場当たり的なOJTを体系的な教育カリキュラムへ組込みスキル標準(ETSS)入門(4)(2/4 ページ)

» 2006年04月20日 00時00分 公開
[関口 正 独立行政法人 情報処理推進機構 ソフトウェア・エンジニアリング・センター,@IT MONOist]

組み込み分野に即した教育カリキュラムとは

 ETSSでは、「組み込み分野に即した教育カリキュラム」について以下のような観点で検討が進められました。

  • 実践的であること 
    教育カリキュラムを検討する際に、識者の意見として実際に技術を「触る」ことの重要性が提言されました。特に開発の未経験者に関しては、ミドルウェアやOSなどのブラックボックス化された機能を利用しないで基礎技術を実機演習することで、組み込みシステムの本質的な理解につながると考えています。
  • 教育内容が可視化されていること 
    当たり前のことですが、教育の内容は必要十分で無駄なく、短い期間で密度のあるものとすべきです。しかしながら、そうであることを判断するには、その教育カリキュラムの内容やレベル設定が明快である必要があります。また、組み込みシステムで利用される技術は多種多様であり、これらの情報が正確に伝わらなければ目的の教育成果を得ることが難しくなります。

 教育カリキュラムを受講することによって、どのような技術の知識やスキルの向上が期待できるのか、また、その知識やスキルの向上によって目指す職種やキャリアレベルにどのくらい近づくのかを可視化できる仕組みとなるように検討しました。

教育カリキュラム普及によるメリット

 組み込み分野の教育カリキュラムに関する指標やそれに即した教育カリキュラムが普及することで、次のようなメリットが考えられます。

  • 個人にとってのメリット 
    技術者は、非常に限られた時間の中で自らのスキルアップやキャリアアップを実現しなければなりません。教育カリキュラムの内容が可視化されることで、自分の目的に合った必要十分な教育カリキュラムを選択可能になります。無駄なく必要な教育を受講することで少ない時間を有効活用し、自らのスキルアッププランやキャリアアッププランなどの目的実現が可能となっていきます。
  • 企業にとってのメリット 
    外部の教育サービス企業が提供する教育の中から、組織の人材育成に適したものを選択・評価するために、ETSSで定義された教育カリキュラムを1つの指標として使えます。また、教育カリキュラムの開発を委託する際に、ETSSのスキル基準のスキル分布特性などを利用することで、的確な教育の対象と目標が提示できます。企業が望む教育カリキュラムが満たすべき要求事項をより的確に反映可能になっていきます。
  • 業界的なメリット 
    さまざまな職種に対してキャリアアップやスキルアップを目的とした教育カリキュラムが普及することで、該当職種に関して高度な専門性を持った人材を育成できます。また、多種多様なキャリアシフトを目的とした教育カリキュラムが普及することで、これまで企業の製品分野に固定化されていた技術者の異動を活発化させることを支援可能になります。

 さらに、例えばエンタープライズ系のソフトウェア技術者といった他分野からの参入など、分野にとらわれない教育カリキュラムを実現可能になります。

 高度な専門性を持った人材やさまざまな分野の経験と応用力を持った人材が多く育成されることで、業界全体的なソフトウェア開発力の強化が期待できます。

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