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» 2018年08月29日 13時00分 公開

【週刊】ママさん設計者「3D&IT活用の現実と理想」:汎用工作機械の現場、3Dデータはこう役立てる

まるで週1の連続ドラマのような感覚の記事、毎週水曜日をお楽しみに! 今期のメインテーマは「設計者が加工現場の目線で考える、 3DとIT活用の現実と理想のカタチ」。2018年8月のサブテーマは『汎用工作機械での3Dデータ活用を考える』です。

[藤崎 淳子/Material工房・テクノフレキス,MONOist]

まるで週1の連続ドラマのような感覚の記事、毎週水曜日をお楽しみに! 今期のメインテーマは「設計者が加工現場の目線で考える、 3DとIT活用の現実と理想のカタチ」。2018年8月のサブテーマは『汎用工作機械での3Dデータ活用を考える』です。


SCENE 4:汎用工作機械の現場、3Dデータはこう役立てる

 ここまでのエピソードで、「汎用工作機械だけの加工現場でも3D CADは利用価値があるかも…」と、ほんのわずかでも感じていただけたでしょうか。個人的に、幅広い加工屋さんに3D CADや3Dデータがどういうものかを知っていただきたい理由があります。

 近年3D CADによる設計が推進されている裏では、幾つかの課題もあります。よく見受けられるのが、「切削加工で対応できる形状になっていない」または、「ホルダー干渉が考慮されていない無理やりな形状で加工不可」という例です。これらが設計側で見つかればまだ良いほうで、多くは加工者に図面が渡って、加工検討の中で判明というケースです。どうしてこんなことが頻発するのでしょうか。

 確かに3D CADは直感的に形状を作れる便利なツールですが、悪い言い方をすれば「加工が分からない人でも、操作を覚えてしまえばいかようにもなるツール」でもあります。「そんなの2D CADでも同じでしょ」と思われるかも知れませんが、2D CADは手書き製図をコンピュータ化したツールですから、ドラフターでの製図と同じく空間把握能力を身につけて、3次元形状を2次元に脳内変換して、思考しながら3面図を描かなくてはいけませんし、部品図面の中には加工に必要な情報を全て記載しなくてはいけません。その繰り返しの中でイヤでも加工知識は身についていきます。

 その点3D CADは、画面上の仮想空間に対して思いのままの3次元形状を描くことができて、そこから図面テンプレートにモデルを移せば、それなりに体裁の取れた図面が楽に出来ます。でも、だからと言って知識ゼロのままいきなり実用レベルの部品モデルを作れるわけではないし、図面に至っては、加工屋さんをイラっとさせないまともな図面を作成しなくてはいけません。そこでやっぱりモノづくりの基礎知識は必要なのです。そこの教育を省いてしまうのかなんなのか分かりませんけど、大手メーカーさんであっても、「3D CADの操作には長けているのに、生まれてこのかた材料に触ったことも加工経験もない、若い設計者が増えているらしい」というのです。これが「切削加工できない形状」や「ホルダー干渉を起こす形状」などのケースを引き起こしている一因なのでは?とにらむ加工屋さんは多いのです。しかし、その生の声が先方の設計者まで届くことはほぼありません。

 それでは、加工の検討段階で加工屋さんが3Dデータを確認できる環境があったらどうでしょうか。「この形状は切削加工ではムリ」とか「ホルダー干渉するからこの穴位置を上に○mmずらしてくれないか」などのフィードバックを送り、それを受けた設計者はモデルを作り込んで、最初から「加工に使える図面」を支給することも可能です。これまでのように「こんな形状は加工不可!」と図面の差し戻しを受けてから設計を見直すよりもムダは減りますし、加工者とのコミュニケーションによって設計者が加工知識を得ることにもつながるのではないでしょうか。他にも、形状見直しによる加工コスト削減のメリットだってあるかも知れません。

 汎用工作機械での加工は、「加工の基礎」といえる作業で終始アナログです。あらかじめ加工順序を考慮しなければ手をつけられないこともあるので、その勘と経験、ノウハウ等は全ての工作機械での加工にも生かされる貴重なものです。これはどんなに3D CADによる設計が普及しても変わることはありません。ただ、それでも時代は変わっていきます。変化に合わせながら、加工の技術者だけでなく設計の技術者を育成する意味でも、汎用工作機械の加工現場での3D データ活用の取り組みに期待したいところです。


 次回から新しいサブテーマ! 「3D化とIT化は本当に後継者育成の鍵になるのかを考える」が始まります。(次回へ続く)

Profile

藤崎 淳子(ふじさき じゅんこ)

長野県上伊那郡在住の設計者。工作機械販売商社、樹脂材料・加工品商社、プレス金型メーカー、基板実装メーカーなどの勤務経験を経てモノづくりの知識を深める。紆余曲折の末、2006年にMaterial工房テクノフレキスを開業。従業員は自分だけの“ひとりファブレス”を看板に、打ち合せ、設計、加工手配、組立、納品を1人でこなす。数ある加工手段の中で、特にフライス盤とマシニングセンタ加工の世界にドラマを感じており、もっと多くの人へ切削加工の魅力を伝えたいと考えている。

・筆者ブログ「ガノタなモノづくりママの日常」



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