特集:IoTがもたらす製造業の革新〜進化する製品、サービス、工場のかたち〜

Armのサーバ向け戦略十年の計は実を結ぶか、新プロセッサ「Neoverse」Arm最新動向報告(2)(1/3 ページ)

2018年後半に入って急激に動きを活発化させているArm。本連載では同社の最新動向について報告する。第2回のテーマはサーバ/クラウド向けの新たなブランド名として発表された「Neoverse」だ。

» 2019年01月16日 10時00分 公開
[大原雄介MONOist]

 2018年10月の「Arm TechCon 2018」における最大の発表は、新しいプラットフォーム「Neoverse」の発表であろう。Neoverseはブランド名であり、アプリケーションプロセッサやマイコンなど向けの「Cortex」と同じような位置付けにある、という話であった。

 もっとも現時点では、まだCortexに替わってNeoverseという名前でリリースされたプロセッサIPは存在していない。Neoverse発表の後で公表された新しいプロセッサIPである「Helios」も、こと自動車向けには「Cortex-A65AE」という名前になった。これがサーバやクラウドのインフラ向けとなった場合に、どういう名前になるかはちょっと楽しみである※)

※)普通に考えれば「Neoverse-A65」とかになりそうなものだが、やっぱり「Cortex-A65」になりました、というオチもあり得る。

 閑話休題、ArmのNeoverseという取り組みについて説明していこう。Armは、2010年にCortex-A15を発表したが、これはローエンドサーバ用途を狙える性能であることを当時明らかにしている。もっとも、この当時提供できたのはCPU IPのみであり、サーバグレードのRAS(Remote Access Server)機能や、インターコネクト/メモリなどのIPは未提供であった。

 もっとも当時、Armは本格的なサーバマーケットを狙えるソフトウェア的な環境もそろっておらず、そのためCDN(Contents Delivery Network)の配信用サーバとか、静的なWebサイトのWebサーバ、あるいは当時ちょうど本格的に流行し始めていた(memcachedなどを利用した)キャッシュサーバなど軽負荷なものがターゲットであり、むしろこの時点ではソフトウェア開発用プラットフォームとして提供された、という位置付けの方が正確ともいえる。事実、この初期から高密度のArmサーバのソリューションを提供してきたCalxedaは2013年末に倒産している。まだArmベースの単体サーバのビジネスが成立する環境ではなかった、ということだろう。

 その一方で、特にネットワーク分野では次第にArmベースの製品が増えつつあった。最右翼であった旧Freescale Semiconductors(現NXP Semiconductor)は、もともとPowerPCベースだった「QorIQ」というネットワークプロセッサに、Armベースのコアを統合した「Layerscape」と呼ばれる新しいラインアップを2013年から追加。当初は、Cortex-A7/A9/A15といったコアを利用した製品がメインだったが、その後Cortex-A57やCortex-A72を搭載した製品を追加している。2017年に出た「LX2160A」は、16コアのCortex-A72を統合した、かなり重厚な構成である(図1)。

図1 図1 NXPの「LX2160A」の構造(クリックで拡大)

 これは別にNXPだけではなく、Cavium Networks(現在はMarvell Technology Group傘下)や、RMI Corporation(現在はBroadcom傘下)などでも同じで、一斉にそれまで利用していたMIPSあるいはPowerPCなどのアーキテクチャをArmに移行している。また、ホームゲートウェイなどの家庭用のNAS(Network Attached Storage)、あるいはデータセンターにおけるTOR(Top of Rack)スイッチなども次々とArmベースに置き換えられていった結果として、昨今では30%を超えるマーケットシェアがある(図2)、というのがArmの説明である。実際、最近だとモデムとか家庭用ルーターをはじめ、ありとあらゆるものがArmベースに置き換わりつつあるから、この説明そのものには納得できる。

図2 図2 ArmがNo.1シェアというのには同意できるが、残り70%がどんなアーキテクチャなのかが気になるところではある(クリックで拡大)
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