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» 2006年09月27日 00時00分 公開

組み込みデータベースカタログ(5):マルチベンダRDBにつながる「DB2 Everyplace」 (1/3)

組み込みデータベースカタログ第5回は、IBMの組み込みデータベースDB2 Everyplaceを取り上げる。お話を伺ったのは、ソフトウェア事業の中林紀彦氏と猿山悦子氏である。

[小島 昇,@IT MONOist]

“DB2”とはまったく別の製品として開発

 PDAやスマートホンといったモバイル機器は、場所を限定せずに自由にデータを持ち運びできる。しかし記憶容量に制限があって、デスクトップPCからデータベース・サーバにアクセスするように豊富な情報を閲覧することはできない。また、モバイル機器では情報が個別のローカルディスクに保存されるため、情報の一元管理は難しい。

 モバイル機器によるデータ操作・管理に付きまとう、こういった問題を解決するために開発されたのが「DB2 Everyplace」である。企業の基幹データベースに蓄積された大容量のデータをモバイル機器から検索、更新することがDB2 Everyplaceの使命といえるだろう。組み込み機器用のデータベースであるが、OSが搭載されたPDAやスマートホンをターゲットにし、人間との対話処理を前提とした製品だ。

 DB2 Everyplaceの前身である「DB2 Everywhere」の開発プロジェクトは1998年から始まった。1999年に無償のSQLインターフェイスとして公開され、2000年にDB2 Everyplaceに名称を変更し、有償版のDB2 Everyplace 7.1としてリリースされた。その後、ユーザーの要求を取り込みながら機能拡張を繰り返し、2006年7月に「DB2 Everyplace V9.1」がリリースされた(表1)。

DB2 Everyplaceの歴史 表1 DB2 Everyplaceの歴史

 DB2 Everyplaceは製品名に“DB2”を冠しているが、業務システム向けのリレーショナル・データベースであるDB2から派生したものではなく、ソースコードレベルから新規に開発された完全に別個の製品である。

 DB2 Everyplaceには「Database Edition」と「Enterprise Edition」の2つのエディションがある。

  • DB2 Everyplace Database Edition
  • DB2 Everyplace Enterprise Edition

 これは構成されるコンポーネントの違いによる。両エディションに共通するのは「DB2 Everyplace データベース」であり、Enterprise Editionのみに「DB2 Everyplace 同期サーバ」が含まれる。それぞれの詳細を見ていこう。

データベース単体で利用するDatabase Edition

 データベース・エンジンをデバイスに組み込み、単体で使用する場合は、同期サーバを含まないDatabase Editionを選択することになる。データベース・エンジン自体のフットプリントは約350kbytesほどであるが、大部分のSQLと集計関数類がサポートされており、通常のリレーショナル・データベースからサーバ機能や同時接続制御などを削除したものと考えてよいだろう。表2の条件を満たせば、データベース自体のサイズ制限はなく、数万レコードに及ぶような大容量のデータを扱えるのが特徴だ。

データベース・スキーマの制限 表2 データベース・スキーマの制限

同期サーバを持つEnterprise Edition

 Enterprise Editionは、Database Editionに同期サーバが加わった製品である。DB2 Everyplaceのデータベース・エンジンを組み込んだクライアント(モバイル機器など)は、この同期サーバを経由して社内のデータベースを参照、更新できる。社内のデータベースと組み込みデータベースの同期を特徴としている製品はほかにも存在するが、それらの構成はデータベース・サーバとモバイル機器が直接対話する2層構造が一般的だ。DB2 Everyplaceはアプリケーションサーバを経由してリレーショナル・データベースに接続するため、同期先のデータベースは以下のようにマルチベンダ製品への対応が可能となる(2006年9月現在:対応するデータベース製品は今後追加・変更される可能性もある。後述のWebサイトを参照)。

  • DB2 V8.2/V9.1 for Windows、Linux、AIX、HP-UX、Solaris
  • DB2 UDB V8.1 for z/OS
  • DB2 UDB V5R4 for IBM iSeries
  • Informix Dynamic Server 10.0
  • Oracle Database 9i/10g
  • Microsoft SQL Server 2000/2005

 この特性は、既存のデータベース・システムにモバイル環境を追加するケースでは、有利に働くことになるだろう。同期サーバはIBMのアプリケーションサーバ「WebSphere」のコンポーネントを使用しており、一般的な3層構造のWebアプリケーションの構成となるが、クライアントと同期サーバ間、同期サーバとソースデータベース間の同期処理は個別に行われる。クライアントは同期サーバに配置されたミラーデータベースに対して処理を行い、それが完了すると直ちに接続を解放できる(図1)。

クライアントと同期サーバでのデータ同期 図1 クライアントと同期サーバでのデータ同期

 無線通信など、外出先の非力なネットワーク環境からでも、ストレスなしにデータを同期できることを考えた設計思想といえるだろう。また、同期サーバとソースデータベース間のAPIとしてJDBCを利用する。Javaの標準的なデータベースアクセス手段を用いることで、他社製のリレーショナル・データベースの利用を可能にしている。



企業データを情報端末で社外に持ち出し、利用することを目指して開発されたビジネス指向の強い組み込みデータベース。同期先のリレーショナル・データベースはDB2、IDS、Oracle、Sybase、SQL Serverなど多種に及ぶ。


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