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応力低減の合言葉「イカの頭を切れ!」甚さんの「サクッと! 設計審査ドリル」(2)(1/3 ページ)

通勤通学中にも取り組める、各企業における設計審査の定型質問に基づいた問題集。今回も耐震補強材の「股裂き」対策ですが、ちょっぴりやっかいな問題です。

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当連載の登場人物

甚

根川 甚八(ねがわ じんぱち)

根川製作所 代表取締役社長。団塊世代の大田区系オヤジ技術屋。通称、甚さん

良

国木田良太(くにきだ りょうた)

ADO製作所 PC事業部 設計2課 勤務。甚さんいわく「イマドキな若者」。機構設計者。通称、良君


エリ

沢田恵梨香(さわだ えりか)

ADO製作所 PC事業部 設計2課に勤務する派遣社員。良君のい〜加減な設計を製図でしっかりフォローする優秀な設計アシスタント。製図専門学校卒。通称、エリカちゃん


*編集部注:本記事はフィクションです。実在の人物団体などとは一切関係ありません。



 前回出題した【問題2】は以下でした。良いアイデアは浮かびましたか?

【問題2】

 図のように、角材の曲げモーメントが加わった耐震補強材の股裂き対策のアイデアをいくつか出してください。ただし角材をC面取りで逃げるのは禁止です。


図 C面取り禁止の場合はどうすればいいの?
良

ちなみに、こいつにかかる曲げモーメントは、こんな感じ(図1)。……しかし、これいじわる問題ですね。答え教えてください。



図1 問題2のL字型板金にかかった曲げモーメント
エリ

転職の試験が近いんですよ。お願いですから教えてください。


良泣

転職……、寂チーっ!!


甚

しょうがねぇなぁ。ヒントは「イカの頭を切れ!」だ。図2のこれでどうだぁ、あーん?



図2 対策は「イカの頭を切れ!」とは? 出典:ついてきなぁ!加工部品設計で3次元CADのプロになる!(日刊工業新聞社刊)
良

んなっ! 何これ? 裂きイカ? これが対策? 余計にひ弱になった気がしますよ?


甚

そんなこたねぇぞ。実は、実務というよりも、学問的な問題になるんだがよう。図3にある応力分布図を見てくれ。



図3 対策は「イカの頭を切れ!」の応力分布図 出典:ついてきなぁ!加工部品設計で3次元CADのプロになる!(日刊工業新聞社刊)
良真

これ見てたら分かったぞ! 学問なら僕にお任せ! その先は僕が解説します。


良ドヤ

図1のように、L字型板金に曲げモーメント(曲げる力、曲げようとする外力)が加わると、図3のように隅に応力が集中します。このとき、前回で説明した「圧縮応力」と「引張応力」で「応力分布図」が描けます。直線と曲線がクロスしたポイントが、子どものときによく公園で遊んだシーソーの支点と思ってください!(ドヤァ)


良ドヤ

支点がL字型板金の角に寄っているので、釣り合いを取るためには、隅にはまるで横綱・白鵬のような重量級の体重が必要です。この体重でクラック(ヒビ)が入ってしまうのです!(ドヤァ)


エリ

そこまでは分かりました。それで、「裂きイカ」、じゃなかった……、「イカの頭を切れ!」ってなぁに?


良

図3のように、まるでイカの頭を切ったようにL字型板金の角を切断すると、シーソーの支点が、直線の中央部へ移動するんだ。


甚

ああ、そうだな! 釣り合いを取るための白鵬級の体重は不要になって、一般人の体重で済むってわけだ。完璧な対策とはいいがたいが、少なくとも、緩和はできるだろうな。


甚さんのアンチョコ

実はこのとき、良君の表現にちょっと違和感を覚えた。正しくは、「シーソーの支点を直線の中央部へ移動するように、L字型板金の角を切断する」になるな。

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