性IHS Future Mobility Insight(5)(2/3 ページ)

» 2018年07月05日 10時00分 公開

EVカーシェアリングという政府からの回答

 ユーザーに利便性を提供しながら車両台数を減らし、環境対策にも有効であるように、政府はEVカーシェアリングという回答を用意した。フランスの輸送/通信会社であるBollore Group(ボロレグループ)と提携し、2020年までに車両1000台、充電スタンド500箇所/2000基の目標を立てる。構想は2016年に公表されていたが、2017年末から実際の車両配備が始まり、本格始動した形である。

写真1 写真1 Bollore Groupがシンガポールで展開するEVカーシェアリングサービス「BlueSG」の車両(2018年1月、筆者撮影)(クリックで拡大)

 もともと、2010年に政府が三菱自動車の「i-MiEV」などを使ってビジネスモデルやEV技術、充電インフラの整備に関する知見を得るために実証実験を開始し、将来的にサステナブル社会の先端を行く国家としてEVを大規模に導入するか否かの検討を、世界的にもかなり早い段階から進めてきた。第1段階は企業向けの実験だったのに対し、2014年には第2段階として個人向けのカーシェアリングを開始すると発表した。今回は、それが実験から実導入の段階に入ったことになる。

 初回として80台が2017年12月に導入された。使用料の一例は、1カ月当たり15シンガポールドル(約1300円)の会費を払う年間会員の場合で、使用料は1分当たり33セント(約28円)、最低使用時間15分からとなる。タクシーに比べ、場合によっては割高ではあるものの2018年2月末時点で9000人の会員と2万件のレンタル回数を数え、好調な滑り出しをみせた。急な雨などで、タクシーや配車サービスを使おうとしても長く待たされるような状況下で極めて便利だとの声もある。

 その一方で、車内が汚れたまま返却したり、ぶつけるなどして申告しなかったりといった問題も当初は見られたようだ。シェアリングサービスの普及には、モラルの向上など、インフラ以外の要因も重要である。

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