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製造業VR、3Dデータで見るか? 点群で見るか?――産業設備設計レビューとVRVR事例(1/2 ページ)

製鉄や環境プラント関連における設計・製図などに携わる産機エンジニアリングが、同社によるVRシステム開発や顧客導入事例について明かした。SCSKが2017年8月24日に開催した「SCSK VR Collaboration Seminar」より。

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 SCSKは2017年8月24日に都内で「SCSK VR Collaboration Seminar」を開催した。同イベントで産機エンジニアリング 設計部のグループリーダーである森部義規氏が「VRで変わる設計レビュー〜VR空間での点群データの活用〜」と題して講演した。

 産機エンジニアリングは北九州市に本社を置く中小企業で、製鉄や環境プラント関連における設計・製図などを事業内容とする。同社は新日鐵住金の八幡製鐵所や君津製鉄所の近隣に事業所を構え、現場での計測から設計、解析、製造と一貫して請け負えることを強みとしている。製鉄所に常駐して設計する部門もある。設計にも3D CADを取り入れ、2003年からはレーザースキャンによる計測も導入している。さらに現在は、3D CADのデータやレーザースキャナーで取得した点群データをVR(Virtual Reality)化して設計レビューで活用すべく取り組む。2017年4月から、同社は東京に事務所を構え、独自のVRソフトウェアの開発を行っている。


産機エンジニアリング 設計部のグループリーダーである森部義規氏

 森部氏は主にレーザー計測にかかわっているという。北九州市にある本社の部門に在席するものの、最近は多くの時間を東京の事務所で過ごしているという。

 同社では導入現場の設備を見て、計測しながら装置や設備の設計製図を進めていく。製鉄やプラントの現場には古い設備や装置が多く、図面が存在しないことも多い。図面があったとしても情報の正確性を欠く場合もある。また立ち入りが困難あるいは危険であったり、人の手が届かぬ場所もよくある。そんな事情から導入されたのがレーザー計測技術だった。併せて設計も3次元化し、干渉チェックやウォークスルーなどでの活用を進めている。設備の3DデータはBIM(Building Information Modeling)を利用して情報管理している。

 顧客が設計物の3D CADデータを閲覧する環境を用意するにはコストが掛かることから、安価に3Dデータを見られる仕組みが要望として挙がっていた。そのような事情から、VRによるレビューの導入も進めてきた。3Dの設計データのVR表示にも取り組んでいるが、レーザー測定で取得した点群データをそのままVRで活用することも検討している。「ここ数年でHMDの価格が下がり、PCのスペックも高まってきたことで、点群をVRの空間で展開できるようになった」(森部氏)。

 点群データをVRで利用することは、従来のソフトウェアで十分可能なことではあるが、「コストが掛かる、機能が少なくて痒いところに手が届くような仕組みではないといった課題があった」と森部氏は述べる。そこで、独自のソフトウェアを開発しようという流れになったということだ。

 ここ数年で各社のHMDの性能が高まり、かつ点群データにも追従できるようになってきた。VR技術と併せレーザースキャナーもこの10年の間で進化した。導入した2003年当時のレーザースキャナーの点群取得スピードは秒間1000点という「とてつもなく遅い」(森部氏)速さで、100万点取得で15分程度かかっていた。現在は秒間で最大100万点というスピードで計測できるようになった。このような近年の技術の成熟とともに、点群データのVR化を具体的に進めることになったという。同社が取り組んでいるのはVRとMR(Mixed Reality:複合現実感)のシステムになる。

 「大容量になりがちな点群データを扱いたいが、遅延なく高速にやりたい」(森部氏)。しかしスマートフォンをVRビュワーとして利用するスクリーンレス型や、VR機器単体で利用できるスタンドアロン型はスペック的に厳しい。形式としては高性能なPCとVR機器をケーブルで接続して使うテザード型(ケーブル型)を採用した。

 そこで最初に選んだのが、MRの「MREAL」(キヤノン)だった。MREALではシステム設置環境にある複数台のカメラが、配置されたマーカーを認識することで自己位置を認識する。併せて、点群を可視化できるソフトウェア「Galaxy-Eye MR」(富士テクニカルリサーチ)を活用した。VR用のモデル構築については、Unityを利用した。

 MREALはカメラがとらえた実物の画像において任意のカラーだけをVR空間に表示する機能を持つ。肌色を表示できるような設定にしておけば、作業者の手をMR空間上に表示することが可能になる。VR空間の設備の中における距離感や広さを把握したり、ライトで照らすエフェクトを加えるといったことも可能だ。

 このように高機能かつ有意義なMREALだったのだが、高価であり、気軽に台数を増やせるようなシステムではなかった。その上、点群データの処理においてはデータが重くなると遅延が生じ、没入感に少々の課題を抱えていた。

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