メイカーズから始まるイノベーション、ポイントは「やるかやらないか」イノベーションのレシピ(2/2 ページ)

» 2018年08月07日 11時00分 公開
[三島一孝MONOist]
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ハードウェアテクノロジーは日本が世界で勝負できる領域

 第2部では、大手半導体商社で数々のベンチャー企業支援を進めてきたマクニカの米内氏と、自由度の高いプリント基板を小ロットで提供して成功しているハードウェアベンチャーのエレファンテック清水氏が、パネルディスカッションを行った。

photo エレファンテックの代表取締役社長 清水信哉氏

 エレファンテックは、2014年に清水氏が設立したプリンテッドエレクトロニクス製造技術の開発、サービス提供を行う企業だ。設立時はAgICという社名だったが2017年9月にエレファンテックに商号変更した。エレファンテックの特徴が印刷技術による基板製造技術を開発し、従来製法に対し、リードタイムや使用材料などを低減することに成功しているという点だ。

 清水氏は、東京大学卒業後は大手コンサルティングファームに就職。就業中の米国留学などを経て、エレファンテック(AgIC)を設立した。スタートアップを立ち上げた理由について「米国留学の際にマサチューセッツ工科大学(MIT)などに通っていたが、東京大学とこれらの大学を比べた場合、エンジニアリング能力はどちらも優れており大差はない。さらにビジネス能力については、どちらもそれほど優れているというわけではなく大差がないと感じた。何が大きな違いになっているかというと、それはスタートアップの数であり、スタートアップを起こす心理的障壁の違いだと感じた」と清水氏はそれぞれの違いについて述べる。

 そして「別にテクノロジーで負けているというわけではなく、単純に新しいことを始める(起業する)人が格段に多いだけだ。日本が遅れているや負けているとよく言われるが、よく見ると違いはほとんどなく『だったら自分が1本目の矢になる』と考え、スタートアップを立ち上げることにした」と清水氏はスタートアップ立ち上げの経緯について語った。

 一方で、マクニカは半導体商社の大手企業だが、業界の黒子としてさまざまなベンチャー企業の支援などを進めている。

photo マクニカ Mpression推進部 部長の米内慶太氏

 エレファンテックについても支援を進めているが、支援した理由について米内氏は「ハードウェアベンチャーは技術者が中心となっている場合が多い。良くも悪くも、技術オタクの社長が多いのだ。その中で支援のために見ているのが、社長の人間性と、技術面と経営面のそれぞれが見えているのかという点だ。その点でエレファンテックは優れていた。また、メイカーズやスタートアップの製品製造という新しい空白地帯で価値を発揮するという点でも興味深かった」と述べている。

 スタートアップやベンチャーといえば、ITやWebサービスなどが中心となりがちで、ハードウェアベンチャーは世界でも成功するのが難しい領域だといわれている。しかし、清水氏は「もともとは機械学習の研究者だったが、その方向で世界の技術を見た場合、どうしても米国や中国に勝てる姿が描けなかった。しかし、製造業やハードウェアのテクノロジーを見た場合には、勝つチャンスがあると考えた。モノづくりのレベルの高さは、Maker Faireを見ても明らかだ。Maker Faire Tokyoでは製品化ができそうなレベルのものが数多く出展されているが、米国のMaker Faireを見ると、手芸品に近いようなものばかりで、ハードウェアとしての品質には大きな差がある。そのモノづくりの強さを生かすべきだと考えた」と日本のハードウェアの強さを訴えた。

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