大型トラックに“元を取れる”ハイブリッドモデル、高速道路での燃費を改善エコカー技術(1/2 ページ)

日野自動車は2018年7月17日、同社羽村工場で説明会を開き、2019年夏に大型トラック「プロフィア」のハイブリッドモデルを発売すると発表した。高速道路が大半のルートで走行しても、ディーゼルエンジンモデルと比較して燃費値を15%改善できる。商用車の中でも燃料の消費量が多い大型トラックの燃費を向上させることにより、商用車全体のCO2排出量削減につなげる。

» 2018年07月18日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]
2019年夏に大型トラック「プロフィア」のハイブリッドモデルを発売する(クリックして拡大)

 日野自動車は2018年7月17日、同社羽村工場で説明会を開き、2019年夏に大型トラック「プロフィア」のハイブリッドモデルを発売すると発表した。高速道路が大半のルートで走行しても、ディーゼルエンジンモデルと比較して燃費値を15%改善できる。商用車の中でも燃料の消費量が多い大型トラックの燃費を向上させることにより、商用車全体のCO2排出量削減につなげる。

 これまで、大型トラックは高速道路の走行が中心で発進・停止の頻度が少ないため、ハイブリッドシステムで燃費を向上するのが難しかった。これを受けて、高速道路に勾配が多いことを利用して下り坂でエネルギーを回生し、モーターのみでの高速定常走行(EV走行)や高負荷時の駆動力をアシストするハイブリッドシステムを開発した。車速やエンジンの回転数などから走行している場所を判断し、一般道を走行中の場合は発進から加速までのトルクアシストを行う。

 新開発のハイブリッドシステムで一般道90kmと高速道路270kmの合計360kmを走行して同社社内で検証した結果、従来のディーゼルエンジンモデルと比較して燃料使用量を14l(リットル)削減したとしている。走行距離が年間12万kmの場合は燃料使用量で4700lの削減が図れ、燃料コストとしては56万円(※1)に相当する。「年間走行距離が12万kmより多い場合も珍しくない。(ハイブリッドモデルは従来モデルに価格が上乗せされるが)普通の運転で走れば元を取れると考えている」(日野自動車 参与の山口公一氏)。

(※1)軽油1l=120円で計算

高速道路でのハイブリッドシステムの制御イメージ(クリックして拡大) 出典:日野自動車

行く先を先読みしてバッテリーの充電をコントロール

プロフィアに搭載するハイブリッドシステムは第6世代となる(クリックして拡大)

 今回発表したハイブリッドシステムは第6世代に当たる。第5世代までのハイブリッドシステムは路線バスや小型トラックの他、冷凍・冷蔵車や塵芥車の架装部を電動化する目的で搭載されてきた。小型トラックや路線バスは一般道の走行が多く、発進と停止、加減速を頻繁に繰り返す。走行距離のうち、一般道が86%を占める。そのため、回生エネルギーで発進時のモーターアシストを行う従来のハイブリッドシステムで燃費を改善することができた。

 一方、大型トラックの走行距離は高速道路が57%を占める。高速道路では一定の速度で走行し、一般道よりも減速で得られる回生エネルギーが少ないため、従来のハイブリッドシステムが燃費改善効果を発揮するのが難しかった。

 こうした課題を解決するため、車両の重さによって大型トラックは下り坂での減速エネルギーが大きくなることを利用した。大型トラックは小型トラックの10倍、路線バスの4倍の回生エネルギーが見込めることに着目。国内の主な高速道路では最大勾配が5〜6%で、平たんだといわれる新東名高速道路でも2.1%の最大勾配となっている。

 これにより、高速道路での大容量のエネルギー回生を実現した。羽村工場のテストコースで同乗試乗すると、テストコースには勾配がないものの、アクセルオフで緩やかに減速する状態でも駆動用バッテリーを充電し続けており、乗用車のハイブリッド車と比較して長時間充電する印象だった。

 プロフィアに搭載するのは1モーターのパラレルハイブリッドシステムだ。既存のプロフィアシリーズと同じ排気量9.0lのディーゼルエンジンと組み合わせる。モータージェネレーターとインバーターは、路線バスの第5世代のシステムと共通となる。駆動用バッテリーは第5世代のシステムまでニッケル水素電池だったが、大容量の回生エネルギーで充電するため、プロフィアからリチウムイオン電池を採用する。

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