“プロセッサ”を開発する東芝メモリ、その技術と狙い組み込み開発 インタビュー(3/3 ページ)

» 2018年11月22日 06時00分 公開
[松本貴志MONOist]
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プロセッサを開発する東芝メモリの目指す未来

 プロセッサの開発を明らかにした東芝メモリだが、こうした動きは他のストレージベンダーにも見受けられる。

 Western Digital(ウエスタンデジタル/WD)は、2018年6月に同社エグゼクティブバイスプレジデント兼CTO(最高技術責任者)を務めるMartin Fink(マーティン・フィンク)氏が来日した際に、オープンソースISA(命令セットアーキテクチャ)である「RISC-V」を活用したプロセッサ開発計画を明らかにしている。

 WDは、AI(人工知能)やビッグデータの活用が進むにつれ、ストレージの重要性がより高まるとともに、データ処理もストレージの近くで行うエッジ型の“データセントリックコンピューティング”が求められていると主張。同社が開発を進めるプロセッサもまずは機械学習向けアクセラレーターとして登場すると見られる。*)

*)関連記事:データ中心を加速、WDがRISC-Vプロセッサ開発に本腰(EE Times Japan)

Western Digitalが紹介するデータセントリックアーキテクチャの概要(クリックで拡大) 出典:Western Digital

 東芝メモリのプロセッサ開発も、データが中心となるコンピューティング技術の到来を見据えている。藤本氏は「ストレージベンダーはどこも大なり小なりこの流れに向かっている」と前置きしつつ、「今回の研究開発の方向性もデータセントリックコンピューティングを向いたもの。エッジでもデータセンターでもどちらでも活用できる技術」と語る。

 「ディープラーニングは大規模データを取り扱うため、われわれが得意とするストレージとの相性が非常に良いアプリケーションだ。今までデータとプロセッサの距離が遠かったため多くのDRAMが必要とされてきたが、専用プロセッサをデータに近い位置へ用意することでDRAMをストレージに置き換えることができるかもしれない。東芝メモリがAIで貢献できる部分は必ずあると考えている」(藤本氏)

 事業化は現在検討中としており、「2020年代の前半までに道筋を決めたい」(藤本氏)としつつも「今回の技術を必ず製品化するというわけではない」とのスタンスだ。藤本氏は「今まで東芝メモリで全くやっていない領域のビジネスなので、事業化には顧客やパートナーとの議論が必要になるだろう。この研究が議論の材料となり、パートナーシップが生まれることがあれば良い」と期待を語った。

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