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» 2005年07月12日 00時00分 公開

組み込みイベントレポート:組込みシステム開発技術展に見る最新事情 (2/2)

[中澤 勇,@IT MONOist]
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組み込み向け開発ツールの現在

 組み込み分野では、ソフトウェア開発に際してPCの世界とは異なるツール類が必要になる。その代表例がICE(インサーキット・エミュレータ)である。

 横河ディジタルコンピュータのブースでは、6月10日に発表されたばかりのJTAG ICE新製品「advicePRO」が注目を集めていた。同社にICEの動向を聞いたところ、現在はフルICEよりもJTAG ICEの引き合いの方が多く、「いまの主流はJTAG」だという。また、ICEに対する要望として最も多いのは、何といっても「ダウンロード速度の高速化」というわけで、advicePROでは高速化に力を入れているとのこと。


JTAG ICE advicePRO 写真3 JTAG ICE advicePRO

 同社ブースでは、同じく発表されたばかりの「Windows CE 5.0開発スタータキット」も展示されていた。アットマークテクノの大ヒットボード「Armadillo-9」を採用していることに加え、Windows CEという点が来場者の興味を引くらしい。そもそも、同社がこの製品を企画したのはWindows CEの引き合いが多かったからだという。いまでは、Linuxはハードディスクレコーダをはじめとする情報家電系、Windows CEはPDAや情報家電用の高性能リモコンなどというように、用途ですみ分けができているそうだ。

引き合いの多さから生まれたWindows CE 5.0開発スタータキット 写真4 引き合いの多さから生まれたWindows CE 5.0開発スタータキット

 コンパイラそのほか、多岐にわたる開発ツールを擁するガイオ・テクノロジーでは、これからの主力製品としてシステムシミュレータを有望視しているという。同社のシステムシミュレータは、MPU(CPU)そのほかのハードウェアをPC上でソフトウェアエミュレーションすることにより、仮想的なボードを生成する。これを使用することにより、開発ボードの完成を待たずにソフトウェア開発を行うことができる。ハードとソフトを並行開発できることになり、開発サイクルの短縮がますます要求されている組み込み分野にとってメリットは大きいのではないだろうか。2005年6月時点では、ARM7/9やMIPS、SH2〜4、V850(以上、一部を抜粋)といったMPUのエミュレーションが可能だ。

仮想ハードウェアを生成するシステムシミュレータ 写真5 仮想ハードウェアを生成するシステムシミュレータ


1Mbit/sでは足りない自動車の神経

 NECエレクトロニクスは、2004年9月に発表したマルチコアプロセッサ「MP211」を中心にさまざまなソリューションを参考出展していた。MP211はARM926EJ-S×3とDSP×1を内蔵し、低消費電力とハイパフォーマンスを実現するという。まだサンプル出荷の段階だそうだが、いずれNP211とMontaVista Linuxが搭載された携帯がNECから登場するかもしれない。

MP211を搭載した音声認識システム 写真6 MP211を搭載した音声認識システム。携帯への搭載を予定しているという

 ほかに、発表されたばかりの「platformOViA」(プラットフォームオーヴィア)を展開。LSIからOS、ミドルウェアや開発ツールまでを一括して提供するソリューションプラットフォームである。これにより、ユーザーはアプリケーションの開発に集中できるようになる。ACCESS、アプリックス、Wind River Systems、京都マイクロコンピュータ、ソフトフロント、モンタビスタ、横河ディジタルなど20社以上の企業と提携し、最適なソフトウェアを提供するという。

 車載系として、FlexRayを展示するブースをいくつか目にした。NECエレクトロニクスは横河ディジタルとともに「FlexRayスタータキット」を展示していた。現在、車載LANとしてはCAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)が使われているが、CANの仕様である1Mbit/sでは帯域が足りなくなってきているという。そこで10Mbit/sの転送速度を持つFlexRayというわけである。素人には制御系をつなぐのになぜそれほどの帯域が必要なのか分からないのだが、自動車メーカーは車載LANについていろいろと腹案があるようである。

 当然のことながら、TRON系のブースや展示も非常に多かった。多くのハードに「T-Engine」のマークが付いていたほか、イーソルやパーソナルメディアによるT-Kernel関係の展示が目立っていた。パーソナルメディアは、Armadillo(アットマークテクノ)と競合する存在になりそうなT-Kernel学習用ボード「Teaboard」(仮称)を展示。同製品は、Freescale MC9328MX1(ARM920Tコア)に2Mbytesのフラッシュメモリと16MbytesのRAM、10/100BASE-T、UART×2、SDカードスロットを搭載。学習用サンプルアプリケーションなども付属しており、税込み価格は4万7250円で8月以降に発売予定だ。

 イーソルはT-Kernelの拡張版「eT-Kernel/Extended」や開発スイート「eBinder」を展示。「eT-Kernel/Extended」は、イーソルの「eT-Kernel/Compact」や「eT-Kernel/Standard」をベースに、メモリ保護機能などをサポートしたものだ。



 東京ビッグサイトの東棟2ホールを占有した展示会場は、非常に多くのブースと膨大な展示で満たされていた。3日間では回り切れなかったブースも多く、紹介できた製品はごく一部にすぎない。

 組み込み分野はますます盛り上がる形勢を見せており、この分では来年のESECはさらに多くの出展社を擁する巨大展示会になるだろう。地方の人にとっては難しいと思うが、ぜひ実際に会場に足を運び、その目で見て回ることをお勧めする。ESECにはそれだけの価値がある。


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