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ハイパーモデル分割タイム始まるよモノづくり素人だけど2代目社長の製品開発(2)(2/4 ページ)

有名クリエイターが作った初音ミクの3次元CGを製造向きかつ精細なデータに仕上げていく。そして、ひたすらモデルを分割、分割、分割だ。

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 Tripshots氏は、それまでの製作環境ではどうしてもうまくできなかった表現を克服するべく、新たなCG製作アプリを導入するなどヤル気満々で、表現の方向性や彼なりの新たなプロセスが確立しつつあるようでした。

 結果、

「クリエーター=Tripshots氏が表現すべき、フィギュアモデルとしての初音ミク」

について、納得いくまで形状を煮詰めていくことができました。

 そして、それはまた「Tripshots氏による初音ミクの立体形状がTripshots氏自らの手によって定義付けられた」ともいえるでしょう。

 そんな経緯を経て、ついに再入稿を迎えます。

大人っぽくなって帰ってきた


新旧モデル対比。イエローはファースト、グリーンは大改修後。台座やイス周辺のディテールに目が行きがちだが、左腕や肩、手首の関節位置も修正され、全体の印象としては、よりリアリスティックな表現に
ツインテールは細い房の追加にとどまらず、ヘアラインの凹凸ディテールを強調していたり、全体の構成フォルムにも微妙な修正が。そしてボディおよびそでのシワ、肩のフォルムなどなど、もはや別物と呼べるほどの修正の嵐!
細密なメッシュはもちろんのこと、ブーツのシワや右足首の関節方向も非常に自然な印象

 「アレレ? 何だかちょっぴり大人っぽくなって帰って来たぞ」――再入稿されたファイルを開いてみて、われわれが抱いた印象です。

 メッシュも細密になり、非常にスムースなシェイプで形状が構成されています。一方、目鼻の造形や頭身バランスは紛れもなく『トリミク』なんだけれど、骨格やディテールなどがよりリアリティを増し、少しうつむき加減で正面を見据えている、「キュート」と言うよりはむしろ「クールビューティ」な雰囲気の座像。いい感じです。

 ただし、肉厚や勘合部位に関しては当社側で形状編集する段取りとなっていましたので、われわれはまず再入稿されたモデルデータ各部の詳細確認から始めました。

 最初に入稿されたものから各部のグルーピングに大きな変化はなく、想定していたパーツ分割の基本プランは生かせそうです。


再入稿されたモデルデータをグループごとに色分けして表示

しかしスライスしてみると各グループは交錯していた……むぅ、やってやるって!

 しかし、RP出力するにせよ、成形用金型を彫刻するにせよ、ハッキリさせねばならない問題が出てきます。

 サイズです。

 本件はCADと違い寸法概念が希薄なCGデータを起点としているため、実体化する際にはそれぞれの部位に寸法を定義付ける必要があるのです。

 座像モデルにつき立位正体での正確なサイズは不明ですが、「身長158cm」というキャラクター設定と本件モデルの頭部や手足の寸法を基に、設計担当や加工担当と検討した結果、約7分の1スケールを想定したサイズにて製作することとしました。台座およびイス背もたれを含めて、完成時で全高が約280mmのモデルになる算段です。

 精密加工を生業(なりわい)にして来た(前回記事参照)当社としては、本当は12分の1や20分の1など、もう少し小さなスケールのモデルにした方が、加工技術を前面に生かせるとも思いました。しかし既存事業の品々とは異なり、視覚的な効果や効能を第一義に置かねばならない商品にする必要があったので、そこは市場のセオリーに準じることにしました(今回あらためて市場を見て回ったのですが、いわゆるフィギュア、特にスタチューの世界ではなぜか7分の1や8分の1というスケールがメジャーなんです)。

 しかし一方で、再入稿されたモデルデータを単純に7分の1スケールのサイズにすればOKというわけではなく、肉厚というテーマを考慮する必要があります。製品の仕様はポリ塩化ビニル(PVC)もしくはABSといった樹脂を用いたインジェクション成形での実体化を想定していますので、個々のパーツごとに肉厚を考慮する必要があるのです。

 例えばそで口やえりなどは、仮に成形できたとしてもフィルム状の極薄肉になってしまい、強度的に問題が残ります。よって、適宜肉厚を増してあげるわけなんですが……。

こんなにペラペラなんです

CADデータと有機形状

 ここで読者の皆さんはちょっと疑問をお感じになられるかもしれません。

 しかし、ここで修正している対象はTripshots氏製作の“ポリゴンデータ”で、“CADデータ”ではないのです。

 製造業の皆さんは、こういった場合にどのように対応するでしょうか? ポリゴンデータをIGESなどのサーフェスデータに変換しますか? サーフェスデータにしてしまえば、それはいわゆるCADデータとなりますから製造業の環境との親和性も高く、加工もしやすいわけです。

 入稿データがSTL形式であれば昨今のCADソフトなら読み込むことは可能でしょう。

 そして、

  1. 肉厚が懸念となっている部分のサーフェスを選択
  2. 切り取り
  3. 任意の肉厚になる様にカーブを作成し直した面に貼り換える

 ……そんなプロセスを考えるのではないでしょうか。

 ただ、その面貼り作業において、対象が幾何(無機)形状ならまだしも、本件のような人物だったらどうでしょう? 対象が連続3次曲面で構成された有機形状の場合、連続する起伏(自然なスロープ)で構成される面をCADソフト上で再生していくのはかなり難儀な作業になってしまうのではないでしょうか?

 海外の製造現場にそういった有機形状データの編集を委託したら、想定していたものとはまるで違うアレンジが施されて上がってきてしまった……などという話を時々耳にしますが、それはこういった面貼りプロセスの作業が煩雑であることと、現地オペレーターさんの解釈が異なっていることの2点が大きな原因であるようです。

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