革新機構の取締役9人が辞任へ、今後の投資活動も先行き見通せず製造マネジメントニュース(1/2 ページ)

産業革新投資機構(JIC)は2018年12月10日、同社社長 CEO(最高経営責任者)の田中正明氏を始めとした取締役9人が辞任することを発表した。辞任時期は「残務整理がつき次第」(JIC)とし直近の投資活動への影響は避ける方針だが、2019年4月以降の新規投資活動は停止する見込み。中長期的な投資方針への影響は必至とみられる。

» 2018年12月11日 08時00分 公開
[松本貴志MONOist]

 産業革新投資機構(JIC)は2018年12月10日、同社社長 CEO(最高経営責任者)の田中正明氏を始めとした取締役9人が辞任することを発表した。辞任時期は「残務整理がつき次第」(JIC)とし直近の投資活動への影響は避ける方針だが、2019年4月以降の新規投資活動は停止する見込み。中長期的な投資方針への影響は必至とみられる。

 同社取締役は社外取締役を含めて11人。この内、財務省と経済産業省出身の取締役を除き、民間出身の取締役全員が辞任することとなった。

 辞任を表明した社外取締役 兼 取締役会議長の坂根正弘氏は小松製作所で社長と会長を歴任し、現在は同社相談役を務める。その他の取締役にも金融投資や経営実務の専門家や学識経験者を招聘(しょうへい)し、イノベーション実現のためにリスクマネー(投資回収不能リスクを織り込んで企業に投資する資金)の供給と長期的なリターンの最大化を目指す投資方針を示していた。

 JICは前身の産業革新機構から2018年9月に改組し発足。同社の投資能力は2兆円程度とされる日本最大の官民ファンドだ。産業革新機構から続く既存の投資活動は同社完全子会社の「INCJ」に引き継がれており、ルネサス エレクトロニクスや経営再建を進めるジャパンディスプレイ(JDI)の筆頭株主となっている。

 JIC取締役辞意表明のニュースが各所で報道された同年12月10日、ルネサスとJDIの株価はそろって下落。ルネサスは年初来安値を更新し終値は518円、JDIは上場来安値を更新し59円で取引を終えた。

「信義にもとる」と経産省の対応を厳しく批判

 JICは同日、東京都内で記者会見を開催し、同社社長 CEOの田中正明氏が取締役9人の辞意表明に関して経緯説明を行った。その中で、経産省や政府の対応を「信義にもとる」という言葉を繰り返し用い、厳しく批判した。

産業革新投資機構の田中正明氏

 まず田中氏は、同氏を含めた民間出身の取締役が同社に参画を決めた理由について、「投資などの金融機能を活用することにより、我が国の産業競争力を強化し新産業を創出するという国家的な目標に強い共感を覚えたため」と説明した。

 その上で、2017年に経済産業省が取りまとめた「第四次産業革命に向けたリスクマネー供給に関する研究会(以下、リスクマネー研究会)」報告書を「バイブルと呼び、愚直に実現に向かって進んでいた」(田中氏)という。この報告書には、日本の投資人材育成を目的として、短期的には海外人材の獲得や、給与を含めた魅力的な環境の提示が必要と記されている。

 問題が広く知れ渡る経緯となった高額報酬について、田中氏は「1億円以上の報酬をもらい続けるというような一部報道があるが全く事実と異なる。高給批判は誠に不本意で、仮に1円でも来ていた」と反論。「私どもからこの水準の報酬が欲しいといったことは一度もない。私がこの職務を要請され、応諾した時点では報酬の話すらなかった」とする。

 田中氏は、本件の根本的な問題は「経済産業省官房長が書面で約束し、それに基づいて決定した役員報酬を一方的な都合で白紙撤回する行為」と指摘し、「経済産業省による信頼関係の毀損(きそん)行為」だと主張した。

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