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» 2018年08月10日 13時00分 公開

金属3Dプリンタ:日本の積層造形の取り組みは周回遅れ、今から世界に追い付くには?(後編) (1/2)

金属3Dプリンタの最新動向や課題を語る「Additive Manufacturingのためのシミュレーション活用セミナー」(サイバネットシステム、アンシス・ジャパン主催)が2018年7月4日に東京会場、5日に名古屋会場で開催された。

[加藤まどみ,MONOist]

 金属3Dプリンタの最新動向や課題を語る「Additive Manufacturingのためのシミュレーション活用セミナー」(サイバネットシステム、アンシス・ジャパン主催)が2018年7月4日に東京会場、5日に名古屋会場で開催された。

 セミナーでは、近畿大学教授で技術研究組合次世代3D積層造形技術総合開発機構(TRAFAM)プロジェクトリーダーの京極秀樹氏が世界の最新動向や造形研究について紹介。またアンシスの造形シミュレーションやトポロジー最適化およびラティス構造ソフトウェアについても紹介された(前編で紹介)。

 サービスビューロの金属技研や積層造形装置を提供する愛知産業は、金属3Dプリンタの現状や課題を語った(後編で紹介)。

新しい発想はトポロジー最適化の力を借りる

 金属技研は、粉末床レーザー溶融および電子ビーム溶融の装置複数台を稼働させて受託生産を行っている。

金属技研の増尾大慈氏

 積層造形で得られるメリットの1つが、ラティス構造によるものだと金属技研 技術本部 テクニカルセンター 主務の増尾大慈氏は言う。ラティス構造を3次元に展開することで、部分的にセルサイズを変化させて強度調整するといったことができる。医療系ではラティス構造により生体適合性を高めることも可能になる。

 別のメリットとして挙げられるのが、部品の一体化である。従来の方法だと機械加工や溶接などさまざまな工程を経てようやく1つの製品を作り上げるところを、積層造形により一体化して造形することで、時間短縮やコストダウンの効果を得られる。さらに寿命が延びてメンテナンス頻度が下がったり、水管などを理想的なパターンに設計したりすることで高付加価値を得ることもできる。

 「3Dプリンタでは、従来工法だと高価になってしまうゾーンを狙う。そのためには新しいアイデアが必要だが、いきなり飛躍した設計を思い付けといわれても難しい。そこでトポロジー最適化は大きなヒントになる」(増尾氏)。ただし、トポロジー最適化で出てきた形はどんなものでも作れるわけではない。トポロジー最適化で新たな発想を得ることは可能だが、それを造形できる形状に修正する部分はノウハウが必要になるという。

 また「金属造形はひずみとの闘いだといわれる」(増尾氏)ことから、造形に当たってはひずみの理解も重要だという。ひずみ具合は材料、また造形機によっても違ってくるため、それらを把握することが必要になる。

量産体制のためには前後工程も重要

 3Dプリンタで造形するとき注目されるのは、造形検討・処理の部分(図4中の黄緑の枠)である。だが品質保証を突き詰めると、この図全ての内容をフォローする必要があると増尾氏はいう。粉末はどんどん劣化するため、状態を管理しなければ設計仕様を満たせなくなってしまう。また曲面が多すぎると形状計測ができないので、計測しやすい形状にする必要がある。

図4:金属技研における積層造形の製作フロー

 後工程に関して、金属技研では熱間等方圧加圧処理を行う装置を導入している。熱と圧力をかけることでマイクロ欠陥を押しつぶすのが特徴となる。また重要な目的の1つが、複数の同一パーツの品質をそろえることだという。造形装置によって強度が1割ほど変わることもあるためだという。

 また構造部材や過酷な振動にさらされる部品の場合は、長期的な評価も必要になる。例えば疲労強度は初期の半分くらいにまで落ちる傾向があるが、熱処理によって落ちる割合を低減できる。

 増尾氏は「5〜10年ほど差がついているといわれる。欧州で開催されたセミナーで、トポロジー最適化と積層造形を組み合わせた部品の事例を聞いたのが4年前だった。日本の講演などで目にするようになったのは2017年ごろから」だと語る。国内では積層造形のメリットがようやく認められつつあるが、海外では積層造形で形状ができるのは当たり前で、新たな付加価値をいかに生み出すかに注目がシフトしているという。

AMはさまざまな技術からできている

愛知産業の木寺正晃氏

 愛知産業は海外の各種の積層造形装置や金属材料などを取り扱う。同社営業本部商品統括部 レーザ・抵抗溶接機器販売統括課、兼 粉体事業推進準備室 主査の木寺正晃氏は「AM(Additive Manufacturing)は思ったよりもさまざまな技術でできている。ボタンを押せば形状が出てくるとかなりの人が思っているが、実際はとんでもなく面倒な装置。だがそれを補って余りある将来性のある装置」だという。

 同社では「パウダーがとにかく高いので、その対策を行っている」(木寺氏)という。純正品でないものは2〜3割安価なことも多い。また目的によっては、パウダーではなくワイヤの選択肢もある。なおパウダーについては、国内外共に人体への影響などに関する取り扱いルールが未整備なのも課題だという。

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