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日系製造業を悩ます技術承継問題、必要なのはデジタルデータ化と教育技術承継(1/2 ページ)

2017年2月15〜16日に開催された「Manufacturing Japan Summit」では、理想科学工業 開発本部 P&Dセンター所長付池上哲司氏が登壇。「技術資産の活用を妨げている真因と解決のポイント」をテーマに技術承継の在り方について講演した。

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 日本トップクラスの製造業の設計・開発、製造・生産技術担当役員、部門長らが参加した「Manufacturing Japan Summit(主催:マーカスエバンズ)」が2017年2月15〜16日、東京都内で開催された。その講演で理想科学工業 開発本部 P&Dセンター所長付池上哲司氏が登壇。「技術資産の活用を妨げている真因と解決のポイント」をテーマに技術承継の在り方について講演した。

グローバル競争が加熱する中で高まる技術資産の価値

 理想科学工業は東京都港区に本社を構え、印刷機・プリンタおよび消耗品の開発、製造、販売事業を展開している。「世界に類のないものを創る」を開発ポリシーとして製品開発を進めており、事務用孔版サプライ品メーカーから印刷機・プリンタメーカーへと業容を変化させてきた。現在の主力製品であるデジタル印刷機「リソグラフ」、高速カラープリンタ「オルフィス」は、世界180以上の国や地域で幅広く利用されている。従業員数は単体で約1800人。2016年3月期の連結売上高は854億円に及ぶ。

 事務機器市場もグローバル化が進む中、競争は加熱しているといえる。市場要求の高度化、グローバルでの競争激化は増す一方で、その中で競争力を維持していくためには、技術資産の有効活用は欠かせない。また、従来の技術力を支えてきた熟練技術者の技術を若年層に引き継いでいくことも重要な課題となってきている。

 理想科学工業でも技術伝承、品質情報共有に取り組んできたが、それぞれの製品に関連するデータ量が膨れ上がる中で、今までとは異なるアプローチも必要だとの考えに至ったという。

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理想科学工業 開発本部 P&Dセンター所長付池上哲司氏

 製造業を取り巻く環境においてモノづくりプロセスのグローバル化、要求レベルの高度化、新たな法制度への対応などが増える中、若手育成にもこれらの全てを理解しなければならないという壁がある。以前より開発・生産の難易度は上がっており、さらに失敗が許容されない状況から「失敗から学ぶ」という機会が減少しているという課題があった。

 技術資産の継承についてもマニュアル、標準書、チェックリストなど素材が多岐にわたっており、さらにOJTでも効果は指導者側の指導力に大きく左右されるなど、成長は個人の力量に依存する面が大きかった。結果的に、研修時には分かった気にはなるが、しばらくすると忘れてしまったりするケースが多かったといえる。

 さらに、実業のリソースが限られる中、「若手育成と技術資産にリソースを振り分けることができない」などの状況もあったという。そのため、池上氏は、技術資産の活用を妨げるのは「若手、中堅、ベテラン、管理職の役割に関係なく、一人一人が自発的に知識・情報を提供し、活用する環境・意識になっていないことに真因がある」(池上氏)と原因を断定。さらに、そのできない理由を「知識・能力のギャップ」と「必要データ・情報(ナレッジ)のギャップ」が影響しており、その解決方法として環境・意識を変えるための仕組みを採用する、ということに取り組むことにした。

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