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» 2018年11月05日 16時00分 公開

自動運転技術:「トヨタと今まで以上に距離縮める」、デンソーら4社の新会社が担う役割とは

デンソーは2018年10月31日、東京都内で開いた決算説明会において、アイシン精機、アドヴィックス、ジェイテクトと立ち上げる新会社の狙いについて言及した。

[齊藤由希,MONOist]

 デンソーは2018年10月31日、東京都内で開いた決算説明会において、アイシン精機、アドヴィックス、ジェイテクトと立ち上げる新会社の戦略について言及した。

 自動運転の統合制御用ECU(電子制御ユニット)のソフトウェアを開発する新会社をデンソー、アイシン精機、アドヴィックス、ジェイテクトの共同出資で設立する。また、電動車の駆動モジュールを開発、販売する新会社もアイシン精機とデンソーで立ち上げる。新会社2社の設立は2019年3月の予定だ。

 デンソー 取締役社長の有馬浩二氏は、「部品メーカーが一緒になって何をできるか、どう貢献できるか、動き出した結果が2つの新会社だ。クルマは部品を組むだけでは完成しない。トヨタとは今まで以上に距離感を縮めなければいけない。ソフトウェアの領域は特にそうだ。ソフトウェアを実装するプロセスがないとクルマは動かない。ソフトウェアの実装は自動車メーカーではなくティア1が果たすべき役割だ。きちんと貢献できるようにしていきたい」と説明した。

トヨタグループの連携を強化する背景(クリックして拡大) 出典:デンソー

自動運転車の大脳から小脳まで

 トヨタ自動車は、「ホーム&アウェイ」の視点でグループ全体を対象に事業の見直しを進めている。「ホーム」は現地現物で自分たちで付加価値を持たせることができ、競合と比較して競争力で勝っている事業や地域を指す。「アウェイ」は、他社が多くの優位性をもつ事業や地域を意味する。グループ内の事業を「ホーム」の会社に集約することにより生産性を向上し、グループ全体の競争力を強化する。

 統合ECUのソフトウェア開発も、ホーム&アウェーになっている。デンソー 専務役員で技術開発センター担当の加藤良文氏は、トヨタ自動車との役割分担について、「TRI-AD(トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント)は上位のアルゴリズム開発を担う。できたアルゴリズムを効率的に、安定したソフトウェアのコードに直して実装することが4社の役割になる。車両をどう動かすかを判断する“大脳”を実装する一方で、アクチュエーターを持つ4社が専門家として運動機能をつかさどる“小脳”を作り込む」と述べた。

統合ECUのソフトウェアを開発する新会社の位置付け(クリックして拡大) 出典:デンソー

 新会社がターゲットとするのは、レベル3以上の自動運転車の統合ECUだ。「レベル3に限りなく近いレベル2でもまだやることがある」(加藤氏)。レベル3以上の自動運転システムでは、ドライバーではなくシステムが周辺監視の主体となるため、人工知能(AI)技術も必要になる。しかし、AIのアルゴリズムを車載品質で搭載することは簡単ではないと強調した。

 統合ECUに対する要求水準について、加藤氏は「高性能で複雑なチップを信頼性を確保して実装し、熱対策も踏まえて安定的に動作させること。機能安全や冗長性への対応、ソフトウェアを車載品質で遠隔から書き換える機能も必要になってくる。(4社でやるのは)アウディ(Audi)の統合ECU『zFAS』よりもかなり難しいコンピュータになるだろう」と説明。

 また、AIのアルゴリズムをベンチャー企業も開発していることについては「機能安全を満たすことが技術的なハードルになっているようだ。ROS(Robot Operating System)で自動運転システムを構築してもクルマにそのままでは実装できない。クルマ向けに焼き直すのは骨が折れる作業だ。自動車メーカーにアルゴリズムを提案しても、『機能安全を満たしてほしい、ティア1サプライヤーと一緒に来てくれないか』といわれるそうだ。近頃はそういう話を多くいただいている。ティア1の方が偉いということではない。組んでくれる会社とは積極的にやっていきたい」(加藤氏)と述べた。

モーター専業でないからこその強み

 アイシン精機と折半出資で立ち上げる新会社は、2020年代の早い段階で収益が立つ見通しだ。電気自動車(EV)だけでなく、ハイブリッド車(HV)や燃料電池車(FCV)も含めて関心を寄せられているという。

 モーター専業のサプライヤーに対する新会社の強みとして、アイシン精機のギアトレーン技術とデンソーが持つインバーターの小型化技術を挙げる。「ギアトレーンとパワーエレクトロニクスの組み合わせで電動アクスルができる。これでEVやHVをカバーすることで、われわれの“ホーム”になる。電動車の種類ごとに、パワートレイン、インバーターやギアトレーンへの要求は千差万別になる。なるべく少ない商品の組み合わせでカスタマイズして対応する場合には、デンソーとアイシンに一日の長がある。モジュール化したチューニング方法を開発して対応していく」(加藤氏)。

 中国市場向けでは、HVの引き合いも強いという。「中国ではEV市場の拡大が見込まれているが、各社ともEVだけを投入する戦略ではない。HVの場合はエンジンとの適合開発がある。新会社では1モーターと2モーター、どちらのシステムもやるが、2モーターは特に適合が難しい。モーター専業のサプライヤーよりも、ティア1サプライヤーがやる方が絶対に良い」(加藤氏)。

電動駆動モジュールの新会社では、モーター専業のサプライヤーにはない強みを発揮していく(クリックして拡大) 出典:デンソー

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