サイドミラーなしのレクサス「ES」、目立つディスプレイはドライバーへの配慮車両デザイン

トヨタ自動車は2018年10月24日、東京都内で会見を開き、レクサス「ES」の新モデルを発売したと発表した。新型ESは7代目にモデルチェンジした今回が日本初投入となる。従来のサイドミラーをカメラと車内に置いたディスプレイで置き換える「デジタルアウターミラー」や、微小な入力にも応答する「スウィングバルブショックアブソーバー」といった「世界初」(トヨタ自動車)の技術も採用している。

» 2018年10月25日 06時00分 公開
[齊藤由希MONOist]

 トヨタ自動車は2018年10月24日、東京都内で会見を開き、レクサス「ES」の新モデルを発売したと発表した。新型ESは7代目にモデルチェンジした今回が日本初投入となる。従来のサイドミラーをカメラと車内に置いたディスプレイで置き換える「デジタルアウターミラー」や、微小な入力にも応答する「スウィングバルブショックアブソーバー」といった「世界初」(トヨタ自動車)の技術も採用している。

 車両価格は580万〜698万円だ。発売前の時点で、月間販売目標台数の6倍となる2200台を受注した。

レクサス「ES」の新モデルを発売した(クリックして拡大)

世界初のショックアブソーバーが快適さを提供

 ESは1989年にレクサスブランドの最初のラインアップとして、「LS」とともに誕生した。今回のフルモデルチェンジでは、乗り心地や静粛性、広い室内空間にこだわり、上質な快適性を進化させることを目指した。

 車台は「カムリ」と同じ「GA-Kプラットフォーム」を採用。高剛性化と低重心化を図るとともに、ダブルウィッシュボーン式リアサスペンションの採用により、高い操縦安定性を確保した。また、ラック平行式電動パワーステアリングによって、ステアリングの応答性も高めた。車両サイズは全長4975×全幅1865×全高1445mmで、ホイールベースは2870mmだ。

 パワートレインは排気量2.5l(リットル)の直列4気筒エンジンとハイブリッドシステムの組み合わせのみとなる。新型のトランスアクスルやPCU(パワーコントロールユニット)を採用し燃費性能とダイレクトな加速感を両立したとしている。新型ESの燃費値はJC08モード燃費で23.4km/l。

 ブランド内で車格が近い「GS」ともすみ分けを図りながら販売する。FR(後輪駆動)車であるGSは“グランドツーリング”として、ESはFF(前輪駆動)のレイアウトを生かした室内空間の広さや快適さを打ち出して差別化する。快適な乗り心地を実現するための新技術が、フロントとリアに採用したスウィングバルブショックアブソーバーである。ショックアブソーバーのオイル流路に非着座式のバルブを設け、微小な動きに対しても流路抵抗による減衰力を発生させる。ショックアブソーバーのストローク速度が低い場合でも減衰力を発揮。フラットな車両姿勢によって、安定感や高速走行時のしなやかな乗り心地を実現する。

ディスプレイが目立つのには理由がある

 デジタルアウターミラーは最上級グレードである「version L」でのみ、オプション装着となる。価格は20万円。事前に受注した2200台にデジタルアウターミラー装着車は含まれていない。発表後に販売店へデジタルアウターミラー装着車の試乗車を配備し、実際に乗って見え方などを確かめた上で購入してもらう方針だ。デジタルアウターミラーからサイドミラーへの付け替えは行わない。

レクサス「ES」の新モデルを発売した(クリックして拡大)

 デジタルアウターミラーは従来のサイドミラーと比べて空気抵抗と関わる投影面積が小さく、死角を低減するとともに、空力を改善する効果がある。Cd値(空気抵抗係数)は従来のサイドミラーと比較すると0.01低減できる。車外にカメラを設置するためのカメラハウジングは、従来のサイドミラーほどではないが横に張り出している。これは法規で定められた撮影範囲を確保するとともに、車体の一部が映り込む角度で撮影するためだという。また、サイドミラーと同じ感覚の見え方を実現するため、魚眼レンズは採用しなかった。カメラやディスプレイに不具合が出た場合は、故障が起きていることを車内のディスプレイでドライバーに知らせる。静止画で表示が止まることがないようにしている。

デジタルアウターミラー装着車は車内にこのようなディスプレイが置かれる(クリックして拡大) 出典:トヨタ自動車

 デジタルアウターミラーで撮影した映像は、フロントピラー部分に設置された5型のディスプレイに表示する。スマートフォンを後付けしたかのような取り付けになっており、インテリアとの調和がとれていないようにも見える。こうした取り付け方にしたのは、視線移動量の少なさと、サイドミラーを見る習慣的な動作に配慮したのが理由だという。

 「とっさにサイドミラーを見る動作は、運転する人にとって習慣的に馴染みのあるものだ。インテリアに合わせて組み込んだ結果、サイドミラーから離れた位置になると、視線移動が増えてしまうのではないか。デザインと視認性のバランスをどう取るかは各社が模索していくところだろう。ただ、フェンダーミラーがドアミラーになって、サイドミラーを見る習慣は変化してきた。ディスプレイを見ること浸透すれば、将来的にはインテリアにスッキリ収まる形になっていくだろう」(トヨタ自動車 常務理事の佐藤恒治氏)

 カメラとディスプレイでサイドミラーを置き換える技術は、Audi(アウディ)が2018年後半から納車を開始する電気自動車(EV)「e-tron」にも採用されている。アウディは走行距離を確保する目的で空力改善に注力し、サイドミラーのCd値を下げる目的で「バーチャルエクステリアミラー」を取り入れた。e-tronでもオプション設定となる。新型ESと同様にCd値を0.01下げる効果があり、日常的な運転環境では走行距離が5km伸びるという。

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