「つながるクルマ」が変えるモビリティの未来像

ユーザー5000人でマッチング率1割、「相乗りタクシー」が便利になるには母数が肝モビリティサービス

国土交通省は2018年9月28日、東京都内で相乗りタクシーの実証実験を実施した結果、マッチングの成立率が約1割だったと発表した。5036人が相乗りを申し込んだのに対し、利用できた人数は494人だった。

» 2018年10月02日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 国土交通省は2018年9月28日、東京都内で実施した相乗りタクシーの実証実験の結果を発表した。マッチングの成立率は約1割で、5036人が相乗りを申し込んだのに対し利用できた人数は494人だった。また、申し込みが多い時間帯は19〜23時台だったが、マッチング率が高いのは13〜18時台となり、使いたい時にマッチングするのが難しい結果だった。2018年度中に実証実験の結果をさらに分析し、本格導入に向けた制度設計を進めていく。

 実証実験は2018年1月22日〜3月11日まで、東京23区と武蔵野市、三鷹市で実施した。参加したのは大和自動車交通グループと日本交通グループの合計949台だ。両社がそれぞれ開発した配車アプリ上で乗降車地を設定し、同方向に向かう利用者同士をマッチングすることで相乗りが実現する。用途として最も多かったのは「帰宅」で全体の4割を占めた。次いでビジネスが3割、通勤通学が2割という結果だった。曜日別で見ると、金曜日が申し込みと成立の人数が最も多く、マッチング率が15%だった。一方で土日のマッチング率は低く、土曜日は2%、日曜日は0%となった。

60%と5%、差がついたマッチング方式

 マッチング率はそれぞれのタクシー会社のアプリで差がついた。大和自動車交通グループのアプリは1カ所の乗車地から、同じ方向の目的地に向かう人を募集してマッチングする「この指とまれ方式」だ。申し込み人数が450人だったのに対し、成立人数は272人で、マッチング率は60%となった。実証実験では、東京駅八重洲口、神田駅南口などあらかじめ決められた30カ所の乗り場の中から乗りたい地点を指定した後、相乗り候補者が提案した時間帯やルートの中から選択して利用する形式とした。

 一方、日本交通グループのアプリでは乗車地と降車地を自由に設定でき、同じ方向に向かう人を検索してマッチングさせる方式だった。申し込み人数が4586人と大和自動車交通グループよりも大幅に多かったが、成立人数が222人、マッチング率は5%という結果だった。乗りたい場所から乗るという点が日本交通グループのアプリでの申し込み人数の多さにつながったと見られるが、少ない母数でマッチングする上では乗車場所が事前に決まっている大和自動車交通グループの方式の方が有利だったようだ。

 相乗りのマッチングについて、日本交通株式会社 代表取締役会長の川鍋一朗氏は「実証実験で使ったアプリは、相乗り専用でタクシー配車アプリ『全国タクシー(現JapanTaxi)』とは別物だったため母数が少なかった。相乗りが全国タクシーの1つの機能になればユーザーの母数が増え、マッチング率は上げられる」と見込む。全国タクシー(現JapanTaxi)のダウンロードは550万件に上り、法人向けにコーポレートカードとの連携も始めている。母数は実証実験よりも大幅に増やせる格好だ。

 運賃については乗車前に金額が分かるようになっており、相乗りする利用者の最初の乗車地から最後の降車地までの走行距離に応じて算定した金額を、各利用者が単独で乗車した場合の推計走行距離に応じて案分して算定した。利用者の7割が、相乗り運賃は安いと回答し、本格導入後に利用したいという声も7割を占めた。

 実証実験とは別に国土交通省が940人にモニター調査を実施したところ、相乗りタクシーの利用で気になることとして「同乗者とのトラブルに巻き込まれるのではないか」「マッチングに時間がかかって予定時間に遅れるのではないか」という点が挙がった。また、男性の6割、女性の7割が「相乗りする人がどういう人か分からないから利用したくない」と回答した。

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