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日産の可変圧縮比エンジン、マルチリンク機構で燃焼室の容積をシームレスに変更エコカー技術

日産自動車のインフィニティブランドが「世界初」(同社)となる量産可能な可変圧縮比エンジンを開発したと発表。排気量2.0l(リットル)の4気筒ターボエンジン「VC-T」に、ピストン上死点(ピストンの上限)の位置をシームレスに変更できるメカニズムを組み込み、圧縮比を8〜14の間で変更できるとしている。

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 日産自動車のインフィニティブランドは2016年8月14日、「世界初」(同社)となる量産可能な可変圧縮比エンジンを開発したと発表した。「最も進化した内燃機関の1つ」(同社)ともしており、「パリモーターショー2016」(一般公開日:2016年10月1〜16日)で披露する。

日産自動車が開発した可変圧縮比エンジン「VC-T」日産自動車が開発した可変圧縮比エンジン「VC-T」 日産自動車が開発した可変圧縮比エンジン「VC-T」。排気量2.0l(リットル)の4気筒ターボエンジンである(クリックで拡大) 出典:日産自動車

可変圧縮比になればガソリンエンジンの問題は一挙解決?

 自動車のガソリンエンジンは圧縮比が高いほど燃費を向上できることが知られている。最近では、EGR(排気再循環)を冷却するクールドEGRの採用や、バルブ開閉のタイミングを可変させるアトキンソンサイクル化などの改良によって13〜14という圧縮比を実現している例もある。ただし、高圧縮比にすると発生しやすくなるノッキングを回避するには、点火タイミングを遅らせるなどの工夫が必要になる。この場合、エンジンの出力やトルクといった性能は引き出しにくくなる。

 高圧縮比のガソリンエンジンで、燃費と性能を両立するのは難しい。ただしこれは、エンジンの圧縮比が固定されているから起こる問題だ。渋滞時のように高い性能は不要だが燃費を重視したいときは高圧縮比を維持しつつ、高速道路での加速時のように性能を引き出したいときは低圧縮比にしてターボチャージャーなどの過給機と組み合わせればより高い出力や大きなトルクを発揮できる。

 今回日産自動車が開発したエンジンは、こういった走行状況に合わせて圧縮比を変更できる可変圧縮比エンジンなのである。

マルチリンク機構が肝

 可変圧縮比の技術は、インフィニティブランド向けとなる排気量2.0l(リットル)の4気筒ターボエンジン「VC-T(Variable Compression-Turbocharged)」に搭載されている。圧縮比は8〜14の間で自由に変更できるとしている。

 技術の根幹になっているのは、可変する圧縮比に対応するように燃焼室の容積を増減させるために、ピストン上死点(ピストンの上限)の位置をシームレスに変更するメカニズムである。

「VC-T」の可変圧縮比のメカニズム
「VC-T」の可変圧縮比のメカニズム(クリックで拡大) 出典:日産自動車
固定圧縮比のガソリンエンジンのクランクシャフト
固定圧縮比のガソリンエンジンのクランクシャフト

 圧縮比を変更する際には、高減速比かつ軽量で、バックラッシュが少ないことを特徴とするハーモニックドライブによりアクチュエータアームを動かす。アクチュエータアームの動きと連動して、コントロールシャフトが回転し、ピストンとの間にあるマルチリンク機構の角度が変わる。高圧縮比にする場合には、マルチリンク機構の角度を垂直方向に近づけ、低圧縮比にする場合には水平方向に近づければよい。

 一般的なガソリンエンジンでは、ピストン、コンロッド、カウンターシャフト、カウンターウェイトから成るクランクシャフトによってピストンを動かしている。VC-Tの場合、ピストンとコンロッドはそのままに、そこからつながるマルチリンク機構が、カウンターシャフトとカウンターウェイトの役割を果たしているようだ。

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