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安川電機は「アイキューブ メカトロニクス」で何を実現し、何を実現しないのか製造業×IoT キーマンインタビュー(2/4 ページ)

IoT活用によるスマートファクトリーが大きな注目を見せる中、安川電機は2017年10月に一連の取り組みを再編成した「アイキューブ メカトロニクス」を発表した。全世界的に製造現場のスマート化が進む中で、安川電機が目指すものとは何なのだろうか。同社執行役員 CTOで技術部長の善家充彦氏に話を聞いた。

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新たに打ち出した「アイキューブ メカトロニクス」

MONOist 新コンセプトの「i3-Mechatronics」についてあらためて教えてください。

善家氏 「i3-Mechatronics」の3つの「i」は「integrated(統合的、システム化)」「intelligent(知能的、インテリジェント化)」「innovative(革新的、技術革新による進化)」を示しており、以前から展開する機器をコンポーネントとして進化させるだけでなく、統合してシステム化を実現したり、AI(人工知能)技術を活用して知能化したりすることで実現できる新たなモノづくりの姿をイメージしている。

 ポイントとなるのがデジタルデータの活用で、デジタルデータマネジメントの要素を加えていることが特徴だ。機械や設備を実際に稼働させた後のデータ活用により生産性の向上や品質の確保・維持、止まらない製造ラインの実現など、製造ノウハウを組み込んだソフトウェアの提供などで新たな価値を提供する方針だ。

 生産性の向上としては、生産状況のリアルタイムな可視化や装置間の連携、搬送、ビッグデータの活用によるタクトタイムの短縮などを目指す。品質面では、データの分析と解析による検査の均一化や周囲環境変化への追従による精度向上などを実現する。さらに、止まらないライン実現に向けては、AI(人工知能)を活用した機械や設備の故障予知や寿命の最適予測、AR(拡張現実)を活用したメンテナンス、VR(仮想現実)によるロボットへのティーチングなどを目指す。これらを通じて、コンポーネントのパフォーマンスを最大化させ、工場ラインの生産自動化やデジタル化のさらなる拡大を推進する。

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「アイキューブ メカトロニクス」の概要(クリックで拡大)出典:安川電機

安川電機独自の強みはどこにあるのか

MONOist 「i3-Mechatronics」などエッジサイドのIoT基盤などはいくつかの企業から既に提供されており、近いコンセプトが訴えられていますが、安川電機ならではの強みはどこにあると考えますか。

善家氏 デジタルデータソリューションを展開するといっても、安川電機はERPシステムなどを保有しているわけではなく、保有していない領域については外部と連携していくことになる。安川電機の特徴としては、以前から展開してきたメカトロニクス製品群が中心になる。メカトロニクス製品群で培ったメカトロニクスナレッジを融合および結集し、他のメーカーが実現できないサービスや価値を提供することが独自の強みとなる。

 具体的な製品として見た場合、産業用ロボットとサーボモーター、インバーターなど、製造現場の動作を支える中心機器である。これらを専業メーカーとして全て保有している企業はあまりない。センサーなどは保有していないものもあるため十分とはいえないが、これらの3つを組み合わせることで製造現場のラインのほとんどを作り上げることが可能となる。専業メーカーならではのさまざまな価値が発揮できると考えている。

 例えば、故障予知や予兆保全などを行うには、製造現場の機器情報が必要となる。この場合、現場の情報取得はコントローラーから行うような企業がたくさんある。もちろんコントローラーで取得できる情報で予知できる故障などもあるとは思うが、安川電機では実際の機器をIoTデバイス化して情報を取得できるため、より詳細な情報取得が可能となり、故障予知の精度などを高めることが可能となる。

 競合他社は大手でも保有していないデバイスがあり、ラインを構成する要素を全て網羅できているのは安川電機だけだと考えている。この末端までを保有する深みを生かしていく。

MONOist 具体的にはどういう仕組みを考えているのですか。

善家氏 ERP(Enterprise Resources Planning)システムなど上位のシステムとの接続部分に「i3-Controller」を設置して、クラウド環境などとのデータ連携を実現する。工程ライン内は「i3-Controller」を軸に閉じた環境を作り、その中でロボットやモーションなどを一元的に駆動させる。従来は個々に必要だったモーションコントローラーやロボットコントローラーを融合し、個々のデバイスにIoT機能を搭載。リアルタイム性を保持し高精度で制御可能なクローズドネットワーク環境を実現する。「i3-Controller」でつながる仕組みを作り、これらとメカトロニクス関連技術を組み合わせることで、最高の効率と品質、止まらない生産を目指す。

 「i3-Controller」は、サーボモーターとインバータとロボットを同じOSで動かすことができるようにする。主な情報のやりとりを同期させながら実現する。さらにセンサーなど下位から情報を判断し、選別しながら上位の基幹システムへと情報を送り込む機能を持たせる。AIの推論モデルの処理機能なども搭載し、エッジコンピューティングと呼ばれる領域は「i3-Controller」でカバーしていく。

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