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» 2018年09月07日 09時00分 公開

IoTっていうけど、何すればいいの?(2):IoT活用のための視点(1)「PoC」

IoT的人材になるための視点を取り上げる連載、第1回は「PoC(Proof of Concept)」がテーマ。PoCの中でも、見落とされがちな部分にフォーカスして、どのように検証したらよいのかを紹介する。

[杉本恭子, 監修/DMM.make AKIBA,MONOist]

本当に「価値あるもの」を作るために重要な「PoC」

 今この記事を読んでいる方の中には、「データを集めて活用するように」「IoTのシステムを作るように」と、会社から言われているという方もいるのではないだろうか。

 「どう作るか」を考える前に1つお勧めしたいことがある。それは「現場にフィットする要件を定義するために、細かい実験をする」こと、つまりそのアイデアがターゲットにとって価値があるかどうかを計測することだ。これは「PoC(Proof of Concept)=コンセプトの検証」といわれる非常に大事なステップで、結果的に早く最終的な製品やシステムをリリースすることができる。

 「実験」というと、メカニカルなことやソフトウェアなど「機能が正しく動作するか」という実験をイメージする方も多いだろう。しかしきちんと動くかということ以前に、そのアイデアが「使う人にとって本当に役に立つのか、課題を解決するのか、価値があるのか」を考えなければならない。これを忘れると「確かにちゃんと動くが、あまり便利ではない」ものができてしまう可能性もあるからだ。

PoCの3つの要素

 使う人にとっての価値を検証するためには、「コンテキストの検証」「ファンクションの検証」「デザインの検証」の3つが必要である。

 「コンテキストの検証」は、「そのアイデアは価値があるか」の検証で、“PoCのキモ”といってもいい部分だ。

 「ファンクションの検証」は、多くのエンジニアが「実験」としてイメージするであろう、機能やからくりが成り立つかどうかを検証することだ。

 「デザインの検証」は、検証されたコンテキストとファンクションが「1つのデザインにまとまるか」の検証である。今は3Dプリンタなど、プロトタイピングに使えるいろいろなツールがあるので、検証もしやすいだろう。例えば作業場の狭いスペースに置かなければいけないことが分かっているのに、大きな装置になってしまうならば、どう小型化するか、あるいは置き場所を変えるかを考えなければいけないということになる。

「コンテキストの検証」は紙芝居で十分

 「コンテキストの検証」について、もう少し具体的に考えてみよう。

 例えば「あるボタンを押すと同時に、作業者の目の前の画面が切り替わる」とする。この一連の仕組みを実装すれば当然実験はできるが、それでは時間がかかりすぎる。そこで実装する代わりに、人間が仕組みを再現する。「ボタンを押したよ!」「はい、画面切り替わりました!」という具合に、人間が画面を切り替える。あるいは画面の切り替わりは紙芝居でもいいかもしれない。実験の結果「思ったほど便利じゃない」ということになれば、アイデアを練り直す必要があるわけで、早く試すことが重要なのだ。

 導入を決定する立場の人に対する価値を検証するならば、仮のパンフレットや価格表を作ってしまうという手もある。「この人の、こういう課題を、こんな方法で解決する仕組みで、導入コストはこれくらい。導入したいですか?」と問いかけてみる。社内や身近にいる同じような立場の人に見せるのもいい。そうすると「価格が折り合わないのでは」とか、「こうしてくれたほうが便利」とか、いろいろなことが見えてくるはずだ。

 製造の現場ではコンテキストの検証は見落とされがちだが、価値あるもの、役立つものを作るには、とても重要なステップ。ポイントは、実装を待つのではなく、手近な手段でアイデアを仮に再現して、使う人にとって役立つかどうかを手早く試すということだ。

 さて、あなたが最近ちょっと思い付いた、身近な業務の改善アイデアやビジネスアイデアは、ユーザーにとって価値があるだろうか。コンテキストの検証のようにイメージしてみよう。


 次回は「IoT活用のための視点(2)『PDCA』」をお届けします。(次回へ続く)

執筆/監修者 プロフィール

監修・資料提供:

岡島康憲(おかじま やすのり)/DMM.make AKIBA エヴァンジェリスト

2006年、電気通信大学大学院修了後、NECビッグローブ株式会社(現:ビッグローブ株式会社)にて動画配信サービスの企画運営を担当。2011年にハードウェア製造販売を行う岩淵技術商事株式会社を創業。自社製品開発以外にも、企業向けにハードウェアプロトタイピングやハードウェア商品企画の支援を行う。2014年、ハードウェアスタートアップアクセラレータ「ABBALab」の立ち上げやハードウェアスタートアップ向けのシェアファクトリー「DMM.make AKIBA」の企画運営を担当。2017年、センサーデバイスにより収集した情報の可視化プラットフォームを提供するファストセンシング株式会社を創業。マーケティングを中心とした業務を担当。

日野 圭(ひの けい)/DMM.make AKIBA テックスタッフ

DMM.make AKIBAのテックスタッフとして、施設運営および電気系・クラウド技術が関わる受託開発を担当。 大阪市立大学大学院修了後、日本電気株式会社にてコンピュータ回路設計とFW設計を経て、ワークステーションのOEM開発PMを担当。要件検討から保守まで、複数の企業とのハードウェアビジネスを経験。 その後、ビッグローブ株式会社にてWebインフラおよびDBを担当。2016年より現職。DMM.make AKIBA 企業向けIoT人材育成研修の講師を務める。

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執筆・構成:杉本恭子(すぎもと きょうこ)/フリーライター



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