「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像

GMの自動運転は“都市”で鍛え中、工事現場や信号機故障にも対応自動運転技術

ソフトバンクグループは2018年7月19〜20日、都内でユーザーイベント「Softbank World」を開催し、基調講演の中でGeneral Motors社長のダニエル・アマン氏が登壇し自動運転技術について語った。

» 2018年07月24日 11時30分 公開
[三島一孝MONOist]

 ソフトバンクグループは2018年7月19〜20日、都内でユーザーイベント「Softbank World」を開催。本稿では、基調講演で登壇した米国の自動車メーカーGeneral Motors(GM)社長のダニエル・アマン(Daniel Amman)氏による自動運転技術についての講演内容を紹介する。

自動運転で勝負をかけるGM

 GMは子会社GMクルーズホールディングスを設立し、自動運転技術の研究開発や実証を進めているところである。2018年5月には、このGMクルーズホールディングスにソフトバンクビジョンファンド(SVF)から約2450億円を出資するとの発表が行われ、大きな注目を集めた。

photo General Motors社長のダニエル・アマン氏

 登壇したアマン氏は自動運転の可能性として、自動車が生まれたために生み出された世界の3つの課題を挙げる。

 「自動車は人類にとって大きな価値をもたらした。非常に安価なコストで自由な移動を提供できるようになった。自動車が生まれたことで多くの人々の生活が変わった。一方でそれと引き換えに3つの大きな課題が生まれた。それは、交通事故、エミッション(排気ガス)、交通渋滞である。特に交通事故では、毎年120万人の人が亡くなっており何かを変えないといけないと感じている」とアマン氏は語る。

 これらを解決する技術として注目されるのが自動運転技術だ。アマン氏は「自動運転と電動化により人々の生活は大きく変わる。これらの技術を活用することで走行距離におけるコストは最初の1年から50〜70%下がる。半導体における『ムーアの法則』がモビリティの領域にも広がるということになる」と自動運転の価値について強調する。

自動運転におけるGMの強み

 自動運転技術におけるGMの強みとしてアマン氏は2つのポイントを挙げる。1つ目は開発スピードと規模である。「GMはサンフランシスコとミシガンの2拠点で自動運転技術を開発しているが、自動運転システム全体にかかわる技術者を集めて一貫性を持った開発を進めている。自動運転システムに関する全領域の技術者を集めていることがポイントで、研究開発と改善のサイクルを繰り返し、高速で回すことで、より早く実用的な技術開発を進められる」とアマン氏は強みを訴える。

 2つ目の特徴が複雑な「都市環境」を実証場所として、開発を進めている点だ。アマン氏は「歩行者が不規則な動きをし、工事や停車車両など、予測できないさまざまな変化が日常的に起こる都市は、自動運転技術にとって厳しい環境だといえる。しかし、その中で磨くことで、実用的な自動運転技術により早く近づくことができると考えている。サンフランシスコのチャイナタウンなどで日々実証を進めている」と述べる。

 実際にデモ映像としては、停止車両があり歩行者が複雑に行き交うチャイナタウンや、工事現場で警備員が誘導するような場面、信号機が故障している場面など、複雑な環境においても安全に自動走行ができている様子が紹介された。

【動画】GMの自動運転車のデモ映像。工事現場で作業員が誘導するような場合でも問題なく走行できている(クリックで動画再生)

 GMでは2019年から自動運転車を市場投入する計画を示しているが、アマン氏は「3つの社会課題に対応していくためには、安全な自動運転車を大規模に展開していくことが重要だ。グローバルに大きなチャンスがある。できる限り早く大量に展開できるようにしていく」と抱負を述べていた。

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