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全てデータ調べたはずが残っていた、国交省がスズキに遺憾の意製造マネジメントニュース(2/2 ページ)

» 2018年09月27日 07時00分 公開
[齊藤由希MONOist]
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再測定が大きな負担に

 トレースエラーを有効なデータとして扱った理由について、幾つかの証言が得られたことを明らかにした。「業務量が多く、再測定を行う余裕がなかった」「再測定で仕事が増えて迷惑を掛ける雰囲気があった」「抜き取り検査をノルマだと考えた」といった、部署内の業務負荷に関する言及があった。新技術となるマイルドハイブリッド車や、パワートレインやトランスミッションのバリエーションが多い車種において、十分なリハーサルができないまま、正確性や高い運転技術が求められるモード走行を行うことも、完成検査員の負担となっていたようだ。

 また、再検査によって納期が遅れ、営業部門に迷惑を掛けることの懸念や、営業部門からの出荷問い合わせが精神的な負担になっていたことなど、他部門への過度な配慮もあったとしている。「トレースエラーがあっても排ガス値に影響しないから問題ない」と捉える完成検査員もいたことが明らかになった。

 測定データの書き換えが発覚したのも、国土交通省の指摘を踏まえて再調査したことによる。測定ごとの平均値が、測定ごとの最大値と最小値の範囲から外れた測定データが2737台分見つかり、何らかの書き換えが行われていることが分かった。

 燃費測定においては、社内の管理平均値を下回った場合に、CO2の排出量を小さくするための不正な改ざんを行っていた。意図的にCO2排出量を少なくすることで、社内の管理平均値をクリアしようとするためのものだった。詳細については今後、社外の専門家の調査によって全容を解明していく。

 この他、意図的な改ざんではないではないとする書き換えがあったことも明らかになった。例えば、排ガス濃度と試験環境ガス濃度の数値が逆転するという、現実にはあり得ない値が出た場合に、検査員が試験環境ガス濃度を排ガス濃度よりも低くしたり、排ガス濃度を試験環境ガス濃度よりも高くしたりする修正を行っていた。これは排ガスの測定結果には影響しないとしている。また、分析器のエラーにより排ガス値が異常だった場合に、分析器に残った排ガスから再分析し、その結果を手入力するといったこともあった。こうした書き換えについてスズキでは改ざんではないと見なしているが、処理の適切さについては社外の専門家に調査を依頼する。

 国土交通省 自動車局長の奥田哲也氏は、今回のスズキの報告について「全容解明に対する取り組み姿勢に疑問を抱かざるを得ず、極めて遺憾である。他の不適切事案がないか徹底調査し、その結果に基づく再発防止策を策定の上、可及的速やかに報告するよう求める」とする指示文書を発出した。

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