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» 2018年08月08日 13時00分 公開

【週刊】ママさん設計者「3D&IT活用の現実と理想」:紙図面だけで加工ができてしまう汎用工作機械

まるで週1の連続ドラマのような感覚の記事、毎週水曜日をお楽しみに! 今期のメインテーマは「設計者が加工現場の目線で考える、 3DとIT活用の現実と理想のカタチ」。2018年8月のサブテーマは『汎用工作機械での3Dデータ活用を考える』です。

[藤崎 淳子/Material工房・テクノフレキス,MONOist]

まるで週1の連続ドラマのような感覚の記事、毎週水曜日をお楽しみに! 今期のメインテーマは「設計者が加工現場の目線で考える、 3DとIT活用の現実と理想のカタチ」。2018年8月のサブテーマは『汎用工作機械での3Dデータ活用を考える』です。


 前回までは、『「こんな加工現場はいやだ!」 適切な3D化とIT化を考える』をお題に、「生産管理のIT化による効果」「見える化の正しい形とは?」「3Dは万能なんかじゃない」などについて述べてみました。今回からはテーマを「汎用工作機械での3Dデータ活用を考える」と変えてお話ししていきます。

SCENE 1:紙図面だけで加工ができてしまう汎用工作機械(第3回サブテーマ:汎用工作機械での3Dデータ活用を考える)

 「加工現場における3Dデータの活用」と聞くと、真っ先に「NC加工プログラムの作成」が思い浮かぶことでしょう。大手や中小の加工現場では、図面を見ながら手動で加工する汎用工作機械と、3D CAMを使って作成したプログラムで加工するNC工作機械が混在しており、それらが流れを持って稼働しています。よって加工業全体で見た場合の3D CAD/CAMの普及率は伸びていて、汎用工作機械の作業者がNC工作機械も操り、その中で3Dデータを扱うことも珍しくありません。

卓上切削機による加工の様子

 それでは、俗に言う「ベンチレース屋さん」や「フライス屋さん」といった汎用工作機械での単発加工を専業とする現場では、3D CADは全く出番がないのでしょうか?

 確かに、汎用工作機械では自由曲面を含んだ加工はしませんし、そもそも紙図面さえあれば作業ができるので、3D CADはもとよりCADデータ自体なくても構わないものです。それでも、「なくても構わない」というのはさておいて、汎用工作機械の加工現場にも3D CADがあれば、どんなメリットがあるのかを探ってみましょう。

 世にCADが普及する前の図面は手描きで、それ以外に設計情報を伝える手段がなかったので、そこには設計の作り込みが漏れなく反映されていました。やがて2次元CADによる製図が一般化して、加工工場へは紙図面の他に、DXFやDWGといったCADデータも支給されるようになりました。そうして時をへた今も、現場ではとにかく紙図面が重要、常に優位なのです。しかし、最近その重要なはずの紙図面に異変が起きていて、そのせいで加工が止まってしまうことがしばしばあるのです。これは私自身も気を付けたいことなので「異変」だなどと大げさな言葉で書きますが、因果なことにその原因は、3D CADの普及にあるようなのです。

 かつて2次元オタクな設計者だった私が3D CADでの設計に切り替えてすぐ直面したのが、「モデルデータと2次元図面の2つを用意しなくてはならない」という面倒くささでした。面倒だと言っても、3D CADの作図機能を使っての図面作成なので、2次元CADで一から図面を書くことに比べたらはるかに楽です。ですが、楽さからの気の緩みなのか、魔が差すというのか、この段階で、必要な指示がところどころ抜け落ちた中途半端な図面を作ってしまうことがあるのです。

 汎用工作機械で加工する品目ならば、本来、図面さえきちんと作成されていればDXFや3Dデータは不要となり、3D CADの導入は意味がないかも知れません。ですから、日頃CADデータを扱う機会がない「ベンチレース屋さん」や「フライス屋さん」にとって、不十分な図面というのは、ただ作業の手を止める障害物でしかないんですよね(あー、耳が痛い……)。

 2次元CADだけで設計していた時代にも、「図面に寸法が抜けているんですが、DXF通りで良いでしょうか」という問い合わせを受けることはたまにありましたが、なんにせよ問い合わせができるということは、相手にもCADデータが見られる環境があるということです。これは設計者としてはありがたく、情報共有にもつながるので、ここでメリットが生まれます。

 このように、これまでは「3Dデータだけでは全てを判断することは不可能」として、紙図面をセットにしてきたのが、最近では肝心の図面が不十分な場合にそれを補うものとしてCADデータが重宝がられるという逆の現象も見られます。ですから、加工で直接3D CADを使うことはなくても、データを見られる環境は備えておいてもムダではないといえるのです。まぁそれよりも、設計者は出図の前に、図面をきっちりチェックしたいですね(あー、胸が痛い……)。


 次回は「SCENE 2:【事件ファイル】図面通りに加工したのになぜNGなのだ!?」をお届けします。3Dモデルが更新していたのに、図面は更新されていなかった、というワナががが……!(次回へ続く)

Profile

藤崎 淳子(ふじさき じゅんこ)

長野県上伊那郡在住の設計者。工作機械販売商社、樹脂材料・加工品商社、プレス金型メーカー、基板実装メーカーなどの勤務経験を経てモノづくりの知識を深める。紆余曲折の末、2006年にMaterial工房テクノフレキスを開業。従業員は自分だけの“ひとりファブレス”を看板に、打ち合せ、設計、加工手配、組立、納品を1人でこなす。数ある加工手段の中で、特にフライス盤とマシニングセンタ加工の世界にドラマを感じており、もっと多くの人へ切削加工の魅力を伝えたいと考えている。

・筆者ブログ「ガノタなモノづくりママの日常」



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