デジタルツインを実現するCAEの真価
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» 2018年08月08日 11時00分 公開

5分で読める簡単解説:いまさら聞けない「デジタルツイン」 (1/2)

IoT活用やデジタル変革の流れの中で耳にすることが多くなった「デジタルツイン」。このデジタルツインとは何かを5分で分かるように簡単に分かりやすく解説します。

[三島一孝,MONOist]

 IoT(モノのインターネット)活用やデジタル変革の流れの中で耳にすることが多くなった「デジタルツイン」。このデジタルツインとは何かを5分で分かるように簡単に分かりやすく解説します。

デジタルツインとは

 デジタルツインとは、そのまま「デジタルの双子」を意味します。フィジカル空間の情報をIoTなどを活用して、ほぼリアルタイムでサイバー空間に送り、サイバー空間内にフィジカル空間の環境を再現します。このサイバー空間上に物理世界の情報を全て再現することから“双子(ツイン)”と表現されているというわけです。

 デジタルツインの環境を活用することで、フィジカル空間のモニタリングを行える他、シミュレーションなどを行うことができます。つまり、このサイバー空間でシミュレーションを行った結果から、現実世界における将来の故障や変化を予測できるというわけです。この点がデジタルツインで最も大きく期待されている点だといえます。

 そもそも、デジタルツインが注目を集めるようになったのはIoTの普及があったからです。従来は物理世界の情報をデジタル化するためには、入出力作業などで人手が必要となり、その負担が大きかったためサイバー空間に入力されるデータの量はある程度限定されており、フィジカル空間をそのまま再現するようなことは難しいものでした。しかし、IoTにより、データを自動的にリアルタイムで取得し続けることが可能となりました。その結果、ある一定の指標のもとでは、物理世界を仮想世界に再現することが可能となり、デジタルツインが実現できるようになったのです。

 IoTと一緒に語られる仕組みとして「サイバーフィジカルシステム(CPS)」がありますが、デジタルツインともほぼ同義で使われています。どちらも概念ですので、明確な違いはないのですが、あえて違いを見いだすと、CPSはより個別の指標におけるデータ活用のサイクルを示しており、デジタルツインはそのデータの集合体としてサイバー空間に再現した物理モデルを意味しているといえます。

photo IoT活用の基本的な仕組みとなる「CPS(サイバーフィジカルシステム)」(クリックで拡大)出典:MONOist編集部で作成

デジタルツインの価値を分かりやすく示したFIFAワールドカップ

 デジタルツインやCPSを最も分かりやすく示していた例が、2018年6〜7月に開催された「2018 FIFAワールドカップロシア大会」で見られました。同大会は「初めてのデジタルワールドカップ」と呼ばれるほど、デジタル技術が駆使されていました。誰もが思い浮かべる例が「VAR(ビデオアシスタントレフェリー)制度」や「ゴールラインテクノロジー」だと思いますが、デジタルツインの価値を分かりやすく示した技術としては「Electronic Performance & Tracking System(EPTS)」があったと考えます。

 これはFIFAが今回のワールドカップに出場した全チームに提供した、選手の挙動を記録し、分析できるようにしたシステムです。カメラによる光学トラッキングシステムでボールや選手の動きをリアルタイムで取り込み、分析、可視化などを行えるようにしました。大会中は2台のタブレット端末を、監督らのベンチと、俯瞰した場所で試合を見るデータ分析担当者に渡し、データ分析担当者はEPTSのリアルタイム情報を分析しながら、監督に采配の指標や意見などを送ったといいます。

 選手の位置情報などはカメラから取得しますが、認証されたデバイスを選手が取り付けていれば、心拍数などのフィジカルコンディションなども取得可能となり、疲労度などに応じた選手交代なども可能だとしています。

 選手のリアルタイムの情報などをカメラを通じて常に取り込みサイバー空間で試合の様子を再現します。まさにワールドカップの“デジタルの双子”を作ったわけです。この“双子”を活用し、さまざまな分析を行い、それを現実世界の試合に反映させ、試合内容を変化させるというわけです。こうした仕組みがまさにデジタルツインの価値だといえるのです。

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