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» 2018年09月04日 16時00分 公開

医療機器ニュース:表面実装機の技術で細胞を1個1個より分け、効率的な抗体作製の実現へ

ヤマハ発動機は2018年8月31日、東京都内で会見を開きバイオベンチャーのイーベックに5億円を出資すると発表した。ヤマハ発動機が医療分野のベンチャー企業に投資するのは今回が初めてとなる。ヤマハ発動機は中期経営計画で成長戦略の1つとして掲げる「ソリューションビジネスへの挑戦」を加速させる。イーベックに対するヤマハ発動機の出資比率は23%で、筆頭株主となる。

[齊藤由希,MONOist]
会見に出席したヤマハ発動機とイーベックの関係者(クリックして拡大)

 ヤマハ発動機は2018年8月31日、東京都内で会見を開きバイオベンチャーのイーベックに5億円を出資すると発表した。ヤマハ発動機が医療分野のベンチャー企業に投資するのは今回が初めてとなる。ヤマハ発動機は中期経営計画で成長戦略の1つとして掲げる「ソリューションビジネスへの挑戦」を加速させる。イーベックに対するヤマハ発動機の出資比率は23%で、筆頭株主となる。

 両社で開発するのは1個1個の細胞をより分けて取得するシングル細胞ハンドリングで、2025年に市場規模が425億円に拡大すると見込まれている。非常に多くの異なる抗体産生細胞がさまざまな抗体を作る中から、目的の抗体を産生する細胞を特定して取得し、抗体遺伝子を得るために必要な技術となる。抗体を基にした医薬品は副作用が少なく注目が高まっている。

 イーベックは、日本のアステラス製薬やノーベルファーマ、ドイツの製薬会社ベーリンガーインゲルハイムとライセンス契約を結んだ実績がある。ヒトの体内で感染症などの疾患の克服に働いた実績がある最良の抗体を取得できる「シングルB細胞法」による抗体作製技術に強みを持ち、ヤマハ発動機との協業によって抗体の作製工程を自動化し、作製期間を大幅に短縮することを狙う。

 既に細胞ハンドリング装置を販売するヤマハ発動機は、より高度なシングル細胞ハンドリングに対応した装置を開発する。イーベックのノウハウを、細胞ピッキング技術力の強化や良質な抗体を取得する精度の向上など開発強化につなげる。2020年に共同開発したシングル細胞ピッキング装置の販売を目指す。

ヤマハ発動機が販売している細胞ハンドリング装置(クリックして拡大) 出典:ヤマハ発動機

40日を5日に

 ヤマハ発動機は2010年から表面実装機のロボティクス技術を応用した細胞ハンドリング技術の開発を開始。2017年1月にMedical Device Business開発部を立ち上げるとともに、細胞塊に対応した細胞ハンドリング装置を発売した。細胞ハンドリング装置は、表面実装機の高速かつ高精度なモーター制御技術などを応用している。手動では困難な速度と精度で目的の細胞を抽出し、対象の細胞を撮像して画像データ化することで、研究者の負担軽減や作業時間の短縮に貢献する。

 一方、イーベックは、ヒト末梢血由来の完全ヒト抗体の作製を手掛ける。完全ヒト抗体を作ることができる研究機関や企業は多いが、完全ヒト抗体の中からアレルギーや多重反応抗体を持つものを95%排除し、効き目を高められる点を強みとする。

 必要な抗体を生産している細胞を探すのは地道な作業で、「当たりが見つかるのは0.001%の確率」(イーベック)だという。イーベックはセルマイクロアレイという短期間で細胞を探せる抗体作製技術を持つが、作業者の技能によって精度にばらつきがあるのが課題だった。「人が作業して特定の抗体で40日間かかっていたところを、(ヤマハ発動機との協業で)機械化できれば最大で5日間まで短縮できる。病気が流行ってから抗体を作ることを考えると、35日の短縮はかなり大きい」(イーベック)と見込む。

 ヤマハ発動機にとっては、細胞塊よりも小さなシングル細胞を扱うことが技術的な挑戦となる。現状で、1つの細胞だけをピッキングして移動させるような機器は出ていないという。細胞を流しながら特定のものを押し出す仕組みが主だが、細胞にダメージを与えるデメリットがあるとしている。既存の細胞ハンドリング装置の性能を向上させ、シングル細胞のピッキングの成功確率を上げることがテーマとなる。

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