特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

期待されるロボット市場の成長、安川電機は何を思うか産業用ロボット(1/3 ページ)

産業用ロボットでトップレベルのシェアを握る安川電機。労働人口減少による人手不足や政府の掲げる「ロボット新戦略」などロボットの活躍の場がさらに増えると見られている中、何を考え、どのような技術開発を進めているのだろうか。ロボット事業部 事業企画部 部長の富田也寸史氏に話を聞いた。

» 2018年08月10日 12時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 産業用ロボットでトップレベルのシェアを握る安川電機。労働人口減少による人手不足や政府の掲げる「ロボット新戦略」などロボットの活躍の場がさらに増えると見られている中、何を考え、どのような技術開発を進めているのだろうか。ロボット事業部 事業企画部 部長の富田也寸史氏に話を聞いた。

photo 2017 国際ロボット展に出展された安川電機の産業用ロボット(クリックで拡大)

キーコンポーネントを内製する強み

 安川電機は1977年に「MOTOMAN-L10」を開発し産業用ロボット市場に参入。現在はこの産業用ロボット「MOTOMAN」シリーズに加え、半導体ウエハー搬送ロボット「SEMISTAR」シリーズ、人協働ロボットなどのラインアップを展開し、累計出荷台数は2016年度時点で38万台以上に達している。安川電機の2017年度の売上高は4485億円だが、その36%をロボット事業で担っている。

 安川電機のロボット事業における強みの1つが、キーコンポーネントや差別化につながる技術を内製しているという点だ。ロボット開発にはまず、メカやコントローラー設計の他、キーコンポーネントとなるサーボモーターやドライブが求められる。その他、ロボットを使用する際に使うアプリケーション技術や製造技術などが必要になる。これらを全て安川電機では内製しており、そのためフレキシブルな製品の開発や提供を行える点が強みとなっている。

 実際に安川電機の産業用ロボットは、さまざまな用途に応じた豊富な製品ラインアップをそろえていることが特徴で、それにより高いシェアを築いてきた。特にアーク溶接やスポット溶接、塗装などの自動車向けや半導体産業向けでは大きなシェアを獲得している。

 富田氏は「安川電機の産業用ロボットは基本的な顧客に寄り添い市場のニーズに応えていくという点が強みだ。業界や産業、用途に応じた使いやすさを作り出せることがポイントである」と強みについて語る。

photo 安川電機の産業用ロボットの主なラインアップ(クリックで拡大)出典」安川電機

 さらに新しい用途開拓なども推進。食品、化粧品、医薬品などの業界への提案なども広がる他、バイオメディカル分野での関心が高まっており、これらの領域での提案を広げていく方針である。富田氏は「食品、化粧品、医薬品などの領域は既に10年以上提案を進めている。ただここ最近はバイオメディカル分野と合わせて、自動化へのニーズや衛生面での問題から引き合いが高まってきている」と富田氏は語っている。

 これらの用途拡大が進む中で、生産体制も拡充。1990年に「ロボットがロボットを作る工場」として第1工場を稼働して以来、北九州地域での生産を中心としてきたが、2013年には中国の江蘇省常州市で生産を開始。同工場の生産能力の拡充を進め、2018年7月には第3工場を稼働させたところである※)。さらに欧州ではスロベニアのコチェーヴィエ(Kocevje)市で新工場を建設中で2018年末までに稼働を開始する予定としている。これらの生産能力増強により「月産4000台の生産能力を月産5500台に拡充する」(富田氏)としている。

※)関連記事:中国のロボット需要に対応するため、第3工場を増設

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