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デジカメの顔検出を“無効化”するゴーグル「プライバシーバイザー」人間とデバイスの感度の違いを利用したプライバシー保護(1/2 ページ)

国立情報学研究所(NII)の越前功准教授と工学院大学の合志清一教授は共同で、カメラの写り込みによるプライバシーの侵害を、被撮影者側から防止する技術を発表した。人間の視覚とカメラの撮像デバイスの分光感度特性の違いを利用したもの。今回、11個の近赤外LEDを搭載した「プライバシーバイザー」を開発した。

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プライバシーバイザー

 近年のカメラ付き携帯電話端末やスマートフォンの普及、そして、SNSや画像による検索技術(Google画像検索など)の発展により、盗撮(本人に無断で撮影)や意図しないカメラへの写り込みによるプライバシーの侵害が問題となっている。

 例えば、観光客が撮影した写真に、自分が意図せず(気が付かない間に)写り込んでしまったとする。撮影者は、その写真を普段利用しているSNS上に当たり前のようにアップロードし、友人などに旅の報告をするだろう。撮影者が何げなくアップロードした写真データには、タイムスタンプはもちろん、最近では位置情報なども付加されている可能性がある。つまり、撮影者が行ったこの行為は、写真の背景にたまたま写り込んでしまった人の意思にかかわらず、その人が、いつ・どこにいたか、というプライバシーを無断でインターネット上に公開していることになるのだ(悪意の有無に関わらず)。

社会問題化
意図しない写り込みによるプライバシーの侵害が社会問題化

 もう1つの問題は、画像検索技術・顔認識技術である。何かの理由で、家族や知り合いなどが自分の顔写真を利用して画像検索をかけたとする。検索結果には、本人がインターネット上にアップロードした画像以外にも、第三者が撮影した画像(前述したような画像)が含まれてくる可能性がある。もしそれが、見知らぬキレイな女性とショッピングを楽しんでいる写真だとしたら……。その写真データには、日付や位置情報だけでなく、撮影者がSNSやブログなどに入力したテキスト情報(「今日はどこどこに行きました!」など)も含まれているかもしれない。自分がアップロードした覚えのない写真から、プライバシーが暴露されてしまうことになりかねない。

国立情報学研究所(NII)の越前功准教授
国立情報学研究所(NII)の越前功准教授。「将来的に、GoogleのProject GlassやAppleのiGlassのような、カメラとヘッドマウントディスプレイで構成されるAR(拡張現実)アプリケーションが一般に普及した際、カメラに写り込んだ人物の名前や所属などを、検索エンジンなどを通じてリアルタイムで特定されてしまう可能性も出てくる」(越前氏)

 このような問題に対し、物理空間における人対人のコミュニケーションに支障を来たすことなく、カメラの写り込みによるプライバシーの侵害を被撮影者側から防止する技術を、国立情報学研究所(NII)の越前功准教授と工学院大学の合志清一教授が共同で開発した(2012年12月12日発表)。

 この技術は、人間の視覚とカメラの撮像デバイスの分光感度特性の違いを利用したもの。被撮影者は、ゴーグル形状のウェアラブルデバイス(プライバシーバイザー)を装着する。プライバシーバイザーには11個の近赤外LEDが搭載されており、ノイズ(近赤外線)を照射することで、カメラによる顔検出を失敗させる。


人間とデジタルカメラの感度差
人間とデジタルカメラの感度差。国際照明委員会(International Commission on Illumination)によると、人間の可視域は、波長380〜780nm。一方、デジタルカメラに用いられるCCDやCMOSなどのイメージセンサーは、感度維持のために可視域外を含む広い領域(約200〜1100nm)に感度を有している。
プライバシーバイザーの外観
プライバシーバイザーの外観。ちなみに、一般的なサングラスでは顔検出を失敗させることはできないという。
近赤外LED 個数:11個、ピーク波長:870nm、放射強度:600mW/sr、放射角±15度、定格電流:1A、定格消費電力:2.1W
ゴーグル フレーム材料:プラスティック、レンズ:ポリカーボネート
電源 リチウムイオン電池(3.7V×3) 2000mA/h
プライバシーバイザーの仕様

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