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» 2005年10月28日 00時00分 公開

分業化の悪夢、俺たちは下請けじゃない!組み込み開発の混沌から抜け出そう(2)(2/3 ページ)

[宮崎 裕明 横河ディジタルコンピュータ,@IT MONOist]

メカ屋さんはお客さま?



グループマネージャ 「僕らソフト屋から見たら、メカ屋さんはお客さんみたいなものです。むしろ、お客さんより始末が悪い。お互い同じ会社の人間ですから。もちろん、売れる製品を作るという共通の目的があるので、ぎりぎりまで要求には対応しますが……」



 これは、あるオフィス機器のソフトウェア開発グループマネージャの本音です。ここでは、製品開発プロジェクトのスケジュールが「残り10%」という時期になってから、やっとメカの仕様が完全に固定することもあるとか。



グループマネージャ 「そもそも、ソフトウェア設計に着手する時点では、メカの仕様は決まっていないのが通常ですから。だから、初期段階で設計できることには限りがあります。ただ過去の経験から、どの辺りに変更が起こりそうかというのは、何となく分かります」

余裕の発言。ただ、プロジェクト終了が近づけば近づくほど、ソフトウェア開発の作業は加速度的に過酷になるそうです。

グループマネージャ 「メカ屋さんも、大変なんですよ。それは、分かっているのですが、ときどき『いいかげんにしろ!』っていってみたくなりますね」

そうですよね、人間ですから。



 「ソフトで何とかしてくれ」というのは、組み込み業界ではごく当たり前のフレーズのようです。基板を作り変えるのは目に見えて費用がかさむし、ハード側を途中で大きく変更することなど想定してはいません。その分は、ソフト屋さんのガンバリでなんとかするというわけです。幸か不幸か、これまではソフトで何とかなっていたところが、この図式を変えられない大きな理由かもしれません。

 さらに、こんなこともあったそうです。



グループマネージャ 「一度、痛い目に遭いました。最終レビューの段階で、一部のハードウェア仕様が変わっていたことが判明したのです。とにかく、そのときは変更に対応することでみんな一生懸命でしたが、あの時点で万が一発見できなかったらと思うと青ざめますね」

嵐が過ぎ去った後で原因をたどってみると、メカに変更が入ったので、エレキはそれに沿って変更した。ところが、ソフトのメンバーにはその情報が伝わらなかったということのようです。原因はごく単純。連絡ミス、報告忘れです。

グループマネージャ 「しかし、恐れていたことが起こってしまったという感じですね。これを機に、ソフトのレビューにもっと早い段階からメカやエレキ部隊にも加わってもらった方がいいのではないかと、レビューや承認の手続きを見直そうとしています。でも、結局本業が忙しくて、なかなか見直しも進んでいないのですが」

やっぱり、ソフトで何とかしているわけですね。



開発工程分業化の光と影

 組み込み開発の世界は、いつから「メカ→エレキ→ソフト」という図式になったのでしょう。昔の開発スタイルを知る、ソフトウェア開発部門の部長の話です。



部長 「その昔は、ソフトもハードも一緒に開発していました。昔といっても、せいぜい20年ぐらい前のことだと思います。が、だんだん開発の規模が大きくなるにつれて、メカ、エレキ、ソフトというふうに部隊を切り分けるようになったんです。いまでは、小さな開発プロジェクトでも、それぞれに専門の担当者を置くのが普通になっていますね」

この部長は、ソフトウェア開発の現在の状況を生み出しているのは、単に「メカ→エレキ→ソフト」だからソフトが我慢するのは仕方がない、というような問題とは考えていないそうです。現時点では、製品全体のシステム設計には、メカの人は加わっていますが、ソフトの人は参加していません。ソフトへの要求として降りてくるものが、ソフト屋の目から見て最適とは思えないことがあるのは、多分ここに原因があるのではないかと思っているのです。

部長 「ソフト屋が設計すればこういう切り分け方はしないとか、もっといい方法がありそうなのに、と思うことは少なくありません」



 分業化は、規模が拡大したり複雑になれば、当然の選択です。分業化することにより、専門性を追求できるようになって技術力も向上し、メカもエレキもソフトもそれぞれ要求に対するより良い解を出せるでしょう。ただ、分業化の弊害として、部門間の微妙なすき間ができるのも事実ですし、専門外のことが分からなくなります。他部門の専門分野まで理解しているほど時間もないでしょう。

 もちろん、システム設計の段階でソフトの担当者がかかわっている現場も存在します。ただ、若い技術者や企業システムのソフトウェア経験者が組み込み開発にどんどん入ってきているので、ハードのことをよく知らないソフトの専門家の比率は増える一方です。

 組み込み機器のシステム設計でものがいえるソフト屋さんをいかに養成するか、この辺りも大きな課題のようです。

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