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» 2018年07月13日 11時00分 公開

サービスロボット:人の苦しみを肩代わりするサービスロボット、原発を廃炉に導き起立障害を解決へ (1/2)

世界最大級の技術専門家の組織IEEEは2018年6月20日、都内で「サービスロボット技術の現状と未来」と題したプレスセミナーを開催した。

[長町基,MONOist]

 世界最大級の技術専門家の組織IEEEは2018年6月20日、都内で「サービスロボット技術の現状と未来」と題したプレスセミナーを開催した。介護や災害対応など、さまざまなサービス分野においてロボット技術の活用へ関心が高まる中、IEEEフェローで東京大学工学系研究科 教授の淺間一氏が、ロボットの遠隔操作や人の立ち上がり動作における計測と解析などの最新情報を、デモンストレーションを行いながら紹介した。

社会課題を解決するサービスロボット

photo IEEEフェローで東京大学工学系研究科の淺間一教授

 淺間氏は、高齢化や安全、安心などの社会問題を解決し、社会ニーズに応えるサービスロボティクスの研究を進めている。研究テーマは、サービスロボット、サービス工学、空間知能化、ヒューマンインタフェースなどの技術開発だけでなく、「サービスの分野は人とのかかわりが大きい。そのため、人間を理解することも重要である。人の動作研究、適応行動メカニズムの理解、運動主体感、ストレス推定などの研究にも取り組んでいる」と幅広い研究を進めているという。

 さらにロボット技術を各種現場のニーズに適応させるための技術開発にも取り組んでおり、介護、リハビリ、自動車の運転支援、インフラ点検などの研究も進めているという。

 セミナーではこの中で「起立支援システム開発と起立動作解析」と「福島第一原子力発電所の事故対応と措置、災害対応におけるロボット技術の活用と今後の課題」の2つのテーマについて話した。

 ロボット関連市場は2015年で約1.6兆円だったが、2035年には約10兆円に拡大することが見込まれている。特に伸び率を考えるとサービス分野が大きく成長すると予想されている。サービスロボットには「パーソナルサービスとパブリックサービスがある。パーソナルは人個々に対するもので、医療やセラピー、介護などの用途となる。パブリックサービスはメンテナンス、災害対応などになる」(淺間氏)としている。

パーソナルロボットとしての動作支援

 淺間氏は、このパーソナルサービスの1つとして、起立支援システムの開発と起立動作解析に取り組んでいる。「Quality of Life(生活の質)に大きく影響を与えるのは自分で立ち上がる“起立動作”ができなくなった時である。そこで起立に注目した研究を開始した」と淺間氏は起立動作を対象とした理由を述べる。

 社会背景としても、社会保障費の増大、介護者への負担、身体機能の低下などの高齢化社会が抱えざるを得ない問題があった。起立は日常生活動作に直結し、起点となる動作である。加齢とともに起立動作は困難になるが、「まずは人間がどのように立ち上がっているかを分析し、それを支援するような仕組みを考える必要がある」と淺間氏は述べる。

 運動機能を改善するには、筋肉の強化が考えられるが、筋力の増強イコール運動機能の改善ではない。それは、運動というものが複数の筋肉を1度に動かすことで初めて発生するものだからだ。1つの筋肉だけを強くしても能力は上がるとは限らない。複数の筋肉が協調してこそ動作が生まれる。そのため、複数筋の同時訓練が重要だという。そこで「どの筋肉がどういう姿勢で使われているか知る必要があった」(淺間氏)として、起立動作における運動メカニズムの解析を進めているという。

photo 筋電測定センサーのデモンストレーションの様子(クリックで拡大)

 具体的には、脳は個々の筋肉を制御せずに、複数の筋の同時発揮(筋シナジー)を制御しているという仮説(筋シナジー仮説)に沿って「人の起立動作における筋シナジー構造の解明」「運動が低下した患者における筋シナジー構造の特定」「リハビリテーションが筋シナジー構造に与える影響の調査」などに取り組んできた。人間の起立動作の解析にはモーション、表面筋電センサー(EMG)、圧力センサーの3つの計測を行い、情報を得ている。

 人間の起立動作は運動学的特徴に基づいて「フェーズ1(運動量の生成)」「フェーズ2(重心の前方移動)」「フェーズ3(重心の上方移動)」「フェーズ4(姿勢の安定化)」の4つで成り立っている。これらを行う筋シナジー数も4つ程度であり、因子分散分析や多重比較の結果、これらの筋シナジーはフェーズ1〜4の動作に対応しているということが分かったという。「われわれは単純に立っているように見えるが、これら4つの筋シナジーをうまく組み合わせて制御し立っているということが分かった」(淺間氏)と結論を得た。

 また、片マヒ患者の筋シナジー構造の健常者との違いを分析したところ、全て同じではなく、状態により4つのグループに分かれることが判明したという。さらに医学療法士が患者のリハビリに介入にする際に、医学療法士の上肢の筋電を解析し、いつどのように介入しているかなど解明にも取り組んだ。セミナーではこうした解析を行う際に実施した筋電測定センサーによるデモンストレーションを行った。

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