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» 2005年12月21日 00時00分 公開

組み込み企業最前線 − NECエレクトロニクス −:半導体メーカーだからできるSIソリューションを (2/2)

[石田 己津人,@IT MONOist]
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総合ソリューションで顧客を支援

 デバイスSIソリューションのもう1つの特徴は、「システム技術プラットフォーム」を活用している点である。特定のシステム機能を実現するために必要な要素技術(デバイス、ドライバ、ミドルウェア、OSなど)をNECエレ側で選択、組み合わせ、動作検証してプラットフォーム化することで、顧客が特定のシステム機能を短期間、低コストで機器に組み込めるようにしている。現在、システム技術プラットフォームが用意されているソリューションメニューは以下の6つだ。

  • デジタルカメラ・ソリューション
  • 携帯電話カメラ・ソリューション
  • AVストリーム・ソリューション
  • ユビキタスUI・ソリューション
  • GPSネットワーク・ソリューション
  • RFID・ソリューション

 図2に示したのは、代表的な携帯用カメラ・ソリューションで使われるカメラモジュールである。

図2 カメラモジュールの構成例(細部は異なる場合がある) 図2 カメラモジュールの構成例(細部は異なる場合がある)

 画像処理用LSI、CMOSセンサ、レンズ、オートフォーカス機構、シャッター、フラッシュメモリなど、カメラで必要となる要素技術を統合、デバイスからOS/ドライバ、ミドルウェア、APIまでをプラットフォーム化している。携帯電話本体からは、I2C(アイスクウェアシー)経由のコマンドで制御できる。これなら、多少のカスタマイズとユーザーアプリケーションの追加で端末にカメラ機能を組み込める。端末メーカーは自前で開発する場合に比べて、開発の期間やコストを軽減できる。カメラモジュールは、2003年春に登場した世界初のメガピクセル携帯にも採用されていた。それ以降、着実に採用実績を増やし、2005年11月には5メガピクセル版もサンプル出荷を開始した。

写真 5メガピクセルのCMOSセンサを搭載したカメラモジュール 写真 5メガピクセルのCMOSセンサを搭載したカメラモジュール


 しかし、NECに限らず端末メーカーの多くは、デバイスから機器までを垂直統合で開発できる事業ラインを持っている。デジタルカメラを得意としていたり、半導体部門がNECエレのようにカメラモジュールを販売しているメーカーもある。ではなぜ、NECエレのカメラモジュールが受けるのか。この疑問に対して田尻氏は、「単に必要な技術要素をプラットフォーム化して供給するだけでなく、画質調整や評価環境を含めたトータルなソリューションを提供しているからだ」と答える。

 具体的には、プロカメラマンによる画質評価を基に、テストチャートを使ってレンズ、システム、色再現性などの観点から画質の基礎データを評価。さらに実際にさまざまなシーンで撮影して、ファームウェア改変などで標準画質を高め、最終的には顧客の要求に合わせてもきめ細かくチューニングする。カメラモジュールを端末やPCに接続してデバイス動作を検査したり、画質チューニングを行うための冶具やプログラムを自社開発し、顧客にも提供している。「印刷してみるとノイズが多かったり、黒がつぶれてしまう携帯用カメラも多いが、われわれは画質にとことんこだわっている。メガピクセル級になると、携帯用カメラにも高い画質が求められてくる」(田尻氏)。

 NECは過去、プリンタの画像処理技術を応用してデジタルカメラを製造していたことがある。そのときに培ったノウハウと技術者が、NECエレのデバイスSI事業部に移管している。「モジュール化して終わり」ならデバイス販売の延長でしかないが、きめ細かいサポートを加えることで、顧客に与える付加価値を高めている。業界全体で画像分野の技術者が足りないといわれる中で、NECエレの携帯用カメラ・ソリューションは、端末メーカーにとって有益なものといえそうだ。

 これはGPSネットワーク・ソリューションにもいえることだ。同ソリューションでは、システム技術プラットフォームとして、無線ICと位置測定を担うGPSベースバンドLSI、約30個の周辺部品を1つのパッケージに格納したSiPを使うが、GPS制御用サンプルプログラムやプロトコル変換ツールのサンプルも併せて提供し、顧客のソフトウェア開発を支援する。

GPSの評価環境を社内に持っているのは当社だけ GPSの評価環境を社内に持っているのは当社だけ

 さらに特筆すべきは、NECエレが本社社屋(川崎市)にGPSの評価環境まで有している点だろう。田尻氏は、「GPS携帯の性能評価には通常、通信キャリアの位置情報サーバを使わなくてはならない。そのため、開発中の評価端末でフィールド試験が簡単にできず、端末メーカーは困っている。そこで通信キャリアと同じ位置情報サーバを社内に設置し、フィールド試験を自由に行えるようにした。こうした評価環境は業界内でも当社だけ」と話す。

 システム技術プラットフォームの適用例として携帯電話を取り上げてきたが、実際は幅広い分野で適用されている。例えば、ある家電メーカーは、ビデオカメラ製品において動画処理を担う一部の機能ブロックにAVストリーム・ソリューションを採用している。この採用例を見ても、システム技術プラットフォームの完成度の高さがうかがえる。


機能ブロックを丸ごと任せる

 今後も組み込み機器が多機能化し、いっそう開発スピードが求められるならば、NECエレのデバイスSIソリューションはさらに価値が高まるだろう。機器メーカーが競争領域となるコア機能の開発にリソースを集中し、非競争領域のサブ機能は外部に委託する傾向が強まる可能性があるからだ。例えばデジタルテレビの場合、画像処理システムはフルで自社開発するとしても、ネットワークシステムは必ずしも自社開発する必要はないかもしれない。

 「特定の機能ブロックをまとめて外に出したいという機器メーカーが増えている。中途半端な切り分けで外に任せると、結局進ちょく管理が煩雑になって効率化できないからだ。われわれなら、任された機能ブロックについてはデバイスからソフトウェアまで一貫して開発でき、モジュールの量産も請け負える」(田尻氏)。

 組み込み業界では、開発効率を高めるための「プラットフォーム化」がキーワードとなっている。それを進めたNECエレのデバイスSIソリューションは、新しいサービス形態として認知が進みそうだ。組み込み機器を根底から支えるデバイスを握る半導体メーカーは、意外にソリューション提供の担い手としても適材なのかもしれない。

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