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» 2006年09月16日 00時00分 公開

組み込み企業最前線 − ザイリンクス −:強気のザイリンクス「2010年にはASICに追い付く」 (2/2)

[石田 己津人,@IT MONOist]
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65nm製品で6〜9カ月のアドバンテージ

 さらにザイリンクスが究極のビジネス機会として見ているのが、「デジタルコンバージェンス」いわゆる放送と通信の融合だ。コンテンツの制作・配信・受信がデジタル技術の下で結ばれる。当然、機器のデジタル化が進む。例えば、放送機材もデジタルハイビジョン対応に変わりつつある。ザイリンクス製品はすでに新時代の通信機器や家庭用端末にリーチし始めているが、その幅を広げる戦略製品が2006年5月にリリースした「Virtex-5」である。


Virtex-5は、基本の「LX」、LXに高速トランシーバ回路を搭載した「LXT」、DSP用途に特化した「SXT」、PowerPCコアを内蔵する「FXT」という4つのプラットフォームからなる(STX、FXTも高速トランシーバを搭載) 図 Virtex-5は、基本の「LX」、LXに高速トランシーバ回路を搭載した「LXT」、DSP用途に特化した「SXT」、PowerPCコアを内蔵する「FXT」という4つのプラットフォームからなる(STX、FXTも高速トランシーバを搭載)

 Virtex-5は、FPGAとして初めて65nm(ナノメートル)プロセスで開発。用途によって4つのプラットフォームに分けているが(上図参照)、最初にリリースしたロジック用の「Virtex-5 LX」シリーズでいえば、90nmプロセスの従来品に対して動作周波数(性能)が30%向上。動作消費電力は35%カットしている(注)。プロセスの微細化でチップ面積をほぼ半分とする一方、ロジックセル(LC)数は65%増加して最大33万となり、集積度を一気に高めている。「コストパフォーマンスを大幅に引き上げたVirtex-5では、高性能ASICが入っている機器分野を狙う」(吉澤氏)と意気込む。

※注
電源電圧を1.2Vから1.0Vに下げ、ザイリンクス独自の「トリプル・オキサイド技術」により消費電力を抑えた。同技術は、性質の異なる3種類のゲート酸化膜を用意し、性能・消費電力の基準でダイナミックに使い分けるもの。

 Virtex-5は2007年初めから量産に入り、同年早々にも社会インフラ系で搭載機器が市場に登場する予定という。「競合他社は65nm製品を出せない(注)。6〜9カ月ぐらいアドバンテージがあるだろう」(吉澤氏)。ザイリンクスは、PLDの世界市場で50%超のシェアを持つトップベンダだが、こと日本市場に限り、米アルテラの後塵を拝してきた。どのようにVirtex-5を市場に展開してゆくのか、興味深い。

※注
米アルテラも65nm製品を開発中であるとアナウンスしているが、リリース時期は未定。


関連リンク:
Virtex-5

10年後のFPGA製品は45nmプロセス

 一方で、FPGAが持つ構造上のネックも知られている。FPGAはASICに比べて多くのトランジスタを使用しているため、漏れ電流が大きくなる。動作消費電力を大幅に低減したVirtex-5も、待機消費電力は「3けたのミリアンペア」という。携帯電話機などのモバイル機器は、最低でも1けた台にする必要があるが、構造上の問題だけに技術的なブレークスルーは見えていない。また、性能や集積度の面では、どうしてもASICに劣る。

「マイコンやDSPもFPGAで置き換え可能」 「マイコンやDSPもFPGAで置き換え可能」

 これに対して吉澤氏は、「現状では、モバイル機器分野への浸透はかなり難しいだろう。だが、モバイル機器以外の分野でも開拓の余地は相当にある。ASICのみならず、マイコンやDSPもFPGAで置き換え可能だからだ」と指摘する。例として、FA(ファクトリーオートメーション)分野では、Virtex-5 FXTのようにCPUコアを持つFPGAなら組み込みプロセッサとして使えるとする。実際、「CPU構造を理解した技術営業スタッフを増強している」ところだ。

 また、2005年からT-Engineフォーラムに参加、T-EngineとFPGAの接続を担う拡張ボードを提供するなど、機器メーカーへの開発支援に力を入れ出した。その一環として、ボードベンダを中心としたパートナとの連携を強化する。手始めとして、東京エレクトロンデバイスと業務提携。Spartan-3を搭載したディスプレイ向け画像処理評価ボードを2006年初めにリリースした。機器メーカーの検証作業をサポートし、FPGA採用を促す。「プロトタイプ的な完成度の高い評価ボード」の提供は、国内の開発文化を意識したものという。地道で泥臭いサポートが日本市場では欠かせないのだろう。

T-Engineオプションボード「TX-XC3S500E」 写真 T-Engineオプションボード「TX-XC3S500E」。Spartan-3Eを搭載したT-Engine用拡張ボード

 結局のところ、PLD市場がどれだけ成長するかは、トップベンダのザイリンクス次第という面がある。吉澤氏から見てPLDがASICに追い付く「2010年ごろ」は、同社の開発ロードマップからいえば、「45nmプロセスのFPGA製品がビジネスとして佳境を迎えている時期」という。45nm製品はVirtex-5以上に性能や集積度が高まるのは確実で、適用分野はさらに増えるだろう。面白い展開となりそうだ。

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