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» 2018年08月07日 06時00分 公開

自動運転技術:SIP第2期は「1期の積み残しのためではない」、2023年までの自動運転の取り組み

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2018年8月3日、東京都内で会見を開き、内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」が2022年度まで取り組む「SIP第2期」の研究開発計画を発表した。第2期は、2018年度で終了する第1期とは全く違うプロジェクトであり、「第1期の積み残しをやるためではない」(自動運転 プログラムディレクターでトヨタ自動車 先進技術開発カンパニー 常務理事の葛巻清吾氏)という位置付けだ。

[齊藤由希,MONOist]
SIPプログラムディレクターの葛巻清吾氏

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2018年8月3日、東京都内で会見を開き、内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」が2022年度まで取り組む「SIP第2期」の研究開発計画を発表した。第2期は、2018年度で終了する第1期とは全く違うプロジェクトであり、「積み残しをやるためではない」(SIP 自動運転 プログラムディレクターでトヨタ自動車 先進技術開発カンパニー 常務理事の葛巻清吾氏)という位置付けだ。

 第1期で「自動走行システム」として取り組んだ自動運転分野は、「自動運転(システムとサービスの拡張)」と題し、一般道での自動運転技術の実用化や、自動運転技術を活用した物流・移動サービスの実用化を目指す。2023年までにこれらの実現に必要な協調領域の技術を確立する。また、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックにおいて、自動車メーカーなどが技術をアピールできる場をSIPの一環で用意する。

2019年秋から東京臨海地域で実証実験

 SIP第2期の「自動運転(システムとサービスの拡張)」は、実用化に必要なステークホルダーが参加した研究開発により、スムーズな実用化に結び付けることを目指す。民間からの投資や事業化計画の立案を促進するため、東京オリンピック・パラリンピックを活用するとともに、事業者や地方自治体が主導した地域での実証実験を行う。

 「自動運転(システムとサービスの拡張)」では、出口戦略として次の項目を目標とする。

  • 自家用車:運転支援システム(レベル2以上の自動運転)の一般道における高度化。2025年をめどに高速道路におけるレベル4の自動運転の製品化。
  • 次世代公共交通:自動運転技術を活用した、一般道における少人数輸送サービスの事業化。
  • 物流サービス:高速道路におけるトラックのレベル4の自動運転を2025年以降に製品化。
  • 地方公共交通:レベル4の自動運転による移動サービスを2020年以降に事業化。

 葛巻氏は「制限なしで走行するレベル5の自動運転は、技術的にはまだ先になる。個人が使用するクルマに対して、こちらから使い方の制約を設けるのは難しいし、使われる条件もさまざまだ。自家用車では、運転支援を中心に事故や渋滞をいかに減らすかが商品価値になるだろう。物流や移動サービスは人手不足が喫緊の課題となっているので、使用条件を制約しながらまずは実用化することが重要だと考えている」と説明した。

 この出口戦略に向けて、2019年秋からは東京オリンピック・パラリンピックを見据えて東京臨海地域(臨海副都心地域と羽田地区の一般道と首都高速道路)で、日本自動車工業会と連携して実証実験を行う。内容としては、信号の情報を活用して交差点を安全に通行できるようにする実験や、高速道路の本線への合流支援、混流交通下での自動運転バスの公道実証などを想定している。

 地域交通の実証実験では、過疎地や地方都市を対象に物流や移動サービスにおける自動運転の有効性や事業性を検証する。長期間の実証実験を通して、一般市民の社会受容性の向上にも取り組み、複数の実用化事例を創出することを目指す。必要な規制改革や制度整備については、SIPが府省連携による一体的な検討を進める。

 大まかな日程として、2018年度は、公道実証エリアの基盤整備や、信号情報を利用するための機器開発に当てる。また、自動運転バスの車両開発や、少人数輸送サービス向けのインフラ協調環境なども整備する。高速道路の合流支援など向けには、長期間の交通流実態調査と、インフラ実験機の設置実証実験を行う。

 東京オリンピック・パラリンピックでのデモンストレーション実施後は、実験の成果や課題をまとめ、実証実験のインフラをレガシー化に向けて開発、整備する。2022年度には、実用化という出口戦略に向けた大規模実証実験を予定している。

仮想空間での安全性評価、交通環境データの構築にも取り組む

 SIP第2期でも、第1期同様に協調領域となる基盤技術の開発に取り組む。その1つのテーマが仮想空間での安全性評価環境の構築だ。さまざまな気象条件と交通環境を再現し、自動運転車の安全性を評価できるシミュレーションツールを開発する。また、シミュレーションにより、網羅的で客観的な評価の実現も目指す。産学の専門家による共同研究を予定している。

 また、東京オリンピック・パラリンピックに合わせて実施する実証実験では、高速道路の合流支援や信号情報の提供を行うため、動的な交通環境データの整備と構築もテーマとなる。「SIP第1期では、ダイナミックマップの概念をまとめ、高速道路での自動運転ができる地図を作り、標準化することに取り組んだ。これを一般道にも広げていく上での課題を解決しなければならない。例えば、民間企業が持つプローブ情報をどう活用するか、今あるインフラから取得している情報をどう統合するか。協調型の自動運転に使うだけではコストが高すぎるので、他の事業にいかに使うかも課題になっていく」(葛巻氏)。

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