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» 2018年10月17日 11時00分 公開

IoTのイノベーションは問題解決から(3):IoTやAIは魔法のつえじゃありません!

今回はIoT導入における落とし穴についてお伝えしたいと思います。

[馬場秀樹(株式会社VSN),MONOist]

 前回は「IoTによるイノベーションで広がる可能性」についてお話ししました。今回はIoT導入における落とし穴についてお伝えしたいと思います。

 IoTはここ数年で急速に発展している仕組みであり、「ウチも早く導入しなければ!」と考えている企業は多くあるでしょう。しかし、ちょっと待ってください。具体的にどのような目的でIoTを活用するのでしょうか。

 これまでのコラムでご説明してきたように、IoTで行われる「モノにセンサーを取り付けてインターネットにつなぐ」というのはあくまで1つの手段であり、それだけで画期的なサービスが生まれたり、問題が解決する、というものではありません。また、他社の好事例をそのまま取り入れても必ずうまくいくとも限りません。IoTを魔法のつえのように考えていては、その先に待っているのは「失敗」です。

 インターネットの普及に伴いWebサイトが飛躍的に広がっていった1990年代後半がよい例でしょう。どの企業も競うようにして自社サイトを立ち上げましたが、訪問者数に伸び悩むケースが多発しました。これはWebサイト開設の目的が明確でなかったため、必要な情報が網羅されていない、サイト内で完結するサービスが整っていない等、ユーザーにとって訪問する原動力が見つからなかった点に多くの要因があったと振り返ります。

 また、同時期に起こったIT革命によって社内のIT化を積極的に導入する企業も多くありましたが、「むしろ効率が下がった」「コストだけが増えた」といった事例が頻発。こちらもIT化によって何をどうしたいのかが不明確であった上に、これまでのやり方から変化を求められるユーザーにとって新しいシステムを使用する必要性が見いだせなかったのでしょう。

 結局のところ、Webサイト開設やIT化など、手段そのものが目的となってしまうとイノベーションを起こすことはできないのです。

 IoTも全く同じです。流行しているから導入するというのは、個人ならともかく企業では正しい動機とはいえないでしょう。なぜなら、WebサイトやIT化、IoTなどはいずれも“(IT)ソリューション=解決策”であり、解決する対象の問題が明確でなければ何の意味もないからです。

 第1回でIoTの例として取り上げたトイレも、「いつも並んでいてストレスを感じる」という問題を解決するソリューションであり、トイレ事情に困っていない企業が導入してもせいぜい一過性の話題作りにしかならないでしょう。効果を最大限に生かすためには、IoTが明確なソリューションになっている必要があります。「何が問題なのか、それを解決してどんな状態にしたいのか、またそのためにはどのソリューションを導入するのか」を明確にした上で、その最適なソリューションがIoTである時に絶大な効果が出るものなのです。みなさんはIoT導入を検討するタイミング、ずれてはいませんか?

 私もしばしば「こんな問題もIoT/AIを活用すれば解決できるよね」などという会話を耳にすることがありますが、どの部分にAIを活用するのかが全く練られていないようです。IoTもAIも、何でも解決してくれる万能な魔法のつえではないのです。

 繰り返しになりますが、IoT導入を成功させるためには、問題が明確になっていてその最適なソリューションがIoTである時に、初めてIoTを「魔法のつえのように見せる」ことができるのです。


 次回は、テクノロジーを魔法のつえに変えるための具体的なお話をしたいと思います。

筆者プロフィール

株式会社VSN 馬場 秀樹

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2000年にVSNに入社。インフラエンジニアとしていくつものプロジェクトに参画。VSNの“派遣エンジニアがお客さまの問題を発見し、解決する”サービス、「バリューチェーン・イノベーター(以下、VI)」の構想メンバーであり、一流コンサルタントより問題解決手法の教示を受け、多くの問題解決事案に携わる。派遣会社でありながら、担当した事案には、数億円規模の売り上げ向上につながった例も。

現在は、同社「経営イノベーション本部」にて今後の事業の根幹を担うVIをさらに加速させるべく、事業計画の立案や浸透・推進を行う。

株式会社VSN http://www.vsn.co.jp/


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