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“選球眼”でヒット率向上、“全員野球”で2割成長を持続するOKI電源工場メイドインジャパンの現場力(20)(1/3 ページ)

「人の力」を中心に位置付けたOKIテクノパワーシステムズの成長戦略と生産性改善の取り組みについて紹介する。

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 企業として売上高を拡大することを考えた場合、分かりやすい取り組みとしては「事業の対象領域を広げること」があるだろう。しかし、逆に事業の対象領域を絞り込むことで成長につなげた企業である。OKIグループで電源部品の設計開発、製造、販売を行うOKIテクノパワーシステムズである。

 同社は得意な製品展開範囲を「ストライクゾーン」とし、それを絞り込むことでOKIグループ外の売上高を5年で2.5倍に拡大。さらに、設計開発から営業まで一致団結したモノづくり革新活動により、生産性の改善を実現しており、さらなる成長を目指している。「人の力」を中心に位置付けたOKIテクノパワーシステムズの成長戦略と生産性改善の取り組みについて紹介する。

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OKIテクノパワーシステムズの外観(クリックで拡大)

電源メーカーとしての47年の歴史

 福島県福島市にあるOKIテクノパワーシステムズはもともとの拠点としては、1944年にOKIの疎開先として福島工場を設立したことが源流となる。その後1971年にスイッチング電源の開発、製造を開始したことから、電源事業としての歩みを開始した。その後社名変更や体制変更などを経ながら、最終的に2011年に沖パワーテックと電源の製造会社だった信盛電機が統合し現在のOKIテクノパワーシステムズの体制となった。製造拠点はこの本社拠点と、中国の深セン地区の2拠点となる。

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OKIテクノパワーシステムズ 代表取締役社長の佐藤浩氏

 OKIの100%子会社であることから従来はOKI製品への電源部品の供給を中心事業としていた。ATM(現金自動預け払い機)向けやプリンタ向け、などB2Bの産業機械向けの導入が多かったという。ただ、OKIグループ内のハードウェア製品だけを対象にした場合、成長に限界があるために、2012年からOKIグループ外の顧客の拡大に本格的に取り組むことにしたという。

 OKIテクノパワーシステムズ 代表取締役社長の佐藤浩氏は「2010年頃はOKIグループ向けの売上高が約6割で、グループ外が4割という比率だった。それが2017年度にはOKIグループ外の比率が66%まで増えた」と大幅な成長について示す。実際にOKIグループ外の顧客に対する売上高は2012年度から2017年度にかけて、5年で2.5倍に拡大しており、大きな成果を残している。

「ストライクゾーン」を絞り込んでヒット率向上

 具体的にOKIグループ外顧客の拡大に向けどういう活動を行ったのだろうか。まず取り組んだのが製品の対象範囲を限定したことだ。

 佐藤氏は「電源部品はある意味では成熟している製品なので『作れるか作れないか』だけで考えれば、どういう製品も作ることができる。しかし『何でもできます』では受注するのは難しく、受注したとしてもあまり利益が出ないものが多かった。こういう状況では効果的な形でグループ外顧客の拡大はできないと考えた」と当時の状況を振り返る。

 これに対し「自分たちが本当に得意な製品仕様はどういうものかを考え直した。野球で言えば『何でもかんでも来た球にバットを出す』という状況だったが、得意領域を『ストライクゾーン』と位置付け、バットを振る領域を限定した」と佐藤氏は取り組みについて述べる。

 具体的には、「産業用」の「カスタム用電源」をまず主戦場と位置付けた。さらに「どちらかといえば得意だった」(佐藤氏)とする交流から直流への変換を行う電源部品を対象とし、さらに50W〜2kWの領域に絞り込んだ。数量的にもロット数が100〜500個くらいの領域を狙ったという。これらを考えた結果、半導体製造装置やFA機器、業務用通信機器、交通関連機器、医療機器、金融端末などの電源を主軸と位置付けることになったという。

 「今までは何でもかんでも提案してきたが、ストライクゾーンを絞り込んだことでヒット率(案件化率)も上がった。1割程度だった打率は3割以上に上昇した。ちょうど野球の数値の変化とも似ていることが面白い」と述べている。

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OKIグループ外での電源部品の対象領域(クリックで拡大)
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