3Dプリンタでセラミックス部品を高精度に作製できる、キヤノンがSLM方式で実現3Dプリンタニュース

キヤノンは、独自の3Dプリンタ用セラミックス材料を用いて、複雑な形状のセラミックス部品を高精度に作製する技術を開発。金属3Dプリンタで用いられている選択的レーザー溶融(SLM)方式に適したアルミナ系セラミックス材料と部品作製技術を組み合わせた。

» 2018年11月28日 08時00分 公開
[朴尚洙MONOist]

 キヤノンは2017年11月27日、独自の3Dプリンタ用セラミックス材料を用いて、複雑な形状のセラミックス部品を高精度に作製する技術を開発したと発表した。

 新たに開発した技術は、金属3Dプリンタで用いられている選択的レーザー溶融(SLM)方式に適したアルミナ系セラミックス材料と部品作製技術の組み合わせにより、金型での成形や切削加工が難しい中空構造や多孔質構造など複雑な形状のセラミックス部品を3Dプリンタで安定的に作製できる。例えば、六角形の空孔をもつ直径約19mmのハニカム形状部品を作製した場合、焼成工程前後の外形寸法変化が0.8%未満の高精度な部品を作製することが可能だという。

新開発の技術で作製したセラミックス部品 新開発の技術で作成したセラミックス部品(クリックで拡大) 出典:キヤノン
ハニカム形状部品多様な形状要素にも対応できる 新開発の技術で作製したハニカム形状部品は、直径約19mm、厚さ約2mm、線幅約0.4mm(左)。多様な形状要素にも対応できる(右)(クリックで拡大) 出典:キヤノン

 これまで、3Dプリンタでセラミックス部品を作製する場合、光造形方式を用いることが多く、紫外線で硬化する樹脂を加えたセラミックス材料が用いられてきた。しかし、造形後の焼成工程で20%程度の収縮が生じるため高精度な部品作製が難しいとされていた。今回の技術で作製するセラミックス部品は、電気炉などの耐熱性/絶縁性を要する部品や、薬品に対する耐食性が求められる部品など、産業機器をはじめとしたあらゆる分野で活用できる。

 キヤノングループでは、キヤノンマシナリーなどと新技術を生かした産業機器向け部品の試作検討を始めており、実用化を目指して開発を進めている。また、材料の種類を拡充して医療分野への展開を図るなど、より幅広い分野の試作ニーズや多品種少量の製造ニーズに応えていくとしている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.