特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜
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» 2018年08月06日 11時00分 公開

製造業IoT:“生みの親”が語るインダストリー4.0の本質とこれから (1/3)

SAPジャパンは年次カンファレンス「SAP NOW」を開催し、基調講演プログラムの1つとして、ドイツの「インダストリー4.0」の提唱者でドイツ工業アカデミー評議会議長のヘニング・カガーマン氏が登壇。「インダストリー4.0とソサエティー5.0を推進するエンタープライズIT」をテーマにデジタル化がもたらす産業や経済の変化について訴えた。

[三島一孝,MONOist]

 SAPジャパンは年次カンファレンス「SAP NOW」を開催し、基調講演プログラムの1つとして、ドイツのモノづくり革新プロジェクト「インダストリー4.0」の提唱者でドイツ工業アカデミー評議会(acatech)議長のヘニング・カガーマン(Henning Kagermann)氏が登壇。「インダストリー4.0とソサエティー5.0を推進するエンタープライズIT」をテーマにデジタル化がもたらす産業や経済の変化について訴えた。

生みの親が語るインダストリー4.0

 カガーマン氏はドイツSAPの元会長兼CEOで、インダストリー4.0について技術的な提言を行うacatech議長を務める。2013年に発表された「戦略的イニシアチブIndustrie 4.0実装に向けた提言」の筆頭筆者も努めた、いわば“インダストリー4.0の生みの親”の1人である。

photo 講演を行うカガーマン氏(クリックで拡大)

 カガーマン氏は「インダストリー4.0」のきっかけについて「もともとは2011年に始まった取り組みだ。当時はリーマンショック後の経済危機の影響もあり、ドイツとして競争力を高める必要があった。経済危機などの大きな変化にうまく対応できなかった反省から、変化に対応する俊敏性や予測する力などを高めるためにどうするかという議論が始まった」と当時について語る。

 さらに「いろいろなものが進化し人工知能など新たな技術のブレークスルーが生まれていた。しかし、技術や要素は出てきているが、大きな変革にはつながっていなかった。産業や業界などでの受け皿が成熟していなかったためだ。これらが整ってデジタル化の新たなフェーズに進むことができる。この受け皿になるような枠組みが必要だと考えた」とカガーマン氏は「インダストリー4.0」の狙いについて述べた。

自律化とビジネスモデルの変化

 インダストリー4.0の目指すものとしては製造業における「マスカスタマイゼーション」が挙げられている。マスカスタマイゼーションは大量生産(マスプロダクション)の効率で、カスタム製品(一品ものの製品)を作ることができるようになることだ。これらを実現するのにカギになるのは「自律化」である。「人が作業を定義し判断しなければならない自動化ではなく、機械が判断を行う『自律化』となる」とカガーマン氏は強調する。

 ただ自律化を実現するためには「全ての仕組みそのものを再構成する必要がある。こうした製品をどうやって製造するかなど製品および製造プロセスのレベルから考えないといけない。全てがつながる世界をどこから実現するのかということだ。スマートファクトリー化が進めば経営管理も変わり、ビジネスモデルも変わる」(カガーマン氏)。

 ビジネスモデルの変化については「自律化を実現する『つながる化』が進めば、全てのものはデータを生むようになり、サービスと連携することになる。全てがデータで判断できるようになれば、サービスプラットフォームで経済が回るようになる。こうした姿を思い描いてエコシステムを構築する必要がある。そのための技術モデルを考えていく必要がある」(カガーマン氏)としている。

 さらに、こうした動きに対する影響範囲が広くなることから「社会全体に関わるこれらの変化は時には倫理的ルールにふれることにもなり得る。その中で社会全体に対しどう位置付けるかを示した『Society 5.0』を発表したのは意義がある」とカガーマン氏は述べている。

photo ドイツ政府のデジタルプロジェクト(クリックで拡大)出典:acatech
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