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» 2018年07月09日 11時30分 公開

MONOist IoT Forum 福岡2018(後編):IoTは製造業の工場と製品に何をもたらすか (1/2)

MONOist、EE Times Japan、EDN Japan、スマートジャパン、TechFactoryの、アイティメディアにおける産業向け5メディアは2018年6月28日、福岡市内でセミナー「MONOist IoT Forum in 福岡」を開催した。福岡での同セミナー開催は初となる。後編では、安川電機や組込みシステム技術協会の講演内容を紹介する。

[三島一孝,MONOist]

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 MONOist、EE Times Japan、EDN Japan、スマートジャパン、TechFactoryの、アイティメディアにおける産業向け5メディアは2018年6月28日、福岡市内でセミナー「MONOist IoT Forum in 福岡」を開催した。福岡での同セミナー開催は初となる。

 前編では、パナソニック スマートファクトリーソリューションズ 常務取締役でコネクティッドイノベーション ストラテジックビジネスユニット長の足立秀人氏の講演と経済産業省 製造産業局 ものづくり政策審議室課長補佐である安藤尚貴氏の講演内容を紹介した。

 後編の本稿では、安川電機 技術部 技術企画部部長の園原吉光氏の特別講演「i3-Mechatronics(アイキューブ メカトロニクス)で実現する新たなものづくり」と、組込みシステム技術協会(JASA)技術本部 IoT技術高度化委員会 委員長の竹田彰彦氏のランチセッション「JASAが目指すIoTの姿!〜JASA発IoT通信より〜」、その他の講演内容について紹介する。

安川電機が取り組む、ロボットとITによる自動化領域の拡大

 モーターや産業用ロボットなどさまざまな生産財を提供する安川電機では、2017年10月に「新たな産業自動化革命の実現」を掲げ「i3-Mechatronics(アイキューブ メカトロニクス)」を発表し、新たな生産性の実現に向けて取り組みを進めている※)

※)関連記事:安川電機は「アイキューブ メカトロニクス」で何を実現し、何を実現しないのか

photo 安川電機 技術部 技術企画部部長の園原吉光氏

 安川電機 技術部 技術企画部部長の園原吉光氏は「製造現場では自動化やロボット化が進んでいるが、基本的には少品種大量生産ができる工程で使われているだけだ。よく見てみると、自動化できていない領域が非常に多いことが分かる。現状で自動化できないのは、モノづくりの多様性に対し、これらの製造プロセスや機器の柔軟性がないという点が最大の要因だ」と現在の製造現場の問題点を指摘する。

 一方で、柔軟性と安全性はトレードオフの関係になっている。例えば、それを象徴するものが安全柵だ。ロボットなどで安全性を確保するために安全柵の設置などを行えば製造プロセスが固定化され、柔軟性を失うことになる。逆に柔軟性を重視すれば安全性が確保できない場面も生まれ、これらを両立させつつ自動化を進める工夫が必要になる。

 人手不足が加速する中で、自動化領域の拡大は世界中から求められている状況がある。そこで、これらの解決策として安川電機は2つの取り組みを進めているという。「1つがIoT(モノのインターネット)による現場のデジタルデータ化とその活用である。具体的にはその取り組みが『アイキューブ メカトロニクス』だ。もう1つが、協働ロボットを含むロボット技術の進化である」と園原氏は述べる。

「アイキューブメカトロニクス」が実現する全体最適化

 安川電機の「アイキューブ メカトロニクス」は、「integrated(統合的、システム化)」「intelligent(知能的、インテリジェント化)」「innovative(革新的、技術革新による進化)」の3つの「i」をコンセプトとし、機器をコンポーネントとして進化させるだけでなく、統合してシステム化を実現したり、AI(人工知能)技術を活用して知能化したりすることで実現できる新たなモノづくりの姿を描いている。具体的には既存システムに加え「デジタルデータマネジメント」の仕組みを組み込んだことが特徴となる※)

※)関連記事:安川電機は「アイキューブ メカトロニクス」で何を実現し、何を実現しないのか

 データマネジメントを実現するために、生産現場のサーボモーターやインバーター、ロボット、コントローラーなどのFAコンポーネント情報を集約する基盤としては、エッジコンピューティング領域に搭載するソフトウェア「YASKAWA Cockpit」を用意している。

 園原氏は「YASKAWA Cockpitおよびアイキューブ メカトロニクスにより、生産現場のコンポーネントの情報と生産プロセスの情報が、ほぼリアルタイムで完全に統合できるようになり、『意味のあるデータ』を生成し、それを活用できるようになる。全体で集約し、新たな最適化を目指してもよいし、現場に戻して効率的な制御などに活用してもよい。情報を正確に取得でき見えるようになることで、柔軟なプロセス変更なども実現できるようになる。『止まらない工場』などを実現するにしても必要な情報基盤となる」と意義について述べている。

物理的に作用するロボットの進化

 一方で、これらの“頭脳”の位置付けである、情報面での見える化や柔軟性は実現できても、現場で体現できるような“手足”がなければ、プロセス全体の柔軟性は実現できない。ここで重要視されるのが協働ロボットである。

 園原氏は「人協働化、モビリティの実現、多能工化が柔軟性を高める大きなポイントだと考えている。まずは人協働化を進め、その後可搬式のロボットを展開。そして自走式のロボット化を経て、自律作業ロボットへと発展させていく」と進化の方向性について述べている。

 これらを実現するために必要な要素が「器用さ」である。「ロボットをより器用にしていくことが重要になる。画像センサーや力覚センサー、AI活用による予知などの認識技術をさらに高める必要がある他、教示レスの動作向上や、多能工化を実現するプログラム言語の多彩化など、取り組むべきポイントは多く存在する」と園原氏は開発ポイントについて語る。

 安川電機では、生産財メーカーであり、自社でも製造業であるため、これらの取り組みをまずは、自社工場で実践し生産性向上を実現する方針を示している※)。具体的には埼玉県入間市のモーションコントロール事業部の工場に、「ソリューションファクトリー」としてこれらの技術を盛り込んだスマート工場を建設。「データの見える化や工場の見える化ができるとどうなるのかという点や、トレーサビリティーの確保の面でも有効な仕組みの構築に取り組んでいる。実際に取り組む中で成果の出たポイントについて、ノウハウを含めて外部に提案できるようにしていく。まだまだ理想までは遠いが2018年末には公開できるようにしていく」と園原氏は述べている。

※)関連記事:安川電機が描くスマートファクトリーの3つの役割と現在地

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