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» 2007年08月01日 00時00分 UPDATE

PLMは“勝ち組”製造業になる切り札か(1):PLMや3次元CADって本当に効果があるの? (2/2)

[北山一真/ネクステック株式会社,@IT MONOist]
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3次元CAD導入の歴史と教訓

 決算発表の度に、過去最高収益、過去最高売り上げと、華々しい記事が紙面をにぎわす製造業。しかし、その裏では、新しいテクノロジを引っ提げた製品/サービスが登場するスピードに追随するのに四苦八苦している。販売先や製造拠点も海外に散っており、以前に比べて工夫しなければならない領域が一段と増した。それで、テンテコマイなのだ。

 また、こんな背景もある。1980〜90年代は、プロダクトがユーザーのニーズをつくり、そして市場をつくってきた。その後、IT(特にインターネット)が普及し始め、ユーザーが自ら情報を収集しニーズを創出し、個性を追求する形でさまざまな市場が生まれる時代となった。それにより、現在のオーダー品/カスタム品など多様化を突き進む状況となっている。

 そしてさらに、競争相手として、国内や欧米メーカーのみならず、韓国/中国などのアジア各国が加わった。例えば、2006年度の中国国内での自動車の販売台数は、日系メーカーがシェア25.69%、中国系メーカーは25.66%、ドイツ系メーカーは18.36%と日系メーカーが辛うじてトップの座を守った。しかし、2007年1〜4月において、中国系メーカーのシェア29.3%と日系メーカーに3.2ポイントの差を付けてトップに躍り出た。

2006年通期 2007年1〜4月期
日系メーカー 25.69% 26.1%
中国地場メーカー 25.66% 29.3%
中国の自動車販売台数のシェア推移(『日経ビジネス』誌、2007年7月2日号、「低額車レースは両刃の剣」を基に作成)

 サムスンなど韓国勢の動きも気になるところだ。EUにおける日本勢の自動車/家電市場でのビジネス状況は、WEEE(電子・電気機器の廃棄に関するEUの指令で、2003年2月にROHS指令とともに公布・施行された)、ROHS(ローズ:EUで施行されている電気・電子機器を対象とした特定有害物質の使用規制)といった環境規制にも負けず悪くない。しかし、今後韓国とEUのFTA(Free Trade Agreement:自由貿易協定)が締結されれば、韓国製品は関税優遇を受ける。一方、日本勢がFTAを締結しなければ、EUにおける競争力が落ちてしまう。EUで売れるか売れないかは、ワールドワイドでのブランド力を示すといわれているため、グローバル市場で勝負しているメーカーにとっては非常につらい。

 またそれに輪を掛けて、今後日本の金利が上がり、それに伴って円高傾向に移行してしまえば、日本のグローバル市場での競争力はさらに低下してしまうだろう。

 このようにさまざまな国の企業が市場へ参入し、グローバルでの競争は激化している。ユーザーにとってみれば選択肢が増え、また価格競争が起き、喜ばしい限りである。しかし、企業からするとコスト競争の波は大き過ぎる。テレビ・音楽プレーヤーなどの家電品の価格は、1年で30〜50%まで下がってしまうといわれている。VHS方式のビデオデッキが販売当初の価格から半値になるまで6〜7年かかった時代がうそのように思える。自動車業界においても同様で、ある自動車部品メーカーなどは新型の車種を受注するたびに、現行の30〜35%くらいの原価低減活動(俗に原低活動と呼ばれている)を強いられてしまう。

 このような市場環境を背景に、企業は製品開発力・コスト競争力を付け、売れる製品・もうかる製品を作るために何をすればよいか、考えざるを得なくなった。製品の価値は企画・設計で決まってしまい、また製造原価の約80%は設計段階で決まってしまうといわれている。すると、おのずと設計プロセスの改革に注目が集まる。1990年代から2000年の初めに製造各社で導入が盛んだったERP・SCM(量産後の製品の在庫管理。量の管理)の効果は、設計など上流工程からの改革やIT導入に比べて、一定の限界がある。売れない製品の量をいくら管理しても、売れないものは売れないのであまり意味がないのだ。

 そこで、製造業がこぞって注目したのが、3次元CADとなった。3次元CAD自身も、ERPブームと並行して大きく変化してきた。1970年代のワイヤーフレームやサーフェスしか表現できずCAM用NCデータ作成などにとどまっていたものが、1990年代くらいからソリッドモデルとして形状を保持でき製品のイメージ共有や解析に利用できるようになった。21世紀に入り、さらにさまざまな機能向上により、導入企業で成果が出たとの発表があった。例えば、ボーイング777やクライスラーの開発での成功や、トヨタのヴァーチャルデザインレビューの成功が大きく報じられた。そのことも3次元CAD促進のきっかけとなっている。

 こうして、3次元CADを導入すると、設計プロセスが改革でき、売れる製品・もうかる製品が作れるという神話が生まれたのである。しかし、すべての企業において望ましい効果が出たわけではない。そこには、あくまでツールである3次元CADに対する過度の期待と現実との間に大きなギャップがあった。

◇ ◇ ◇

 次回では、設計プロセスを改革するためにツールとしての3次元CADとどのように付き合えばよいのかを整理してみたい。

筆者紹介

ネクステック株式会社

ビジネス変革推進部マネジャー 北山一真(きたやま かずま)

IT系のコンサルティング企業にてERP導入プロジェクトを主とした業務改革推進、システム導入などに従事。その後、大手製造業向けコンサルティングファーム、ネクステックに入社。現在、大手グローバル製造業のコストマネジメントの業務とシステム構築に関するプロジェクトに従事。製造業の業務やシステム、モジュール化に関する執筆講演活動にも精力的に取り組んでいる。


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