GMやトヨタはイスラエルで何をしている? イノベーションへの期待ジャパン・イスラエル・イノベーションサミット2018(1/3 ページ)

2018年11月27日、東京都内で「ジャパン・イスラエル・イノベーションサミット2018」が開催された。この催しは、急激に変化するモビリティ分野で注目されるイスラエルのテクノロジー企業を核に、未来のモビリティ社会を占う最新情報と方向性を考えるものだ。

» 2018年12月25日 06時00分 公開
[川本鉄馬MONOist]

 2018年11月27日、東京都内で「ジャパン・イスラエル・イノベーションサミット2018」が開催された。この催しは、急激に変化するモビリティ分野で注目されるイスラエルのテクノロジー企業を核に、未来のモビリティ社会を占う最新情報と方向性を考えるものだ。

 今回はトヨタ自動車、日産自動車、GM(General Motors)といった自動車メーカーのキーパーソンと、イスラエルのスタートアップ企業が一堂に会し、それぞれが取り組む活動を紹介。また、AI(人工知能)やロボティクス、シェアリングといったテーマで、イノベーションに向けてどんな方策が考えられるかが議論された。

 本稿では、サミットの中から、「多国籍自動車メーカーにおけるオープン・イノベーション」と題するテストケース事例と、「スマートモビリティの多国籍企業によるオープン・イノベーション」というテーマで展開したパネルディスカッションの様子を紹介する。

急変するモビリティの世界、イノベーションから学ぶ未来の姿

 現在進行中のテストケースの紹介では、新しいモビリティに向けたイノベーションに取り組む3社の事例が、それぞれの企業の担当者から説明された。

 登壇したのは、General MotorsのAdvanced Technical Center, Israelでエグゼクティブディレクターを務めるギル・ゴラン氏、Viaの共同創設者兼CTOであるオーレン・ショーバル氏、Toyota AI VenturesのマネージングディレクターとToyota Research Institute(TRI)の相談役を兼務するジム・アドラー氏だ。3社の責任者は、それぞれの立場から未来のモビリティ社会をにらんで取り組む活動を紹介した。

S字カーブで一気に進化する、ソフトウェアのイノベーション

GMのギル・ゴラン氏(クリックして拡大)

 ギル・ゴラン氏は、GMのエグゼクティブディレクターとしてイスラエルに移住し、11年目を迎える。ゴラン氏は、自動車業界全体に起こっている大きな変革について説明した。現在、自動車には非常に多くのテクノロジーが採用されている。

 ゴラン氏は「これらの進化をグラフにすると、直線ではなくS型のカーブを描く」と説明。テクノロジーの進化は、あるティッピング・ポイント(臨界点・閾値)を超えると一気に普及し、後戻りできない領域に達する。ゴラン氏はここにビジネスチャンスがあると語った。

 S字カーブを描いて急激に発展するモビリティ関連のテクノロジーには、電動化やAIを使った自動運転、クラウドを利用したオープンプラットフォーム、シェアリングなどさまざまなものがある。これらの多くはソフトウェアの技術であり、ハードウェアのモノ作りを得意とする日本の対極にある。イスラエルは小さな国であり、人口としては東京よりも少ない。そうであるにもかかわらず世界中から企業が進出しているのは、イスラエルにイノベーションを起こす能力があるからだとゴラン氏は語る。

 M&Aやスタートアップとの連携を進めやすいのも、イスラエルの特徴だ。Google(グーグル)、Apple(アップル)、百度(バイドゥ)、Yandex(ヤンデックス)などが既にイスラエルに拠点を設立。モビリティ分野に興味を持つIT企業が既に活動を活発化させていることをゴラン氏は紹介した。

 GMは現在、ソフトバンク、ホンダとパートナーシップを組んでいる。ゴラン氏は「モビリティ分野では、大きなグローバル企業でも1社で対応するのは非常に難しい」とし、今後もGMのフィロソフィーと共感する企業とのパートナーシップを進めたいと語った。

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