連載
» 2006年03月18日 00時00分 公開

身の丈に合った小さな改善をコツコツとプロセス改善のセキララ告白(1)(3/3 ページ)

[中山司郎 横河ディジタルコンピュータEPS事業センタ,@IT MONOist]
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ゆっくりした改善でも、1年で確実な効き目を表した

 このプロセス改善の取り組みと同時にスタートした1つのプロジェクトも終わるころ、実態を知り、自分たちの実力を認識し、そのデータを次のプロジェクト計画に生かす活動は、ゆっくりと効果を出し始めました。

成果

そのときに何をすべきかが見えやすくなった
これまで霧に隠れていたプロジェクトの状態をはっきり把握できるようになったことで、誰がどのフェイズで、何をしているのかが分かるようになりました。当たり前のことのようですが、これらが見えることによって、問題が発生しても早く対応できるようになりました。

自分たちの実績工数のデータを計画にフィードバックできる
1年間蓄積してきた自分たちの現実である測定データを、計画時のナレッジとして活用できるようになりました。今後もいろいろなプロジェクトのデータを蓄積していくことで、工数見積もりの精度はもっと良くなっていくでしょう。さらに、このようにして作ったプロジェクト計画は、後のプロジェクトの計画段階で、再利用できるようになり、計画作業自体も効率化が図れます。

実績入力と管理の習慣化
「毎朝入力する」というルールで始めた実績入力とミーティングは、いまや「習慣」となっています。もしかしたら、これが一番の収穫ともいえるかもしれません。メンバー間のコミュニケーションもスムーズになりました。さらに、自分たちのデータが活用できる段階に入り、1つ目の目標に到達することができたことは、メンバーの自信やモチベーションにもつながっています。

 1年間彼らがやってきたことは、実績を入力し続けることでした。その過程で、粒度がばらばらであったWBS(Work Breakdown Structure:作業分割構成/作業分解図)を改善したり、工程の抜けを防ぐためのチェック方法など、付随する工夫も少しずつ試みてきました。そして、これらの工夫は事実を測定することから始まったのです。

プロセス改善、今回の教訓

 さて、この開発現場が、一歩を踏み出せた理由は何でしょう。

  • リーダーの頑張り
  • メンバーの頑張り
  • 身の丈に合った取り組み
  • 工夫
  • 我慢
  • 継続

 まず、リーダーの頑張りを挙げることができるでしょう。リーダーが自ら考え、工夫し、メンバーを引っ張っていったことです。ここに至るまでにリーダー自身は、工学的なモデルや、開発スタイルについても独自で情報を収集していました。このことが、現場にマッチした改善方法を見つける助けになっていました。

 もちろんメンバーも頑張りました。プロセス改善の活動は、現場が動かなければ始まりません。しかも、一朝一夕で効果が出るものでもありません。活動の開始初期には負荷が増えますし、我慢して続けなければならない時期があります。それを乗り越えないと、成果にはつながらないといってもいいでしょう。少なくとも、私の知る範囲では。最初の効果を手にするまで、続けられるモチベーションを維持できたことは一歩のための大きな力となりました。

 それから、工程の漏れや作業の遅れを「測定」しようとしたこと。普通に考えれば失敗やミスを表面化させることになりますが、それを自分たちのいまの実力であると認め、次に生かすためのデータとして測定したことです。このちょっとした勇気が、冷静で正確なデータ収集をスムーズにしたのでしょう。そして、自分たちが測定している、分析している、という意識によって、この活動は「やらされている」のではなく、「自分たちのもの」になり、自然とモチベーションにつながりました。

 そして現場がプロセス改善の活動をするためには、上層部の理解は欠かせません。実はモチベーションの維持にとっても、これは重要なファクターといえます。上層部に理解を得られないからといって、水面下で進めるのは不可能です。組織として不可能なだけでなく、活動する本人たちの気持ちのうえでも、継続することはできませんから。現場主導で、プロセス改善を行いたいと考えている方の中には、この辺りに壁を感じている方がいるかもしれません。



 今回は、ある小さな開発現場のプロセス改善の取り組みをご紹介しました。何も管理していないといっても過言ではない、何とかしたいけれど、何をしていいか分からないという現場の、初めの一歩です。

「小さなことからコツコツと」

「継続は力なり」

 ではまた、次回をお楽しみに(次回に続く)


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