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» 2018年08月10日 06時00分 公開

製造マネジメントニュース:「検査員の運転スキル」が頼りの完成検査、ヒト依存から脱却へ (1/2)

国土交通省は2018年8月9日、スズキとマツダ、ヤマハ発動機の3社において、排ガスの抜き取り検査で、正しい条件で測定できなかったデータを有効なものとして扱う検査不備があったと発表した。

[齊藤由希,MONOist]
排ガス検査装置の概要(クリックして拡大) 出典:マツダ

 国土交通省は2018年8月9日、スズキとマツダ、ヤマハ発動機の3社において、排ガスの抜き取り検査で、正しい条件で測定できなかったデータを有効なものとして扱う検査不備があったと発表した。これに合わせて同日に、3社が東京都内で記者会見を開いた。

 日産自動車とSUBARU(スバル)の事案を受けて、同様の検査不備がないか、日本国内で型式指定を取得している自動車メーカーなど23社を対象に調査した結果、判明した。一部のインポーターは本国からの報告が遅れているものの、その他の乗用車メーカーや商用車メーカー、架装メーカーは抜き取り検査で不適切な取り扱いはなかったと国土交通省に報告している。

 各社の報告によれば、スズキが四輪車で6401台、マツダが72台、ヤマハ発動機が7台について、測定モードに合わせられずに失敗した測定結果(トレースエラー)を有効とし、完成検査を実施していた。スズキの二輪車は、さかのぼれる期間内にトレースエラーのデータがなかった。また、今回の調査に原付1種は含まれておらず、ヤマハ発動機は「同様のことが行われていた可能性はある。今後調査する」と説明した。

 日産自動車やスバルでは、温度や湿度など測定条件や測定値に対する書き換えや改ざん、校正しない測定機器による測定が行われていた。スズキとマツダ、ヤマハ発動機では、トレースエラーを有効なデータとして扱ったのみで、書き換えなどは行っていない。また、燃費や排ガスの測定結果をよく見せるためのものではなかったとしている。

 完成検査は、生産した車両の性能の平均がカタログ値を満たすことを確認する作業であり、完成検査の不備は品質に直接影響するものではないとしている。また、トレースエラーを除外して検証した結果、完成検査の平均値が対象車種が規制やカタログ値を満たしていることが確認できたため、3社ともリコールは実施しない方針だ。

国土交通省の調査結果
会社名 スズキ ヤマハ発動機 マツダ
対象期間 2012年6月〜2018年8月 2016年1月〜2018年8月 2014年11月〜2018年8月
対象期間中の抜き取り検査台数 1万2819台 335台 1875台
トレースエラー件数 6401台 7台 72台
トレースエラー比率 49.9% 2.1% 3.8%
期間が一律で2018年8月までなのは、国土交通省が指示した調査期間が2018年7月9日〜同年8月8日となっているため。対象期間がばらついているのは、各社でデータをさかのぼれた期間が異なることによる。

 国土交通省は、複数の自動車メーカーで抜き取り検査の不適切事案が発生したことを踏まえて省令を改正し、完成検査での測定値の記録を保存することや、記録を書き換えできなくする措置、書き換えが判別できる措置を講じることとする。また、これについて同年8月10日からパブリックコメントを募集する。

両立の難しい2つの作業

トレースエラーとは?(クリックして拡大) 出典:マツダ

 完成検査における燃費や排ガスの測定試験は、型式認証を取得する際と同様に走行試験を行う。検査員は秒単位で変化する基準速度を一定の範囲内の誤差で維持しながら、二輪車の場合で20〜30分、四輪車で40分にわたって運転しなければならない。試験の実施に当たって、速度の逸脱が下表の条件から外れるとトレースエラーとなり、本来は測定試験をやり直す必要がある。

トレースエラーの判定基準
走行モード 条件
JC08モード 逸脱1回あたりの許容時間 1.0秒以内
逸脱の総積算時間の許容時間 2.0秒以内
※ただし発進時とMT車の変速操作の1秒以内の逸脱時間は総積算時間に含めない
WLTCモード 逸脱1回あたりの許容時間 1.0秒以内
逸脱の許容回数 1回の試験で10回以内
WMTCモード 許容される逸脱時間 2秒未満
二輪車モード 1秒以内
基準速度に対し、±時速2.0kmの範囲内で走行しなければならない

 速度の逸脱が許されるのは1秒以内とごく短い時間だ。検査員であるドライバーは、測定試験のために緻密な運転操作を数十分間にわたって続けながら、走行モードの速度を指示する測定装置の画面も確認しなければならなかった。そのため、トレースエラーが見逃されやすい環境になっていた。

 各社共通して、測定装置には速度が逸脱していることを通知する表示もあったものの、すぐに表示が消えてしまうため、「何秒間逸脱したのか」「トレースエラーに該当するのか」を検査員が試験中に客観的かつ確実に把握することが難しかった。また、トレースエラーを検出すると自動的に測定を中止するような仕組みにもなっていなかった。

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