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鋳造技術でアスリートを“アーカイブ”、パッキャオや広島カープの選手もベンチャーニュース

精密鋳造部品を手掛けるキャステムは、同社が得意とするロストワックス精密鋳造技術を基に新たな事業を本格化させる方針を明らかにした。アスリートをはじめ人の手や足、体を、鋳造や3Dデータの技術を生かして歴史に残す「ヒストリーメーカー」だ。

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キャステムが商品化したマニー・パッキャオ氏の左拳の金属手型
キャステムが商品化したマニー・パッキャオ氏の左拳の金属手型(クリックで拡大)

 精密鋳造部品を手掛けるキャステムは、同社が得意とするロストワックス精密鋳造技術を基に新たな事業を本格化させる方針を明らかにした。アスリートをはじめ人の手や足、体を、鋳造や3Dデータの技術を生かして歴史に残す「ヒストリーメーカー」だ。同社は2018年7月11日に東京都内で開催した「マニー・パッキャオ復帰戦応援イベント」において、世界的に著名なボクシング選手として知られるマニー・パッキャオ氏の左拳の金属手型を、同年7月15日に開催されるパッキャオ氏の復帰戦に合わせて発売することを発表。これに併せて「ヒストリーメーカー」をブランド化して事業拡大していく方針である。

 ロストワックス精密鋳造技術は、高い寸法精度と良好な鋳造表面が得られることを特徴とする。隣接部分を一体化したような複雑形状の量産も可能だ。低融点の金属材料が中心の一般的な鋳物と異なり、鉄、銅、マグネシウム、チタンなどさまざまな金属材料も扱える。キャステムは、この技術で製造した精密部品を、医療機器や鉄道、航空機などさまざまな企業に納入している。2017年度の売上高は62億円で、6年連続の成長を続けている。

しわや浮き出た血管などを高精度に再現しわや浮き出た血管などを高精度に再現 パッキャオ氏の左拳のしわや浮き出た血管などが高精度に再現されている(クリックで拡大)

 ヒストリーメーカーは、このロストワックス精密鋳造技術を精密部品以外への展開を模索して2016年から立ち上げた事業になる。キャステム 新規事業本部 IRON FACTORY 上席主任の池田真一氏は「当社が培ってきた技術を他に生かせないかと検討する中で、地元のプロ野球チームである広島東洋カープの選手のグッズを開発することになった。中でも、選手の手を型取りして、そのしわや血管などもサブミリメートルレベルで精密に再現した手型は大きな反響をいただいた」と語る。実際に、販売開始から3分で完売になったほどだ。さらに、清宮幸太郎選手をドラフト抽選で引き当てた北海道日本ハムファイターズの木田優夫氏の「黄金の左手」も商品化するなど実績を積み重ねている。

キャステムが手掛けた広島東洋カープのグッズ
キャステムが手掛けた広島東洋カープのグッズ(クリックで拡大)

 ヒストリーメーカー事業を本格化させる上で検討を始めたのが海外展開にむけた世界的なアスリートとの協業だ。「手型=拳といえば、やはりボクシング。当社はフィリピンに工場があり、そこの社員から“英雄パッキャオ”の話をよく聞いていた。そこで、日本でのプロモーションを担当しているMPプロモーションジャパンを通して、手型の商品化について打診したところ、快諾してもらえた」(池田氏)という。パッキャオ氏は日本の技術を尊敬しており、その技術によって自身の拳がどれだけ精密に再現されるかに興味があったとのことだ。

 そして2018年2月にパッキャオ氏の左拳の型取りを行い、手型を商品化することとなった。販売個数は世界限定888本で、2018年7月15日にマレーシアで行われるパッキャオ氏の復帰戦に合わせて予約販売を始める。出荷は同年8月8日の予定だ。価格は30万円。手型はシルジン青銅製で、台座はフィリピンのイメージカラーをとって青色としている。台座と専用の収納箱はパッキャオ氏のサイン入りである。

 復帰戦の試合会場では、同価格ながら仕様の異なる高品質な処理を施した限定品を88本販売する。また、シリアルナンバーが111〜888のゾロ目の商品は特別仕様(仕様は非公開)で、価格は100万円になる。

 ヒストリーメーカーでの、手や足の型取りは液体の型取り剤を用いる。固化した型に石こうを流し込んで原型を作り、そこからさらにシリコンゴム型を作成。このシリコンゴム型にワックスを注入し、このワックスにセラミックコーティングを施した後、加熱してワックスを溶かし出す脱ろうを行い、セラミックを焼成することで鋳型が完成する。この鋳型の金属を流し入れて、鋳造物が完成する。池田氏は「液体の型取り剤も、手や足の型取りを最適に行えるようにさまざまな材料を独自に配合している。もちろん、シリコンゴム型以降のプロセスであるロストワックス鋳造技術の高さも商品力につながっている」と説明する。

 ヒストリーメーカーの事業では、アスリートの手型や足型の他に、全身を3Dスキャンした3Dデータを用いた商品も対象にしていく。全身を型取りすることはできないので、その場合は3Dデータを活用することになる。特にミニチュア化したフィギュアなどで有効だ。既に、2017年に元プロレスラーの小橋建太さんのフィギュアなどで実績があるという。

 池田氏は「2016年の事業立ち上げから順調に拡大している。2018年度は億円レベルの売上高を目指したい」と述べている。

内山高志氏が登壇入場時に内山氏の全身3Dスキャンを実施 「マニー・パッキャオ復帰戦応援イベント」には、元WBA世界スパーフェザー級スーパー王者の内山高志氏が登壇。自身のことや、パッキャオ復帰戦への期待などについて語った(左)。入場時に内山氏の全身3Dスキャンを実施。3Dスキャナーはデジネル/デジタルアルティザンが開発したもの(クリックで拡大)
内山高志氏はミット打ちも披露KINGレイナ選手とのミット打ちも 内山高志氏はミット打ちも披露(左)。さらには、飛び入り参加した女子総合格闘家のKINGレイナ選手とのミット打ちも(右)(クリックで拡大)

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