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» 2018年12月04日 10時00分 公開

よくわかる「標準時間」のはなし(8):作業時間の実測値を標準時間に変える「レイティング」とは (1/3)

日々の作業管理を行う際の重要なよりどころとなる「標準時間(ST;Standard Time)」を解説する本連載。第8回は、ストップウォッチ法などで実測した作業時間を標準時間として扱うのに必要な「レイティング」について説明する。

[福田 祐二/MIC綜合事務所所長,MONOist]

 標準時間(S.T;Standard Time)の設定には、実際の測定時間値に対して「レイティング(Rating)」という処理が必要です。レイティングとは、ストップウォッチを用いて標準時間を設定する場合、標準の作業時間と観測対象作業の実際に測定された時間値を比較し、標準の作業条件で行われた場合に換算してどのくらいの時間が必要かということに観測時間値を修正する処理のことです。つまり、観測したときの代表値を標準作業速度に換算することをいいます。例えば、観測したときの代表値を0.08分とし、その時の作業者の作業速度が標準作業速度の125%であった場合、標準時間における正味時間は“0.08分×1.25=0.10分”となります。

 ここでの作業速度は、同一作業方法を用いても、作業者の働く(作業)意欲、熟練度、適性、物理的条件など、その他あらゆる要素によって違ってきます。そこで、実測した作業者の実際時間を標準作業速度と比べて、どれだけ速いか遅いかを明らかにする必要があります。実際の作業観測時間の平均値から標準時間を求めるには以下の算出式になります。

正味時間=観測時間の代表値×(1+レイティング係数)

標準時間=正味時間+余裕時間

1.レイティングの概念

 レイティングは、標準時間(S.T)の設定には不可欠です。現実に観測できる作業者は、平均的な作業者に近くても平均的な作業者そのものではありません。また、現実に行われている作業速度も標準そのものではありません。ストップウォッチによる実際の作業の観測から得られたままの作業時間値は、観測の対象となった特定の作業者の作業時間値であって、その作業者の熟練度やその時の努力の度合いの結果ですので、標準の値とは必ずしもいえません。

 偶然にも、作業時間の観測対象として選ばれた人は、いまだその仕事に十分に熟練していなかったかもしれません。仮に熟練していたとしても、その時は“作業測定をされている”という意識が働いて通常より速く作業を行ったかもしれません。あるいは、その日は体調が悪かったので十分に実力が発揮できなかったかもしれません。

 また、1人の作業者でも、最低の作業速度と最高の速さとでは約2倍の相違があることが数々の実験から明らかになっています。従って、作業時間の測定値そのままの値は標準とはなり得ません。そこで、この測定値を標準値に修正する方法が必要になってきます。この処理を「レイティング」と呼んでいます。例えば、標準の作業の速さを100%として、それよりも速ければ110%とか120%とか、遅ければ80%とか、100%よりも小さい値となります。ストップウォッチ法(Stopwatch Method)にはレイティングは当然付属しているもので、レイティング処理をしていない観測データは何ら意味のないことに留意してください。

 仮に今、高度に熟練した作業者が、かなり速い作業速度で行っている作業を観測し、これを標準時間とした場合を例に考えてみたいと思います。当然、他の大多数の作業者はその時間で作業を成し遂げることは困難ですし、これを基準にして作業量が計画されたとすると、とうてい達成不可能な計画となってしまいます。そこで、全員に無理なく適用可能で、しかも正常な生産性を損なわないような時間値に修正することが必要となってきます。これが「レイティング」です。

 表1は、観測時間のままの値から、正しい基本時間値を算出する過程を示したものです。このように、正しくレイティングを行えば、どのような観測時間値でも正しい作業時間値に置き換えることができます。

作業者 観測時間値 レイティング係数 正しい基本時間
A 0.50分 050 0.25分
B 0.31分 080 0.25分
C 0.20分 125 0.25分
表1 レイティングの例

2.作業速度の評価

 観測対象の作業の速さを、第三者である観測者が客観的に判断するのは非常に難しいことです。しかし、例えば体操の選手の演技を見て審判員が採点を行うように、評価の訓練さえ積んでおけば不可能なことではありません。作業時間の測定を行う際は、まずこのレイティングの訓練を受けてその技術を身につけ、作業の速さを客観的な目で評価できるようにならなければなりません。

 レイティング技術は、通常、市販されている各種の訓練用具を使用し、実習なども交えて2カ月程度で習得でき、後は定期的な訓練で誤差を修正しながらブラシュアップしていくのが普通です。また、一度身につけたレイティング技術は、それだけでも多方面で有効に活用し成果を挙げることができます。

3.レイティング係数

 レイティング値を表す指数をレイティング係数といいます。同じ方法で行われる同一要素作業についていえば、レイティング係数はその観測時間に対して表2に示すように逆比例の関係を持っています。

 つまり、同一要素作業の場合、その遂行時間が早くても遅くても理想的なレイティングが行われさえすれば同一の正味時間が得られることになります。レイティング係数で最も一般的に用いられているのは標準作業速度が100(%)です。

同一作業の観測時間 レイティング係数/標準作業速度 一定値〔正味時間〕
2.4分 100/100 2.4分
2.0分 120/100 2.4分
3.0分 80/100 2.4分
表2 観測時間とレイティング係数の関係
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