欧米から遅れる日本製造業のアフタービジネス、山積する課題を照らすいまさら聞けない「アフター市場収益化」入門(2)(1/4 ページ)

アフターマーケットという事業領域を大別すると、修理保守に使用する部品を供給する事業と、その部品を利用して保守メンテナンスを実施するサービス要員の派遣事業に分かれるが、部品ビジネスには難しい課題が山積している。日本とグローバル製造業のアフターマーケットへの取り組み方を比較しつつ、部品ビジネスの課題を解説する。

» 2019年02月06日 10時00分 公開

 アフターマーケットという事業領域を大別すると、修理保守に使用する部品を供給する事業と、その部品を利用して保守メンテナンスを実施するサービス要員の派遣事業に分かれるが、本稿では部品供給の事業面をメインに扱う。

 なぜならば、アフターマーケット事業の性質上、保守部品がなければ事業そのものが成り立たないため、この保守部品の供給がアフターマーケットを事業として成功に導く大きな役割を果たしているからである。そして、この保守部品の供給について実際の業務従事者が口をそろえることは、上述の誤ったイメージとは全く裏腹に部品ビジネスには難しい課題が山積しているという事実である。

 それでは、部品ビジネスの課題を解説したい。

1. 保守部品は多品種多量で管理点数が膨大

 1つの製品を形作るためには多数の部品を必要とする。一般的に自動車1台には2万点余りの部品が使われているといわれており、それを前提として考えれば身の回りにあふれる様々な工業製品も、数十、数百、数千の部品が使われていることは容易に想像していただけると思う。そしてその多数の部品は、製品自体が販売中止となった後も、補修用途のために用意されていなければならない。製造業は、何時、どのようなタイミングで、どれ程の数量の要求が入るか判らないこれらの部品を、保守用途が発生した時点で確実に供給できるように保持しておかなければならない訳である。

自動車で用いられる部品のイメージ(クリックで拡大) 出典:Syncron Japan

 しかも、製品自体は一つではない。新製品として世の中に出たタイミングで、いくつかのバリエーションを持っている場合もあるだろうし、当然、何年かごとにモデルチェンジも繰り返していく。したがって、製造業としては、膨大な種類、膨大な数量の部品を、一定の期間、管理し続けなければならない責務を担っている訳である。

2. 保守部品は複数拠点でそれぞれ過不足なく管理されるべき

 保守部品は迅速に供給されなければならない。顧客側の許容時間を大幅に過ぎるようなことがあれば、それは顧客満足度の低下に直結し今後のビジネスに大きな禍根を残すこととなる。

 ゆえに配送時間の短縮を考えれば、それらの保守部品を1つの倉庫で管理するのではなく需要地に近い拠点倉庫に分散しておくことも良く取られる手段だ。そこで課題となるのが、それらの複数拠点でどのような部品がどれだけの数量で在庫されているのかといった把握がとても難しいことである。

 多くの企業ではシステム化をすることによって個別拠点の在庫把握はできるようになっている。一方で、複数拠点、特に国をまたがって在庫管理を行う場合はそれぞれのシステムが異なることもありえることから、全体在庫の可視化に大きな課題を持っているケースも散見される。もちろん、そのサプライチェーンの先に経営が全く別の独立系のディーラーネットワークが存在すれば、その課題はさらに大きくなる。そもそも、それらの複数拠点にどの部品を何個配備すべきなのかの計画を立てることにも大きな苦労が伴っている。

 各部品に対する最終顧客やディーラーからの受注は、その都度まちまちで数量も含めて決まった法則などはありえないし、それぞれの部品の発注に関してもサプライヤから納入されるリードタイムはバラバラである。保守部品ビジネス従事者の頭痛の種は、部品の複雑なサプライチェーン全体を俯瞰(ふかん)しながらなるべく正確な需要予測と最適化された在庫配置にあるといっても過言ではない。

一般的な保守部品サプライチェーンの概念図(クリックで拡大) 出典:Syncron Japan
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