いまさら聞けない 車載ネットワーク入門カーエレクトロニクス技術解説(2/3 ページ)

» 2007年03月07日 00時00分 公開

車載ネットワークの分類

 車載ネットワークはキーによりさまざまな分類がされており、決定的な分類方法は定かではありません。ここでは一例として、データ転送速度と信頼性をキーとした車載ネットワークの分類を紹介します(図1)。


車載ネットワークの分類 図1 車載ネットワークの分類/出典:「車載LANとその応用」(トリケップス)

 図1の分類方法では、車載ネットワークを6つに分けています。

 また、車両の上半分(いわゆるボディ)を「ボディ系」、車両の下半分(いわゆるシャーシ) を「制御系」に分ける分類方法も多く見られます。この場合、「情報系」はボディ系の亜種に分類され、「安全系」は制御系の亜種と分類しているかもしれません。

 なお、実車両は機能分類ごとにネットワークを形成し、分類間の情報はゲートウェイを経由しています。それぞれの分類において必要とされる品質や通信速度などが異なるため、制御系といえども同じバスに機能分類をまたいで接続することはほとんどありません。

 では、本稿のメインとなる制御系は後で詳しく解説することにして、ここではそのほかの車載ネットワークについて簡単に見ていきましょう。

安全系

 安全系は、自動車の安全機能を提供する部品関連を示します。安全系で用いられる車載ネットワークの代表としては、「ASRB」「BST」「DSI」などが挙げられます。

ASRB(Automotive Safety Restraints Bus)
ASRBは「Safe-by-Wireコンソーシアム」(現Safe-by-Wire Plusコンソーシアム)によって策定されたプロトコルで、現在2.0の仕様が公開されています(編注)。このプロトコルは、エアバッグをメイン対象として規格検討が進んでいます。すなわち、エアバッグに特化したネットワークプロトコルといえます。

※編注:
ISO22896として規格化されている。


従来の車載ネットワークでは、データ以外にフレーム開始情報などのヘッダ部や通信データ信頼性確保のための誤り検知情報などが付加されるため、センサデータ収集効率が良くありません。ASRBは利用条件などを明確にし、汎用性は劣るものの特定用途の効率を上げたプロトコルとなっています。

BST(Bosch-Seimens-Temic)
BSTは、Bosch社、Seimens社、Temic社が中心となり仕様を策定しました。2004年、ASRBに統合されました。

DSI(Distributed System Interface)
DSIは、モトローラとTRW社が策定したプロトコルであり、センサ系を中心にバス化が施されています。DSIは、ECUから各センサユニットにバス信号線を介して電源を供給する電源重畳型の通信です。センサユニットとECUは、通信データを電流変調して通信します。

情報系

 自動車の乗車空間などで利用されるエンターテインメント機器(オーディオ、ナビ、電話などマルチメディア機器)が利用する車載ネットワークを車載情報系ネットワーク(以下情報系)と呼んでいます。情報系は高速大容量通信が必要となる半面、信頼性はほかの車載ネットワークほど必要とはしません。情報系の代表例としては、「IDB-1394(IEEE 1394)」と「MOST」が挙げられます。

IDB-1394(IEEE 1394)
IDB-1394は、「1394 Trade Association」の自動車ワーキンググループにより仕様が策定されました。民生機器で利用されているIEEE 1394をベースとしたプロトコルであり、既存民製品との接続性が考慮されています。IDB-1394は、車載ネットワーク部と「CCP (Customer Convenience Port)」と呼ぶ民生機器接続部で構成されています。

MOST(Media Oriented System Transport)
MOSTは、BMW、Daimler-Chrysler、Audi、Harman/Becker、OASIS Silicon Systemらがステアリングメンバーを務める「MOST Cooperation」で規格化されています。プラスチック光ファイバや非シールドより対線などを利用しているため、ハーネス本数、長さ、重量、コネクタなどを削減できます。

診断系

 診断系は、各ECUの状態などを診断ツールで収集する機器を示します。利用しているプロトコルは制御系とほぼ同類なので、ここでは説明を割愛します。

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