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モノのインターネットを再考するSYSTEM DESIGN JOURNAL(2/5 ページ)

IoTがその現実性について語られるようになった2015年、その基本概念を再考する機運が高まっています。「センサー」「仮想化」「フォグ」などの観点から、IoTを再考してみましょう。

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それが全てを変える

 多くの単純なセンサーの代わりに、畳み込みニューラル・ネットワークやカルマン・フィルタなどの堅牢な計算アルゴリズムを使用するという考え方に利点があることは明らかですが、問題も引き起こします。設計者はジレンマに直面しているように見えます。

 設計者は、生データ(恐らく4K映像のマルチストリーム)を分析するためクラウドまで移動させて、仮想化の精神を維持するでしょうか。それとも、センサーの近くに大きな計算設備を設けるでしょうか。いずれのアプローチにも異議を唱える人と支持する人がいます。

 計算機能をクラウドに置くことに賛成する論拠は明らかです。希望するだけの計算能力を獲得できるからです。ビッグデータ・アルゴリズムを経験したいなら、ほとんど無限のストレージも利用できます(しかも、使用料はおおむね実費を支払うだけです)。しかし、課題にはセキュリティ、レイテンシ、帯域幅という3つが挙げられます。セキュリティには後で触れるので、基本的にインターネットの問題である残りの2つについて考えます。

 レイテンシをほとんど許容しないアルゴリズムを用いるならば、ローカルコンピューティングに頼らざるを得ません。一方、センサー入力からシステム応答までの間にいくらかのレイテンシが許容される場合は、その量と変動幅が問題となります。

 例えばある制御アルゴリズムではループ中に大きなレイテンシがあっても構いませんが、そのレイテンシはほとんど一定でなければなりません。そのようなニーズの多くは、ハブとデータセンターとの間に専用の光接続を設けることによって満たすことができます。集中無線アクセス・ネットワーク(C-RAN)はこの方式で動作します。

 しかし、最良のIoT精神を発揮してインターネットを使用すれば、さらに多くの深刻な問題が発生します。インターネットの先駆者であり、TSL TechnologiesのCEOを務めるLarry Roberts氏はある講演で、「インターネットは、ユーザーの要求が増加する中で根本的に変わる必要があります」と警告しました。

 加えて、帯域幅に関係なくプロトコルそのものに速度の限界があり、「TCPはGbpsではなくMbpsでスタックします。TCPで、4Kビデオを長距離伝送するようなことはできません」とも述べています。

 この問題の回避策はありますが、それには危険が伴います。「ユーザーデータグラムプロトコル(UDP)を使用してコンテンツを詰め込むことは可能ですが、遅かれ早かれインターネットが機能しなくなります」とRoberts氏は説明しています。十分な帯域幅を実現し、レイテンシに関する取り決めを守るには、インターネットそのものも変わる必要があります。

 「サービス品質(QoS)要件をサポートし、帯域幅を広げるには、ネットワークにフロー管理、輻輳(ふくそう)管理、リカバリを追加する必要があります。それには、インターネットがさらに多くの情報をそのプロトコルと共有する必要があります」

 クラウドに送信するデータの量が少なく時間の制約が厳しくなければ、これらが問題にならないことは明らかです。ところが、4Kビデオを複数のカメラからクラウドにリアルタイムで送信するようなシステム・デザインでは、インターネットの限界が問題になります。

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